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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 3節   <19話>
167/200

<19話>  「英雄vs勇者・後編」   =Hパート=


本日、11月10日 おかげさまで 連載一周年を迎えるに至りました。

その間に掲載した本編の文字数は27万字。

地の文が2割というかなり密度の濃い当作品。

ここまでお付き合いいただいた事、心から感謝致します。

本当に、ありがとうございました。


2019年 11月10日 すめらぎ




私は独り、勇者パーティーの戦闘を解析していた。

まるでゲームの攻略動画を注視するかの様に。

ティーナの仲間である三人の技能や能力、武器や戦闘スタイルに至るまで脳裏へと焼き付けたのだ。


これは作戦だった。

突入直前、スパスたちが魔将と戦ってくれていた稀少きしょうな時間を使い立案した。

ちなみに、MMORPGにおいては何のこと無い、よくある戦術が元だった。





「雷神の怒り」イルシカレ・カンナカムイ

ティーナの叫び声と共に、赤い稲妻が降り落ちる。

消た魂(けたたましい)それは、今までに聴いたどの雷撃よりも激しかった。


標的はなんとエミアスではなく、イシズが召喚せし腐った上半身だった。

腐敗臭を焦げた臭いが覆い隠す。ティーナの雷撃により、一撃で沈んだのだ。



「シズちゃん、しっかり臭いも回収しといてくだせぇ」

ひょこりとピンクの頭だけを大盾から座ったまま出したティーナは、亀だった。


(可愛い……。喋らなければ)



「ティナ、ひどい……。わたしの可愛いアーちゃんに」

イシズは輪聖叉わせいさを握り、感情を込めて抑揚の付いた声を上げた。


「こちとらあ、気が短えんでぇー」


「……。……。ひどいよ」


瘴気が吸い込まれ、続いて灰と化したアーちゃんが回収される。

心なしか異臭も消えた気がする。


でも、鼻が馬鹿になっていて、匂いを感じなくなっている可能性もある。

だがどちらにせよ、作戦に支障はない。



亀となり動こうとしなかったティーナは、身体を大盾から出しようやく立ち上がる。

そして距離を取っていた私の顔を覗く。

「あたい()も、そろそろ再開しやすか?」


私はティーナの顔を見返す。

「ええ、そうね。でも、()()()が戦うのは、私ではなくてよ?」


「へっ?」

間の抜けたティーナの声が辺りへと飛散した。


顎に手をやり、一呼吸置いてティーナは問う。

「あー。まさかあの金髪の嬢ちゃん? りぃべんじってぇ奴ですかぃ?」


対し口元に手を当て、隠しながら私は答える。

1/3は(さんぶんのいち)正解ね。なんと、()()()さんの相手は、私以外の三人なのよ」


ティーナとそして私は、顔に当ていた手を下ろし腕を解く。


だが、ティーナは難しい顔をしていた。

「ほぉ、それでおめぇさんは、どうするおつもりでぃ。

  ……まさかぁ、とは思いやすが、三人を相手にするんですかぃえ?」



私は片足を一段上に掲げ、ティーナの方へ肩を向ける。

「そういうことよ」


「そんな無謀な!?」

ティーナは片眼を大きく見開き、漫画の様な驚き方をした。


私は段をいくつか登ると、ティーナの方へと身体全体を向ける。

そうして見下ろし、告げる。

「私の心配、どうもありがとう。

  ――でも貴女は、自分の心配をした方が宜しくてよ?」



「ぐぬぬぬぬッ!!」

ティーナは悔しがり――


「さぁ、どうしようね? どうしようね?」

――私は煽るのだった。






黄昏たそがれの剣を抜刀し中央を向き、私は声を張り上げる。

「みんな、十分に見れたわ! ありがとう」


ソフィア、キュリア、エミアス、皆が一斉に私を見てうなずく。

そして各々が、堂々と敵に背中を向けた。

皆、一斉にティーナの居る方へと集まろうとするのだ。


それを見てイシズは、輪聖叉に集中し魔力を込め始める。

輪聖叉は輝きを放ち、瘴気が徐々に漏れ出てくる。


しかし私は、その一瞬の隙を見逃さない。

黄昏の剣を誰も居ない空間へ向けて構え、更に斬撃を発動させる。


“三連撃「アルマス」”


剣技が発動した瞬間

――私は転移魔法でイシズの背後を取った。


描かれたゼータの軌跡は、一瞬にしてイシズを沈める。


イシズの黒いローブはなかなかに防御力があったのだろう。

即死を免れ、致命傷に留めている。

代わりに黒いローブは完全に引き裂かれ、羽織っていた服は鮮血で透明度を失っていた。



「なっ――」

キュリアの背中を追い掛けようとはぜず、ただ見つめていたミツキ。

イシズが倒されるや、双剣を片手にまとめて持ち、扇を抜く。

扇を広げ、転移陣を使用して短距離転移し私の近くまでやって来る。


移動系の術を持つイシズは、瞬時に事態を理解し、相当に警戒したであろう。

イシズと私から数歩以上、離れた場所に現れたのだ。


それを見た私は、転移魔法によりその場から移動をする。



転移したその先に居るのはメイドの機械マトン、カレンだ。

状況が理解できず、不意を突かれた――といった様子だった。


カレンは目の前に突如現われた私に反応できていなかった。

黄昏の剣による斬撃数発を、腕で受け流すだけで精一杯なのだ。


牽制攻撃を仕掛けると、簡単に誘われるままに防ごうとしている。

私は誘い込んで強力な一撃を喰らわす。

そうこうしていると、カレンはたまらず後方へと大きく飛んだのだ。

魔拳師まけんしの様な動きであった。


私はそのかわし方を、既に何度か目にしている。


「ハメ技みたいで、好きではないのだけれど――」


空中に飛んで体勢が変えられない状態なカレンの背後へと、私は転移した。

そして、背中に黄昏の剣を突き立てる。


「――でも、嫌いでもなかったわ」


カレンは顔だけでもと、振り向こうとしたのだろう。

深い緑色の綺麗な髪が僅かに傾いた。


だが、カレンにできたのはそこまでだ。


ゼロ距離から私は「幻狼剣げんろうけん」を放つ。

狼の様なエフェクト、幻狼が現われると、放たれた軌跡はカレンを貫く。


カレンの身体は、自由落下時の何倍にもおよぶ勢いで、地面へと激突した。

彗星すいせい彷彿ほうふつさせる程、その威力とは裏腹に、美しかった。



「お姉様、エグいです……」「エグイのぅ」

滞空たいくう中に天井を見上げた私。

イリーナと邪神ルドラの声が聞こえた気がしたのだ。


天井から釣り下がるイリーナを視界に入れる。

(待っててね。今、助けるからね)


視線を戻し下げ、わずかに映る光景を、ゼロコンマ何秒の世界で状況判断する。


ミツキは扇を振るい、イシズの傷を癒やしていた。

意識はまだ戻らない様だ。



すると、私が着地する直前、正面斜めに魔術陣が現れる。

着地の瞬間に合わせ、ミツキは転移して斬り掛かって来たのだ。

ミツキはなんと、イシズの治療を中断し攻めてきた。


私は両足が地面に着くと同時に身を低くかがみ、双剣を避ける。

片膝を突き、その体勢から居合い斬りの様に立ち上がりつつ反撃した。

ただ一つ、さやを使った居合いと違うのは、両腕で斬り付けた事だ。


黄昏の剣は甲高い声を上げ、ミツキを双剣ごと、ねじ伏せ、薙ぎ、払う。


一撃でミツキは吹き飛ぶ。それは本気の一撃だった。

私は双剣をも、へし折る気だったのだ。


吹き飛ばされたミツキと、私の距離は開く。


沈着冷静そうに見えていたミツキには、あせりの表情がうかがえる。

動揺しているのであろう。ミツキは私の背面へと転移した。



私は赤い髪を振り、ミツキの方へとゆっくりと振り向く。

短いスカートは、それでもいくらか舞い踊っていた。


「貴女の心まで、動かしてしまったかしら? これが――転移魔法よ」









黄昏たそがれの剣の鋒刃きっさきは、こうべを垂れ、無気味ぶきみきらめくのだった。



20話へ つづく



他サイトのウェブ小説イベントへ参加する為、

今月11月中は連載休止とさせて頂きます。


活動報告につきましては、Twitter等をご覧下さい。

https://twitter.com/ikaigm_official


19話、お読みいただきありがとうございました。


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