表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 5節   <21話>
179/200

<21話>  「転移魔法」   =Dパート=


私は手首の辺りで腕を交差させながら迫る。

ミツキは黒き黄昏の剣を使い牽制の為の斬撃を放つ。


だが、その斬撃は私には至らない。


ミツキの懐へと、容易に侵入できた。それと同時に私は交差させていた腕を解く。

二つの短刀が、ミツキの首元を挟むように迫る。

左右の頸動脈けいどうみゃくを同時に狙ったのだ。


けれど私の斬撃もまた、ミツキには至らなかった。

二つの短刀は、ミツキの持つおうぎにより、はばまれる。


黄昏の剣はミツキの手を離れ、地面への落ちた音が響く。

私は目を逸らさず、強引に短刀を押し込もうとした。

しかし、斬れたのは首の皮。左右の一枚ずつだけだ。


おうぎまい白虎びゃっこ


一瞬、目の前に白い霧状の何かが現れた。

私は反射的に、自身の攻撃をかす。

「なッ? カウンター技!?」


すると白い気体は、何事も無かったように、収まり消えた。


「あぶな……い、わね」


「よく分かりましたね。感? ――ですか?」


「んー。経験……かしらね」


「――なるほど」

ミツキは楽しそうに微笑んでいた。

そしてその笑顔と共に、再び転移陣の中へと消える。


私は足元や頭上も警戒しつつ、黄昏の剣――彼女の元へと歩む。


転移陣は私から二十歩以上は離れた位置に現れた。

私はミツキの全身が現われきるタイミングに合わせ、短刀を投げ付けた。


一刀は扇により阻まれ、時間差で投げたもう一刀は掴み取られてしまった。


(術後に硬直時間はなさそうね……)


私は黄昏の剣を拾い。

ミツキは扇で防いだ一刀を拾う。扇は帯へと戻された。


ミツキの手元には、小規模な転移陣が現われる。

二つの短刀は、そこへ吸い込まれるように消えた。

すると、短刀より二回り小さい剣が複数、転移陣よりり出し、ミツキの指と指の間に挟まる。


(え? 棒手裏剣ぼうしゅりけん? 遠投えんとう攻撃?)


ミツキは腕を交差させた後、フリスビーのように遠心力を乗せて手裏剣を放つ。

一投目は的確に私をとらえた。


手裏剣と黄昏の剣が衝突する。

うまく防ぐ事が出来た。


ところがそこへ、更に二本の手裏剣がせまるのだ。

よくある手だ。一投目は囮。

そしてこの二投目は、次への布石ふせき


私は、えてその流れに乗り、転移魔法を行使した。

転移先はミツキの後方、数歩で斬り込める位置。



振り向きざまに放たれた三投目が、私を襲う。

転移先を読んだのか、キュリアの様に何らかの方法で感知したのか。

それは判らない。しかし実際、手裏剣は私へと向かい投げ放たれたのだ。

それも、左右合わせ残り三本全て。


一本はかがんで躱した。

一本は私の髪をかする。

最後の一本は、運良く黄昏の剣のつかでの撃墜に成功。


至近距離からショットガンを撃たれた気分だ。


だがそれを見たミツキの方が、驚愕していた。

「あれを――躱しますか。尋常じんじょうではありませんね」


放たれた手裏剣は各々転移陣の中へと消えていく。

リロード完了といったところであろうか。


「貴女には躱せて?」

私は流れを止めるべく、挑発をする。


「さぁ――どうでしょうか」

ミツキは冷静に落ち着いた声で返す。焦りの色はない。



それではと私は、ミツキの様に複数のナイフをアイテム収納から取り出した。

当然、()()()()だ。


「いくわよ? ミツキさん」

ミツキにプレッシャーを掛けるべく、声にする。


ミツキは直ぐに、二つの短刀≪羽々斬丸はばきりまる≫を手元へ戻し、身構えた。



私はミツキと違い、ダーツの様に肘を支点にし、投げ付ける。

同時に放たれた二本のナイフ。だがそれらは、たもとかつ。

転移魔法により一本のナイフは目の前から消えたのだ。


同じ様な転移のすべを持つミツキ。

背後から襲うナイフに気付いていた。

ふらりと体を揺らして、のれんの如く躱す。


が、しかし、その躱した先には既にナイフが放たれていた。

目の前で二本のナイフは同じ様に別れ、前後で挟まれる。

けれど、今回はそれで終わりではない。

続けざまに更に二本が放たれていた。

二本は目の前から消え、左右から襲う。

前後左右の活路が塞がれ、逃げ道が奪われる。


これでは上か下に避けるか、転移陣にて逃げる他はない。


選んだのは「上」だ!

真上へ垂直に飛ぶのだ。


前後の二本は難なく躱せた。

しかし、時間差で放たれた二本は絶妙にズレていた。

このままでは、着地する時に喰らってしまう。


つるぎまい


左右のナイフは、なんとか短刀での迎撃に成功した。

その時だった。


「クイーンズ・プレッション」


第三波。

前後左右の四本に加え、更に八本。

計十二本のナイフが、立体的に十二方向より迫る。

これは無理だと判断し、直ぐに地面に転移陣を発動させて逃げた。




――私は、この瞬間を待っていた。

転移のタイミングが分かるという優位性は、絶大だ。

後は、位置を合わせるだけで済む。


ミツキが離れた位置の転移陣よりでる。

そこへ私は魔法にて転移した。


地面から現われている最中のミツキを、私は渾身の力を込めて斬り付ける。


しかし、手応えは無かった。これは想定外だ。

思わず、私はバランスを崩してしまう。


そこへ、転移を完遂させたミツキが反撃する。

フラつきながら、私は短刀を受け流す。


そして今度は、私が反撃をする。

今度は短刀で受けられたものの、手応えが確かにあった。


「何となく、その転移陣の秘密が……分かったわ」




転移が使える者同士の、転移をしない戦いが続く。

相手の転移能力を見極めるのだ。


似て非なる能力。

先に見極めた方が、圧倒的有利に戦闘を進められる。


ここからは探り合い。そして、()()()なのだ。



Eパートへ つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ