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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 6節   <22話>
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<22話> 「食後にデザートはいかがですか?」 =Dパート=



「お姉様!」


背中に白い天使の羽が生えたイリーナ。

私を空中で受け止め、お姫様抱っこする。


徐々に抜け落ちる羽が夕焼けに映え、美しかった。



――懐かしい思い出。共に過ごした半年は、あっという間だった。

あれも、キャサリン戦だったわね。



『 跳 躍(リープ) 』



鬼の放つ拾陸撃目は空を斬る。

すると今度は、技を発動し終えた鬼であるミツキに大きな隙が生じた。


魔法による転移と違い、GMスキルによる「跳躍リープ」は、魔力の流れなどからタイミングや位置を読む事は不可能だ。

ミツキは完全に私の居場所を見失っている。


私は真上に居た。


「 ア ル マ ス ! 」


―― Ζ(ゼータ)の軌道を持つ三連撃 ――


鬼の首、肩口、胴、それらを深くえぐる。


私は両膝を折り着地した。それと同時に、装備を赤へと戻す。


鬼であったミツキは、後ろへと倒れた。

すると、ひたいつのが消える。



「リーナは、お返しします。私達は撤退します」


私は自分の耳を疑った。

声の主が、勇者バレンティーナだったからだ。


「逃がすと思って?」

立ち上がり、私は声のする方を向いた。


「はい。ですが、逃げられます」


そう告げられた時だ。

ちりと共に瓦礫がれきが降ってきた。


「……この空間は、間もなく崩壊しますから」


降り注ぐ瓦礫を避けると、ティーナはミツキを脇から支えて立っていた。

ミツキの着物は斬り刻まれており、肌が露出していた。

あれ程のダメージを与えたのに傷は既に癒えている。

鬼であったミツキの生命力には驚きを隠せない。


ミツキは扇を取り出すと、はだけた肌を伏せた。

「まさか、これ程とは――。最後の転移は何なのですか」


私はこれまで、この戦いでGMのスキルを使わなかった。

手の内を明かさない為に。

「それは、企業秘密ってヤツよ」


ミツキは言っている意味がよく分からないのか、疑問符が付いた様な表情を浮かべていた。


そうこうしている間に、天井の崩壊が進んできた。

降ってくる数や大きさが増しているのだ。

様子をうかがう為、天井を視野に入れていると、銀髪の少女が現われた。

動かなくなったカレンがウネウネの上に乗せられている。

4人が合流すると、床に魔術陣が現われた。



「逃がさないと……言ったでしょ!」


私は右腕を突き出しカウントする。


3…(スリー)


(ツー)……


(ワン)……


Fire!(ファイヤー)! 」


私は「(ゼロ)」と同時に、火の付いた砲台を取り出した。

母艦アーケロンから、1つ拝借していたのだ。


黒い鋳鉄ちゅうてつ製の大弾が炸裂する。

ミツキは扇の盾で防ぐも、弾は爆散したのだ。


黒い茶釜の様な鋳鉄ちゅうてつ製の弾には、魔術的な刻印がしてあり、魔術等による障壁に当たると破裂し、その内部にて爆散する仕組みだ。

それにより天井から落ちた塵が舞い上がり、視界は遮られてしまった。


僅かにある塵の隙間からは、赤い大盾らしき物が見える。

だが、その赤い光は、直ぐに消えた。

――どうやら逃げられてしまった様だ。


それでも、追っ払う事には成功したのだから、良しとしよう。



キュリアたちを探すと、既にソフィアのかたわらに居た。

私はそれを確認すると、天井を見上げる。


「勝ったわよ。イリーナ……」


イリーナの居る天井にひびが入り、周囲に不気味と魔術陣が現われ、それは崩壊した。


垂れ上がって(・・・・)いたイリーナの髪は、重力に従い垂れ下がる。

そしてイリーナは、天井より解放された。


私は転移し、空中でイリーナを受ける。

身体を水平にして、青い髪の頭をかばい、再び転移し着地する。


「おかえり、イリーナ」


するとイリーナの額にいつもの文様が現われ輝く。

邪神の魔力が復活し、直ぐに文様は消えた。

生まれたままの姿であるイリーナは目を覚ます。


「ひきゃあ」


聖女イリーナは、手で胸元を隠す。

「え? お姉様?? という事は、ついに私の愛を……」


「へ?」


「お姉様……」

イリーナは、私に抱っこされながら、しがみついてきた。


互いの温もりを感じる。

『言葉などいらなかった』


そのまま、久遠くおんときは流れる。

崩壊する世界フィールドとは真逆の、不破ふわの絆がそこにはあったのだ。


やがて、青い髪が私の胸元より乖離した。

イリーナの銀色の瞳に、私の赤い髪が映り込む。

その時に見せた表情は、聖女のそれではなく、15歳の少女のものだった。



「……そういえば、私が最初にお姉様に助けていただいた時も裸……。ん?」


「ん?」

何かが気になったのであろうか、私はイリーナを下ろす。


「お姉様……」

そうつぶやくと、イリーナは私の素足へと抱き付いた。


「しまった!」

イリーナが目覚める前に着替える――というのを忘れていた。

スカートの中はズボン状だから大丈夫だろう。

そうたかくくってあなどっていた自分を叱責しっせきしたい。


股間に真っ裸で頭を埋める聖女様。

実によこしまなる存在だ。こんな聖女様は嫌だ。


ミニスカートの中身を確かめるべく、めくり上げられてしまう。

しまいにはズボンの中にまで指が侵入してきた。


「ちょッ!」


「んー。髪の色と同じ、赤ですね」



Eパートへ つづく

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