<3話> 「聖女と邪神と」 =Aパート=
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<<Ирина・Walhalla>>
称号†邪神に憑依されし巫女†
種族:人間
年齢:115歳
職業:聖女
状態:拘束/混沌/憑依/祟り/魅了
装備:
|≪神々の封鎖≫
|神をも封じし緋色金の鎖
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暗黒竜に乗った邪神に憑依されし巫女が、私を殺しにやって来た。
青白い肌には鎖以外、布などは何もまとっていない。
鎖は手枷と足枷から、小さな胸をつたい、首輪へと繋がっている。お腹の辺りに施錠の様な物もあり、繋がっている。
私は巫女と、いや邪神と対峙している。
巫女の左手には、先ほど私を貫いた武器がもう1本あった。
(あれはまずい。私に確実にダメージを与えられる武器)
私は足元に刺さっている、もう1本を手に取ろうとした。
しかし、隙は作れない。
剣を左手のみで持ち、目線を巫女から逸らさず、左膝を地面に着いた。
兄から昔教えてもらった、古武術の構えの1つが原型だ。
私は右手で、刺さっている物を引き抜いた。
次に立ち上がろうとしたが、止めた。
巫女に近寄る飛竜が2体、どちらも背に暗黒騎士が乗っていたのだ。
(先にこれを調べねば)
右手の物をGM権限で調べた。
|≪麒麟の髭≫
「ぬしよ、それが気になるか。我が教えてしんぜよう」
巫女の口を通し、邪神が語る。
「東の大陸に居る神獣の物よ。生意気だったので、へし折ってやったわ。おかげで大規模転移が容易になってのう。クククク。ぬしを一撃で沈められなんだのは、我の誤算だ」
無表情であった巫女の顔。
僅かにだが、口元が緩んだ。
「さあ、その右手の物を返して貰おうか!」
邪神は得体の知れない私を前に、警戒するどころか、高揚し饒舌だ。
邪神からすれば、巫女は憑依しているアバターで、さながら自分はゲームのプレイヤーといった感覚なのであろう。
邪神は巫女が倒されたとしても、例えるならゲームで髭オヤジが1機穴に落ちてやられた、その程度にしか感じないのであろう。
穴に落ち、「あー、この先は、こうなってたのか」と分かればそれで良しと。
邪神が語り終えると、暗黒騎士が巫女の前に立ちはだかった。
私は右手にある「麒麟の髭」に人差し指を添え、中指を引っ掛け、親指とで挟んだ。
私は殺気を押さえ、ゆっくり立ち上がる。
その自然な動作に、遠投のモーションを上重ねした。
私は槍投げの要領で、髭を暗黒騎士目掛けて投げつけた。
赤い髪がなびく。
Bパートへ つづく




