<21話> 「転移魔法」 =Cパート=
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一瞬だが目を離した隙に、ミツキの姿はもうなかった。
気が付くと、足元には転移陣が出現している。
私は慌てて足を動かした。
半歩ずつ両足を移動させた時には、既に背中にミツキがいるのだ。
ミツキの着物と、私の装備している赤い布製防具が触れる。
擦れ合い、キュイっと独特の音を生み出す。
ミツキは私の背中に、ピタリと密着していた。
私の方が僅かに背が高いのだが、やや屈み、足を動かす為に膝を曲げ開げている。
その為、ミツキの顔は私の直ぐ隣にまで迫っていた。
何とも言えない甘いチェリーの様な香りが、私の鼻を突く。
紅から来る匂いであろうか? 紅の塗られた唇は、耳元で妖しく動いた。
ミツキは艶のある声で囁くのだ。
「ほんに、怪な力であるのに――お人形さんの様。
肌にシミ一つ無い、赤子の様な肌。うらやましい――こと」
赤いキュロットミニスカートと黒いオーバーニーの隙間より生じる絶対領域。
そこにミツキの袴より出でた生足が当たる。
スカートと擦れ合い、捲れ上がったのであろう。
私の足と足の間へと侵入し、ミツキの体温までもが伝わってくる。
ミツキの左手は二刀の短剣が逆手で握られたまま、私の腰辺りに絡み付いている。
更に右手は畳まれた扇が握られ、それは私の首元へと突き付けられている。
私はそれ故、身動きが取れないでいた。
(まずい……これはさっき見た、関節技と剣技の融合した攻撃)
「ちょっとー!」
そんなゲームに無い動きは、止めてもらいたい。
そして、これは、まずい。まずい。まずい。
このままではキュリアの様に倒されてしまう。
私は慎重にミツキの様子を窺いながら、黄昏の剣を手元に戻そうとする。
すると、喉に突き付けられた感触がなくなった。
――黄昏の剣が宙を舞う。
扇で弾かれ、回転し、地面へと刺さった。
「うがぁ゛」
私はミツキが左手で持っている二つの短刀を両手で強引に奪いにいった。力技だ。
GMスキル≪没収≫を行使して武器を奪う事もできたが、ついやってしまった。
だが結果的に、これはアリだろう。
あまり手の内は、見せない方が良い。
それに、黄昏の剣は――弾かれたのではない。――弾かせたのだ。
見事に私は、ミツキの短刀二つを強奪できた。
ミツキは慌てて、ステップし円舞で距離を取る。私の右側面に。
私は二刀の短刀の内、片方を逆手で構える。
順手にしたり、逆手にしたりと、短刀の特性や重さ長さを確かめた。
「このテの武器は使い慣れていないのだけれど」
検閲
≪羽々斬丸≫
|耐久値 :∞/1
|砕けた天羽々斬剣を打ち直した短刀
「はッ?」
思わず声が出てしまった。
短刀を持ったままで、慌てて口元を隠す。
≪天羽々斬剣≫とは、≪天叢雲剣≫に次ぐ御神剱。
そして後者は、ゲーマーならば誰もが知っている、最強クラスの刀なのだ。
ミツキは転移陣を使い、移動する。
移動した先には、彼女――黄昏の剣がいた。
彼女はミツキの懸命な努力により、地面から解放される。
「何ですか――この剣は。人が扱うには重過ぎる。鬼ですら重過ぎる」
そう愚痴を零すミツキ。
彼女は構えられると、一瞬だけ黄昏色に光り輝く。
だがそれ以降、光ることはなかった。
「どうやら、振られたみたいね。彼女に……」
「魔力が一瞬にして吸われましたが、――何なのですか? この剣は」
その問いには答えず、私は前傾姿勢で直ぐに突撃を仕掛けた。
敢えて直線的な動きで迫る。
再び重なり合う三つ重ねの刃。
だが、黄昏の剣は薄暗く静寂な闇へと成っている。
ミツキは私の短刀による連撃を、黒き黄昏の剣にて必死に受けていた。
剣の重みに耐え、必死に連撃を防ぐ様は、健気にさえ思えた。
けれど、私は攻撃の手を緩めない。ここで勝敗を決めるべく、一気に攻めた。
Dパートへ つづく




