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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 3節   <19話>
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<19話>  「英雄vs勇者・後編」   =Fパート=


「仕方がありません。秘技――お見せ致しましょう」


ミツキはおうぎたたみ、おびへと戻す。

そしてそでの中へと両腕を入れると、短刀を取り出した。

さやは落ち、カランカランと乾いた音を立てる。

短刀は真っ直ぐで、刃先は諸刃もろはとなっている。

それが左右に二つ。ミツキは双剣そうけん使いであったのだ。


「ご賞味しょうみ下さい。わちきの『つるぎまい』――」

距離を詰め、迫るミツキ。


キュリアの持つ剣は、短剣よりも長い。だがミツキは身長のある分、腕が長い。

結果的には、キュリアの方が剣の届く範囲は広かった。

ミツキが攻撃を当てる為には、より内側へと侵入しなければならないのだ。


キュリアの剣による二刀流と、ミツキの短刀による双剣が衝突する。

黄金の剣と魔剣が上段から同時に降り注ぐ。

それらをミツキは短刀の手元付近で受け流した。

しかしその衝撃音は軽く、既に次へと移っていた事を示す。


二つの剣が水平に押し寄せる。

それらをミツキは刃先を下に向け、当てて軌道をらす。

互いの剣がハの字に交差し、膠着してしまう。

見つめ合う二人。紫の瞳と黒の瞳より発する視線は絡み交わる。


キュリアの剣には追撃効果がある。だが、先に退いたのはキュリアの方だった。

そして、停まった二人の時間を動かしたのもまた、キュリアであった。


キュリアは先程とは異なり、右の剣を振り下ろす。

さらに時間差で、左の剣は手の甲を返さず、右へと薙ぎにいった。

それは初動のない「無拍子」であった。


振り降ろした右の剣は、左足で踏み込み身体を横にした体捌たいさばきでかわされてしまう。

だが、躱した先で待ち伏せているのは、無拍子で放った左の剣なのだ。

左の剣はミツキの短刀と激しくぶつかり合い、火花が走る。


キュリアは、回転し勢いの止まらないミツキの身体を鎧で受けた。

再び膠着する。先ほどの膠着は向かい合ったままであった。

だが今度は、キュリアがミツキを後ろから抱きしめる様な体勢なのだ。

背の高いミツキの黒髪により、キュリアは視界を遮られている。

また左右の剣は、同じく左右の短刀で防がれている。

どうやら純粋な腕力では、ミツキの方がまさっているのかもしれない。


すると、一瞬にしてキュリアの視界から黒髪が消えた。

気が付くと、蟹の挟みでつままれたかの様に、横から両足で挟まれていた。

更に鎧の肩口を掴まれると、受け身の取り辛い体勢のまま後ろへと倒される。

キュリアは後頭部を床へと叩き付けられてしまったのだ。


鎧に襟がなければ、おそらくそのまま短刀が喉に達していた。

そして防御魔術がなければ脳震盪のうしんとうを起こし戦闘不能になっていた。


ところが、膝を折り仰向けに倒れたキュリアから、ミツキは直ぐに離れたのだ。

秘密はミツキ首元で輝く、剣の存在にあった。

倒されながらキュリアは、ミツキを狩りにいっていたのだ。

ゆっくりと起き上がるキュリア。ゆっくりと距離を取りつつ立ち上がるミツキ。

その後も、二刀流と双剣のせめぎ合いは続いた。


同じに見えた互いの戦闘様式。だが、その違いが徐々に出始める。

半身になった時の身体の角度も、その一つだ。

キュリアの構えは現在真横に近く、ミツキの構えは正面に近い。

キュリアは上段に構え、ミツキは中段寄りに構える。

キュリアの剣には静と動があり、最短距離で獲物を仕留めに来る。

ミツキの短刀は弧を描いて迫り、遠心力が乗っている。

弧を描いている為、軌道を読みやすくはある。

だが、連撃が多く更に双剣であるが故、読めていても反応し辛く厄介なのだ。


幾度かの攻防の後、背後を取ったキュリア。あるいは取らされたのか。

右の剣をミツキが背中に回した二刀で受けた時だった。


忽然とミツキの姿が消えた。

ただ視界から消えたのではない。本当に姿が消えたのだ。

そして床には魔術陣だけが残る。


ミツキはキュリアの背後、床から音を立てずに、ぬるりと現われる。


しかしキュリアは、既に魔剣グラムを鎧の左肩上部から回していた。

背中に迫る二本の短刀。それらを肩当てに乗せた魔剣で防いだ。

更に逆手に持った黄金の剣でミツキを突く。


「私への魔術陣を使った転移攻撃は……奇襲たりえませんよ」


「なるほど。初見でこれを防ぐとは――お見事です。賞賛に値します」

足運びで突きを躱したミツキは、距離を取って再び構える。

「なるほど。では、こういうの嗜好はいかがでしょうか? 剣舞けんぶ羅刹らせつノ舞』」


キュリアも応戦する為、右の剣を上段に構える。

「私は、食が細いもので……あまり気が進みませんね」


ミツキは楕円軌道で迫るも、ふらりと読みづらい動きで距離を詰めた。

「喰らいなさい――」


“八連撃”


何発かが鎧ごとキュリアを斬り裂く。

キュリアも何回かの反撃をミツキへと入れていた。


あまりに速い八連撃の為、斬撃は殆ど見えず、音さえも後から追い掛けていく様な錯覚さえ起こす。


だがしかし、互いに傷を負わせる事に成功するも、戦闘は進展しないのだ。


「中位回復魔術」

キュリアの傷は、直ぐさま回復する。


治癒ちゆの舞」

ミツキも片手で短刀二本を持ち、帯から扇を抜くと、傷が癒えていた。


キュリアの鎧は、青く光り自動的に修復された。

ミツキの着物も、いつの間にか直っていた。



Gパートへ つづく

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