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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 3節   <19話>
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<19話>  「英雄vs勇者・後編」   =Eパート=

お待たせ致しました。風邪はだいぶ治りました。ご心配をお掛け致しました。




キュリアは魅憑鬼ミツキと対峙していた。


「ティーナと戦いたかった――のでは?」


貴女あなたを倒したら、次に戦いますよ」


キュリアは青い鎧に金髪。対するミツキは紫の紋付き袴に黒髪。

しし』対『とら』あるいは、『竜』(りゅう)対『たつ』といったところであろう。


ミツキは和風の舞傘まいがさをゆっくりたたみ、微笑む。

「そうですか。残酷――ですね。わちきに勝てず、果たせないのですから」


キュリアは右腰に差している魔剣を抜き放つ。

左手で抜かれたそれに、右手を添える。魔剣は直ぐ瘴気に包まれた。

「言いますね……」


ミツキは舞傘の柄に両手を添え正眼せいがん、つまり正面に構える。

「そちらこそ――」


どうやらミツキは、傘で戦う気の様だ。



必然的に魔剣と舞傘は衝突する。金属同士の様な衝撃音を発生させて。

その音だけで、ただの傘ではないと想像が付く。


だが魔剣グラムも当然、ただの剣ではない。

魔剣の持つ瘴気が、傘をむしばむのだ。

瘴気により、舞傘の持つあでやかな色彩は変貌を遂げる。


ミツキは舞傘で、強引に魔剣を薙ぎ払った。

「戦闘が長引くのは――得策ではありませんね」



キュリアは魔剣を構え直し、距離を詰める。

魔剣と舞傘が再び重なる。だが今度は一瞬で離れるのだ。

舞傘は魔剣をなす。そして重い突き技にて、キュリアを鎧の上から襲う。


「ぐっはッ……」

苦痛を声に出し、一瞬だがキュリアは動きが止まる。


隙を見い出したミツキは、舞傘を両手で開くと、その状態で回転させる。

舞傘は回転するノコギリの如く、高音をがなり立ててキュリアを襲った。


キュリアは剣で咄嗟とっさに防ごうとする。

しかし力無く、簡単に剣を弾かれてしまった。

先ほど喰らった突きにより、呼吸がままならなかった為であろう。


キュリアには、もう一本の剣を抜くという選択肢が残されていた。

ところが、それを選ばなかったのだ。

力のこもらない剣ではなく、別の選択肢を選んだ。


それは『魔術』だった。


キュリアによる「ファイア・キャニスタ」の詠唱は一瞬で終わる。

至近距離から出現した数十の火弾がミツキへと迫るのだ。

先の戦いで黒魔術師の魔将が放ったのと同様、相当な熱量を有している。


火弾はミツキの回転させた舞傘に衝突し、焦げた臭いが辺りへ充満する。

舞傘により弾かれ四散させられてしまったのだ。


それでもミツキをその場に足止めさせるには十分だった。

その隙に、キュリアは魔剣グラムを拾い上げられたのだから。


ミツキは舞傘を閉じると、なおもキュリアを襲う。

魔剣は攻撃を受け止め、瘴気を浴びせ返す。

そして幾度いくどかの攻防の後、それは訪れた。


キュリアは魔剣を逆さにし、舞傘を防ぎつつ二本目の剣を抜いたのだ。

抜かれた剣は黄金に輝きを放ち、抜いた勢いのままに舞傘を薙ぐ。

庭鋏にわばさみのように交差する二刀。一瞬にして枝である舞傘を斬り裂いた。


そうして斬り落とされた舞傘の先が発する鈍重な衝突音。

それが発せられるよりも早く、黄金の剣がミツキを襲う。


ミツキは帯からまばたく隙もない程、素早く鉄扇てっせんを抜く。

逆さで閉じた状態のまま、黄金の剣を防いだのだ。


だがそれだけで終わりではない。

キュリアの二刀目、魔剣グラムの突きがミツキを襲う。


おうぎまい玄武げんぶ

突如、鉄扇が青い光を放つ。

開かれた鉄扇は魔力を帯びると、くろき液状の盾を瞬時に形成する。

そして、キュリアを身体ごと弾いた。


間合いが開くとミツキは、斬られた舞傘を投げ放つ。

更に、空いた左手を右肘に当て鉄扇を振るう。

すると、炎を帯びた旋風せんぷうが出現した。


それはさながら西遊記に出てくる芭蕉扇ばしょうせんの様であり、振るうミツキは持ち主である羅刹女らせつにょ鉄扇公主てっせんこうしゅの様である。


だが炎を帯びた旋風は、キュリアまでは届かない。

岩で出来た壁が現れ、ただの炎と化したのだ。

その炎も、魔術により現われた金属製の盾により遮られる。


キュリアは更に詠唱を重ねる。

一瞬にして、新たな「岩壁城壁(ロック・フォートレス)」が掛るのだった。


それを見て、ミツキは気怠けだるそうに言い放った。

「厄介ですね。そして――二刀流ですか」



Fパートへ つづく

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