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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 3節   <19話>
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<19話>  「英雄vs勇者・後編」   =Cパート=


ティーナは詠唱を始める。剣の間合いまでは、数歩分あった。


「中位火弾魔術」


大盾を腕だけで支え、空いた手の内から、火の弾が発せられたのだ。

大砲の弾を思わせるそれを容易に躱して、私は前へ出る。

同時にそれは陽動なのだと理解した。


大盾を構え、その直ぐ横に剣を構えているティーナ。

それに対し、私は剣を持つ側の肩を突きに行く。


だが黄昏の剣は、またしても大盾に阻まれる。

逆に、ティーナの炎に包まれた剣が私を突く為に迫る。


私は受け流された剣を大盾にわせると、突き刺す様に黄昏の剣を立てた。

ティーナは無意識に大盾へと力が籠る。

私を突こうとした炎の剣は鈍り、中途半端に止まった。

剣を包む炎の熱は、それでも私の元へと届く。


(突かれたらまずいわね……)


間合いが互いの剣の届く範囲から、一旦外れる。

するとティーナは、顔を大盾から出した。

そして口元が僅かに動く。


「הבזק」(ヘブゼック)


魔力の鼓動を一瞬感じた私だが、目の前で何が起きたのか、直ぐには理解できなかった。

――私の前に岩で出来た壁が現われると、身代わりとなったのだ。


「これは岩壁城壁ロック・フォートレスの効果? 私、やられ……た? ティーナの魔法?」


どうやら、ティーナから発せられた熱閃光のを喰らってしまっていた様だ。


詠唱時間の必要ない「魔法」という存在が、こうもあっさり戦局を変えてしまうものなのかと思った。

剣での果たし合いに、拳銃を持ち出された気分だ。


しかし、魔法にも欠点がある。魔力消費が激しいのだ。

何発も容易に撃てる代物しろものではない。

だからこの世界では魔術が発展し、魔法は過去の遺物となったのだ。

例えばイリーナは回復()と回復()の両方を使えたが、通常使うのは魔術の方だ。

エミアスやキュリアに至っては、魔法を使えない。



「やはり、強ぅござんすね。あたいに言霊ことだままで出させるたぁ」


私は、何故かその言葉に背筋が凍る思いがした。

前にその様な言葉を聞いた時の事を思い起こしたからだ。

私はティーナを凝視する。


口元が、また微かに動いた。

私は咄嗟とっさに、アイテム収納から手近な長い“何か”を装備し、空中へと放り投げた。



「םער」(ラムア)


辺りに雷鳴が轟き、私の投げた何かを目掛け、落雷が降り注いでいたのだ。


私は落雷が発する音の恐怖に負けない様、歯を食い縛り、突撃を仕掛けた。

恐怖により力みの入った斬撃は、軌道を読まれ、当然ながらまたしても大盾で防がれる。


何度も何度も大盾に防がれたストレスと、先ほどの落雷による恐怖とが合わさる。

私は大盾を黄昏の剣でたたいてやった。

何度も何度も。自暴じぼうな程に。

大盾と黄昏の剣が当たる度に、独特な衝突音が響く。


我に返ると私は、何本もの視線を感じた。


このフィールドにいた、私を覗く七人全ての視線が、私へと向いていたのだ。


「へ?」

思わず間抜けな声を私は出した。真剣勝負だというのに――だ。


「やっ、嫌だなー! 作戦よ? 作戦!」



ティーナは突然、剣の炎を消して鞘に収めた。

「んー。興が削がれやした。皆はどうぞ続けてくだせえやぁ」


どうやら皆、戦わずに私たちの戦いを初めからずっと見届けていた様だ。

ティーナはそれも含めて考え、戦闘を止めたのではなかろうか。


私も一旦、黄昏の剣を鞘に収めると、自分が先ほど何を投げたのかを確認する。

長い“何か”、それはチート級アイテムである≪恵比寿竿≫だったのだ。


(さすがは折れる事の無い破壊不能のチート級釣り竿、落雷でも無傷だわ……)


私は手に持つと、直ぐにアイテム収納へと仕舞った。

そしてフィールドの一部階段状になっている箇所へゆっくりと歩み、腰掛けた。

何故かティーナも私の後を付いて、やって来た。

私の腰掛けた直ぐ隣へティーナは座ったのだ。


(近っ!)

パーソナルスペースなどガン無視だった。


(ここは電車の中ですか?)

密着して座るティーナは、私の顔を覗き込む。

イリーナが隣に居る様な、そんな錯覚にさえ襲われる。


だが、本物のイリーナは未だに天井に吊られ、目を覚ましてはいないのだ。


「やり辛いわねぇ……」


「え? あたいですかぃ?」


わざとそっぽを向いて呟いた私は、その言葉には答えなかった。



Dパートへ つづく

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