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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 5節   <21話>
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<21話>  「転移魔法」   =Aパート=


MMORPGにおいて、占有型閉鎖フィールドでの短期決戦は最も熱いバトルだ。

決闘用のコロシアムとでも言うべきそこは、通常フィールドとは違い、時間や広さや人数の制限がある。

だからこそ、そこには様々な作戦や戦術が生まれる。


その内、複数対複数において最も多く使用される方法が『速攻型』だ。

開幕に最大火力をぶつけ、頭数を減らす。

強化魔法や特殊能力アビリティーが切れる前に、ひたすら敵を削る。

漫画やアニメの様に出し惜しみはしない。

やらなければ、やられるのだ。

ピンチが訪れた時には、もう挽回できない状況な事の方が多い。

だからこそ、極力そのリスクを回避するのだ。


次に多い戦術が、最後に全火力を使う方法の『追い込み型』だ。

これは敵の数が少ない場合に用いられる事が多い。

漫画的な展開に思えるであろうが、実はその逆なのだ。

なぜならば、敵が終盤に使う強力な技の回数を抑制するのが目的だからだ。


例えば、敵がHPの四半分を切ると本気を出す演算手順アルゴリズムで動くとする。

その場合、HPが四半分を切る直前に、全火力を使って畳み掛け、そのまま何も()()()に撃沈させるのだ。

この展開は、敵が本気を出す前に倒すので、漫画やならば、残念ながら盛り上がりに欠ける事であろう。



他にも、これら2つを複合させた戦術や「ペット作戦」「ゾンビアタック作戦」と呼ばれる方法など、多岐にわたり存在する。


攻略方法を考える事は、MMORPGの楽しみ方の一つでもある。

時にそれは、開発側の想定を超える事さえある。


いずれにせよ、プレイヤーたちの努力と試行錯誤の末に、攻略法が築き上げられていくのだ。



さて私たちがこれから行う戦術は、堅い盾役や回避力の高い盾役が敵を引き付ける「おとり作戦」や、俊足な者が敵を引き付け誘い出す「マラソン作戦」に近い。


私が敵方の3名を引き付けている間に、仲間全員でティーナ1人を倒すのだ。







黄金に輝く聖剣と瘴気を放つ魔剣とが織り成す軌跡。

束ねられた金糸きんし髪までも舞う。

青き鎧をまといし八英雄、キュリアだ。


銀と金が織りなす紋様もんようが刻まれし剣は鎮座する。

桜のごとき髪がほこる。

何色にも染まらない純白の大盾おおたてと、そして鎧。勇者バレンティーナだ。


まずは、互角だった。


盾を持ったティーナは強い。

そして何より堅い。

鋼を相手に修練するような、まさに鉄壁の防御力だ。


「隙が無い……。リル殿はどうやって攻め入ったのだ……」

キュリアの剣が放つ軌跡は、その質が変化する。

織りの様な繊細な物から、鈍重な針金を編み込んでいる様な荒々しい物へと。



ティーナは大盾で、キュリアの一刀の剣を防ぐと、反撃した。

だがキュリアは、その反撃に合わせ、キュリアはもう片方の剣を繰り出すのだ。


互いの剣が、鎧ごと身体を切り裂いていく。

鎧を装備していなければ、瞬く間に致命傷だ。

キュリアは斬撃を身体で鎧で受けながら、反撃する。


ティーナの隙が無い剣技。そこから隙を作るべく、キュリアは動いた。

相打ち覚悟での攻めを始めたのだ。


まさに消耗戦だ。


ティーナは盾で身を隠しながら、自身で回復魔術を詠唱し、傷を癒やそうとする。

だがキュリアは、エミアスの回復魔術により、傷が既に癒えていた。


キュリアはすかさず、ティーナの回復を阻止する。

二刀の剣が執拗にティーナを追い詰める。


ティーナは回復魔術を中断し、剣と盾で防御した。

「邪魔しやがって。この、すっとこどっこい!」



辺りに雷鳴が轟き、エミアス目掛け落雷が降り注ぐ。


「םער」(ラムア)


怒りの矛先は、キュリアを回復したエミアスへも向かっていた。


「こいつぁ、しまっ……」


けれど落雷は、エミアスへと至らない。

魔剣師であるソフィアが防いだのだ。


ソフィアの腕は、大剣とは不釣り合いで、折れてしまいそうな程に細い。

だが、自身の身長よりも大きな大剣を、片腕で軽々とかかげていた。

それも空中で。


大剣を含めたソフィアの周りには、球形状の魔力障壁が張られている。

落雷は、ソフィアの方へと吸い寄せられ、そして弾かれ、地面へとなされたのだ。


地面に着くシャボン玉の様に、障壁に守られながら着地するソフィア。

障壁は着地と共に弾けて消える。


着地したソフィアの足元では、エミアスの張った三重の魔術陣が起動していた。

ソフィアの髪はゆっくりと靡いている。


しかし、髪は直ぐさま靡くのを止めた。

ソフィアが大きく跳び、ティーナ目掛けそのまま斬り降ろしたのだ。


大剣が降り注ぐ。

ティーナは垂直に立っていた大盾を斜めに構える。

大剣と大盾が激しく衝突し、ティーナの盾は悲鳴を上げた。


大剣に込められた魔力は重い。

キュリアが攻撃している間、ずっと溜めていたからだ。


それまでキュリアに対し防戦をしていたティーナには、大剣を大盾にて防ぐ事により、更なる隙が生じた。


当然キュリアは、その隙を見逃さない。

背面に回り込み、二刀ほぼ同時に斬り付ける。


一刀は剣により受けなされるも、一刀は確実にティーナの脇腹を捉えた。

鎧は大きく引き裂かれ、血は辺りを湿らす。



「ריפוי」(リポイ)


ティーナが唱えると、傷は瞬く間に癒えた。

それに付随し、追随して、鎧までもが修繕される。

「残っ念ん……。振り出しへもどる」


「むうぅぅぅ……」

ソフィアは小さき頬を目一杯に膨らませ、ただただ悔しがる。


しかし、キュリアは動揺を誘う為であろう。えて声にした。

「貴殿はそろそろ魔力が……枯渇してきたのではありませんか?」


ティーナはその問いには答えない。

不気味に口元を動かし、ニヤけてみせた。



Bパートへ つづく

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