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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 5節   <21話>
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<21話>  「転移魔法」   =Eパート=


キュリアは同時に2つの詠唱を完遂する。

岩壁城壁ロック・フォートレス」「中位火弾魔術ファイア・キャニスタ


複数の火弾が降り注ぐ。熱量は満ちている。

それに呼応こおうし、ティーナの剣に刻まれたルーンが輝き出した。

火弾は剣に吸収され、剣は赤き炎をまとう。

赤き炎はやいばとなり、刃はキュリアを襲う。


しかし、漆黒の炎が出現し、赤き炎の標的を変えさせた。

≪エンチャント・ダークフレイム≫ 漆黒の炎を宿したソフィアの大剣だ。


港街スミュールでの戦闘にてキュリアは倒された。

ティーナに古代魔法を模した魔術を吸収利用されて。

だが今回は違う。ティーナの剣にえて吸収させた。

吸収時に生じるわずかなすき、それに合わせて攻める為。

ソフィアの大剣は、まさにそれを狙ったのだ。


ティーナは大盾で防ごうとするも、上段からの攻撃に分が悪かった。

大盾の角度を合わせるのが間に合わず、ソフィアの馬鹿力で放たれた剣撃により、盾による防御網をこじ開けられてしまう。


大振りなソフィアに対し、ようやく標的を定めた炎をまといし剣。

けれどソフィアは、かわそうとすらしない。


「てッっ!?」

ティーナは変な声を上げる。

岩で出来た壁が現われ、ソフィアの身代わりとなったのだ。

キュリアが同時に唱えていた「岩壁城壁ロック・フォートレス」は自身ではなく、ソフィアへ向けて掛けたものだった。


ティーナの鎧に二つの剣が爪痕を残し、鮮血が舞う。

キュリアが、スミュールでの借りを返したのだ。


そして、ソフィアの漆黒の炎を宿した大剣が、縦一文字にトドメの一撃を刻む。


だがそれでもティーナは沈まなかった。追撃を防ぐ為、剣で牽制をする。

剣は、それにより大剣と激しく衝突し、互いいを弾く。

更にキュリアへも対応するべく、大盾でソフィアを丸ごと覆い隠した。

背の低いソフィアはすっぽりと収まる。


そうしてやっと、キュリアの方へと剣を向け直した。――その時だ。

大盾に、衝撃が走る。音はほぼ無く、大きな衝撃だけが伝う。


ティーナは大盾ごと大きく吹き飛ばされていた。

身体は宙を浮き、転がされ、鎧が地面と幾度か激しく衝突する。

地面は鎧により削られ、鎧は青白い火花を発する。


大盾を地面に突き立て、ティーナは漸く自分の身体の制御を取り戻す。


「ריפוי」(リポイ)


ティーナの傷は瞬く間に癒えた。鎧や大盾までもが修繕される。


「いけねッ。こいつぁ、まずい。魔力がねぇや。カルキの力を使うかぁ?」







一方の私は、ミツキと鬼ごっこをしていた。


ミツキが私を転移陣で追い掛ける。

だが、追い掛けて転移した先に、もう私は居ない。転移魔法で逃げるのだ。


「お待ちなさい」


「いやいや、止まったらやられるから……」


ミツキは更に転移し追い掛け、短刀を振るう。

当然だが、そこに私は居ない。


二つの短刀を構え直すと、背に乗っていた長い黒髪がバサリと垂れた。

「いつまでも逃げ続けられると、――思っているのですか?」


「思って……いないわね」

そう言うならば私の方から攻めてみるかと、ミツキの元へ転移する。

転移と共に剣を振るう。だが、ミツキの身体は転移陣に吸い込まれ、斬撃は空振りとなった。


「もー。自分だって、逃げるじゃない……」


ミツキ少し離れた位置の転移陣よりヌルリと出でる。

「私は良いのです」


「は~ぁ?」

納得のいかない私は、ついつい奈良の大仏ばりの仏頂面ぶっちょうずらさらすのだった。

(これは、おしおき(・・・・)する必要があるわね……)


ミツキは二刀を構え、りんとしていた。

「随分、余裕そうですが――。

 そう頻繁に魔法での転移を繰り返してなど、いられるものですか」


それに対し私は、直ぐには答えない。黙秘をした。


「やはり、限界は近い様ですね」


「そんなことないわ。まだ十回以上、転移できるもの」





ミツキが攻め、私が逃げる、鬼ごっこが再開した。

それと同時に、ミツキによる勘定が始まる。


   壹。


   貳、參、肆。


   伍、陸。


   漆・捌・玖


   拾、拾壹、拾貳、拾參、拾肆。拾伍、拾陸、拾漆・拾捌・拾玖――


「なぜです? なぜ魔力切れにならない。これ程頻繁に転移魔法を使い――」

数だけが蓄積していく。


攻めるのを止め、ミツキはようやく気が付いたようだ。

けれど、怒った顔のミツキは可愛らしく、気品きひんがあった。

はかりましたね。魔力が切れるなどと――」


「あら? そんなこと、私、したかしら?」

額に指を当て、少しだけ考える素振りをした。

「ああ、そうね。嘘ではないわ。……まだまだ十回以上、できるのだけれども」



Fパートへ つづく

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