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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 6節   <22話>
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<22話> 「食後にデザートはいかがですか?」 =Bパート=


キュリアは輝く剣を地面に突き刺し、支えとする。

片腕で構えられた赤黒い魔剣に、もはや瘴気は無い。

それは同時に、魔力の枯渇を意味する。

回復魔術により大きな外傷こそ無いものの、衰弱しているのは誰の目にも明らかだ。


胸元から縦に裂けた青き魔法の鎧は、魔力不足により未だ修復に至らず、キュリアは素肌を晒している。

「……。同一人物だとは、にわかに信じられませんね」


「ええ。わたくしが戦った時とは、全くの別人の様に見えます。

 武器だけは同じでして、不思議なものです」

エミアスには、まだいくばくかの魔力の余裕がある。魔の血が流れているがゆえに。

生きた400年という歳月を感じさせない容姿なのは森エルフであるがゆえだ。

しわ一つ無い肌は、ヒトではあり得ない程に若く見える。

キュリアともまた違う黄色味掛かった髪が揺れると、きわだって長い耳が目立つ。



「おばさんたち(・・)、そこ……どいて」

銀髪の少女が開口する。


「おば? おば? どこですか? おばさん。――居ませんね。この領域には」

エミアスの眉間に、それまでは無かったしわが寄る。


「そうですね、エミアス様。見渡しましたが、そういった者たち(・・・)は居ません」

引きった眉を戻すと、キュリアはエミアスと互いに顔を見合い、二人頷いた。



すると何の前触れも無く、目の前で光が集約する。

二人の前に、首から上のない鎧が現われたのだ。


「あの灰色に輝きし鎧は『銀鋼ミスリル』。友の所有物に似ているが……まさか……」


首無騎士デュラハン……?」


対峙したまま、立ち尽くす二人。


銀髪の少女は、首無をおとりにして、ティーナに駆け寄る。

そしてティーナは召喚された物体・・の上に載せられ、運ばれていく。


運ぶ時間を稼ぐ為であろう。銀髪の少女は二人の方を向く。

するとまず、首無しがエミアスに斬り付けてきた。


エミアスは杖の柄で咄嗟とっさに防ぎ、キュリアがかばうべく、割って入る。

杖は光りの槍となり、エミアスは反撃に出る。


だが、鎧に当たるも光を弾いた。

「なっッ!? 聖なる光が……」


「下がって!!」

キュリアが輝く剣で斬り付ける。


だが、キュリアの剣も鎧に弾かれてしまう。

「くッ」


剣を持ったまま、首からぶら下がっている果実にキュリアは手を掛けた。


そこへ巨大な蛇が襲う。

キュリアは剣で斬り付け蛇を退治するも、飛散した体液は、剥き出しの肌を蝕む。

肌は蒸気を放ち、焼け融けただれる。



「中位回復魔術」

回復したのはエミアスだ。


「助かります」

そう告げるとキュリアは、銀髪の少女との直線上に首無を挟み、敵を盾として使った。

エミアスもそれに気が付き、キュリアの背部で直線上の位置取りをする。



首無の持つ剣と、キュリアの剣が交差する。

力なく構えられていた一刀は、いつの間にか二刀に変っていた。

「舐めるなッ!」


魔剣に再び瘴気が生まれ、輝く剣は光を強める。

首無の剣はいなされ、輝く剣が鎧の関節部分を襲う。


反撃に出た首無の剣は、あっさりかわされる。


「その太刀筋……。安心しました。中身まで本物では無くて。

 本物であったなら、今の私には勝てなかった」

魔剣を地面に突き立てるとキュリアは、輝く剣を両手で構えた。


輝く剣が首無の剣と競り合う。

そして巻き取り、キュリアは相手の武器を弾き飛ばした。


首無は鎧の様々な関節部分に連撃を浴び、そのまま地面に倒れる。

そして、その場から消えた。



視界に現われた銀髪の少女は武器を構えていた。

威勢を張っている様にも見える。



するとエミアスは、キュリアの前に歩み出た。

「待って下さい。元々、わたくしたちにこれ以上、戦う意思はありません――」


エミアスはキュリアを見つめ、キュリアは無言で頷く。

「――それは少しだけ、貴女の言葉で鬱憤うっぷんが溜まりましたが、それだけの事です」


戦闘中に頭を下げるエミアス。

「ティーナを。……娘を宜しくお願いしますね、小さなイシズさん」


エミアスが目線をそらした隙に襲われる事は無かった。

そうして頭を戻したエミアスの顔には、笑顔が浮かんでいた。


「……イシズじゃ……ない」

一方、銀髪の少女はふくれていた。







私は、ソフィアの元へと転移し、抱きかかえる。

そしてフィールドの一部階段状になっている箇所へと転移する。

ティーナと一緒に観戦をしていた所だ。そこにソフィアを横たえ、大剣を添えた。


ソフィアの身体は見た目の通り、子どもの様に軽かった。

私は小さく細い指に触れ、重ねる。


「ソフィア、ありがとうね。駆け付けてくれて。

 あなたがいてくれて、本当に助かったわ。

 あなたがいてくれたから、私はイリーナを救える」


黄昏の剣は赤く光り、私の赤い髪を照らす。

私は立ち上がり、そして決意を口にした。


「アイツを、倒す」


決着は既に付いた。

けれど、私の戦いは終わらない。

イリーナをこの手の内に取り戻すその瞬間ときまで。





「硬いッ」

転移直後、黄昏の剣は鬼をとらえた。だが、かすり傷程度。

現実世界で丸太に斬り付けた様な、そんな手応えだ。

服を裂き皮膚にまで達したはずが、失血しっけつには至っていない。


メイドの機械マトンカレンともまた違う手応えだ。

斬った感触があるのに、ダメージが通らないのだ。


「大技で決めるしかない――」



Cパートへ つづく

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