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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 6節   <22話>
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<22話> 「食後にデザートはいかがですか?」 =Eパート=



「アハハ。てー、リーナ。何だい、あの赤髪のお姉様は。反則じゃないかなー?」


「まさか、おめおめ退散する事に――なろうとは」


「瞬間的な判断力、それにあの大胆不敵さ。見事にぶん回されちまいやしたよぉ。

 正直恐れ入ったわ」



「その割には――、嬉しそうですよ」


「そう見えるってぇかい? そいつぁ、誤解ごけえでさぁ」


「口元が、緩んでいますよ。

 ――それにしても、これでは大幅な予定の変更が必要ですね」


「はぁあ、ペンネ……。

 お前がリーナに会えるのは、まだ先になりそうだ。仕方がない、おうちに帰ろう」



「宜しいのですか? 本当はあの者達と共に――」


「もしお姉様でなく殿方だったら……、あたいは確実にあっち側だったぁねぇ」


「何ですか、それ――」


姉御あねごってのも、まぁ、悪くぁねぇかっ」


「そういう話では無くて――ですね……」


「かっかっかっ。なんつっても、アッチぃ倒す方が面白そうじゃーねえですかぁ。

 まぁ、またぁ、相見あいまみえる機会きけえもありゃぁすよ。ねー、そうでぇしょ? カルキ」





「どうなさいました? ルドラ様」


「嫌な感じがしての……。あ奴()であろうな……」









足音が近づく。

ウエディングドレスの様な刺繍が施された純白のドレス。

そこから伸びた脚よりでた純白の足音だった。


「お姉様……」


「イリーナ、おかえりなさい」


私は抱きついてきたイリーナを受け止める。

寄り掛かり、身体をゆだねてきた。


誰かの始めた歓声が、やがて満場の拍手へと代わる。

その拍手は暫く続き、熱を帯びた音が、私の心をもおどらせた。


あまり注目されるのは得意ではなく、むしろ苦手なのだ。

でも、悪い気分ではない。こうして脚光きゃっこうびるのは――。







金装飾の施された赤いグラスを眺める。

グラスの先にあるテラスへと目を向けると、ソフィアがいた。


紫色のワンピースにリボンが付いた、可愛いドレス姿だった。

ドレスの艶やかさとは対照的な、どこか寂し気な雰囲気を感じ、ソフィアの元へと私の足は動く。


吹き上げる爽やかな風を感じ、片手で髪の毛を抑えつつテラスへと出る。

すると、束ねられた髪が目の前で揺れていた。そこにはキュリアも居たのだ。


「珍しい組み合わせ……でもないわね。もう戦友同士だものね」

己の命を仲間に託し共に戦う。そこには家族をも超える絆すらあると、私は知っていた。

けれどVRMMO時代の仲間の顔を浮かべ、私は直ぐ別の考えにいたる。

それは戦友だからではなく、既に家族だからなのかも知れない――と。



青いグラスに注がれたお酒をキュリアは口にする。

「リル殿。今日ぐらいは……と、私もたしなんでいます」


「イイんじゃないかな? 飲みたい時に飲むのが、美味しいんだよ」


「では……味わう事と致します」


そういえばソフィアはお酒飲んで良いのか? ――との疑問が湧く。

幼く見えて200歳超えてるし、大丈夫なのだろう? ――そんな思いを抱く。


見つめると、ソフィアの目の下は明らかに赤かった。

それどころか普段だと血色の悪く見える青白い肌が、赤く染め上がり火照ほてって見える。


「姉様、私……悔しい。もっともっと、もっともっと、強くなりたい。

 大切な仲間を友を護れるようになりたい」

こちらを見ずにソフィアはそう告げ、夜空を見上げる。


私はソフィアの首から両手を伸ばした。

そして、母親の様に背中から抱きしめる。


キュリアは私の赤いグラスを受け取り、寡黙かもくてっしてくれていた。

青いグラスに口を付け、何処か遠くを見つめている。


ソフィアをいだきつつ、私もキュリアと一緒に遠くを見つめる。

そして、ソフィアの眺めている夜空へと視線をかかげた。

「黄色の月」に「朱色の月」。そこには2つの月があった。


ここが元いた世界では無い事を、私は改めて実感する。

それと同時に、私には仲間が、家族がいて、独りではないのだと感じ、視線を堕とす。


「ソフィア、私も同じ思いよ……。みんなに、助けられてばかりだもの」


「姉様……」

ソフィアは、私にいだかれたまま振り向く。




「もー。こんな所にいらしたのですか、お姉様!」

青い髪が月に照らされて透け、イリーナは美しかった。


「みんな揃っていて、ズルイですよ! 私にもお姉様とお話しさせて下さい!」

イリーナの頬がふくれる。


熱を帯びたしずくは、つゆと消えた。

ソフィアはそんなイリーナの顔を見て、クスっとする。

「リーナちゃん、やぁ……、その顔はズルいよ」


「だってアレから全然お話しできていなくって、お礼すらまだなのですから!」


「あー、そうだったわね。あの後も残っていた魔将の討伐とかがあっからね……」


ソフィアは私の両腕から離脱すると、イリーナの膨らんだ頬を指で押し込んだ。


「ぷ〜う! ……って、もう! ソフィーまで……」


その場にいる皆の表情が、一斉に明るくなった。


いつの間にか、エミアスまでキュリアの隣にいる。

普段、表情を崩さないエミアスが、私たちのやりとりを見て笑みをこぼしていた。



イリーナは私の腕を、抱える様に両腕で掴んだ。

「皆がこちらへ来てしまって、どうするのですか……」


私はイリーナに牽引けんいんされ、出航の時を迎えた。

助け船を求め、キュリアを見つめ視線で合図を送る。


キュリアは飲み干した青いグラスを眺めていた。

私の送った合図を後目しりめに、赤いグラスに口を付けた始めた。

実に楽しそうに飲んでいる。


私はソフィアとエミアスを見つめたが、二人は目線さえ合わせてくれなかった。


「お姉様、一緒に中へ戻りましょうよー。

 じゃあ、デザートはいかがですか? できたての甘いお菓子もありますよ」


「えっと……。どうしようかな……」


「甘いお酒も用意してありますよ? もの凄く強いらしいですが」


「え? 何それ! 直ぐ行くしッ!」



Fパートへ つづく

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