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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 3節   <19話>
160/200

<19話>  「英雄vs勇者・後編」   =Aパート=

本日、異世界GM初のレビューを戴きました。

小鳥遊翼先生、ありがとうございます。重ねて御礼申し上げます。


2019年09月27日 すめらぎ


『幸せな人生を送るには』 小鳥遊 翼

https://ncode.syosetu.com/n3257fr/




「リルじゃったな……おんしゃぁ、それでも生存してると言えるんかのぉ?」

八英雄、神龍ナシャは私に問う。

ナシャの言葉に不意を突かれ、私は言葉を失った。


「ぬぅ?」

悪びれる事なく、わらべの無邪気さをナシャは発揮していた。


(ちょっと、この女童……何言っちゃってるの? これから戦闘だっていうのにさ……)

そう思った私だが、実はそれほど動揺していなかったみたいだ。


「私としては――イリーナを救う事以外、些細な事です」

なぜかこの言葉が、すっと出てきたのだ。私は一度瞳を閉じ考え、見開くと続けた。

「自分が生きているか、死んでいるか、存在しているか、存在していないか、私自身にもそれは分かりませんよ。そうですね……。それは助けた後、イリーナに聞いてみたいと思います。あのなら、きっと答えを導き出してくれそうな――そんな気がするので」


ナシャは丸い目を何回もぱちくりさせる。

「おんしゃぁ、イリーナの事をぉ信頼しておるのじゃあーなぁ」


「ナシャ様? それは少し違うかも知れませんよ。家族の様な絆とでも言えば良いのか。そこには信頼すら超えた何かが、確かにあります。そういった意味では、私も繋がっており、存在しているのでしょうね」


「うぅむぅ。イリーナは幸せ者じゃのうぅ」

そう言うとナシャは、かつての戦友である八英雄キュリアの顔を覗き込み、まじまじと見つめるのであった。




ナジャとのやり取りを思い出した私。

その自分の瞳に、イリーナの姿が映った。


「イリーナ……」

強くだが優しく――多分私は、そう呟いた。


私たちは黒い聖母像に触れると、転移魔法の様に瞬間移動をしたのだ。

ここは独立した閉じた空間だ。

イリーナの多次元収納内へ入った時を思い起こすと共に、どこか子どもの頃から馴れ親しんだMMORPGの占有型バトルフィールドらしさを私は感じた。


くすんだ白壁には、不気味と紫の淡い光が反射している。

構造物は曲線で出来ており、二十一世紀後半の世界に住む私ですら、どこか近未来的な印象を受けた。

肋骨ろっこつの様なアーチ状の柱に包まれたその先端、天井の中心部に、イリーナは居た。

衣服は纏っておらず、逆さ釣りのまま腰の辺りまで天井に埋まっている。

不思議と青き髪は重力に逆らい、天井へと垂れ()()()いた。

両の手は祈る様に、堅く結ばれている。

意識があれば、銀色に輝くその瞳をこちらへと向けていたに違いない。

だがその瞳は今、まぶたによって閉ざされている。


「必ず、助ける」



私はこう思っている。

――闘いの数だけ、人は強くなれると。


そして闘うという事は、実際の戦闘ではなく、生きる姿勢、生きざまなのだ。


私は強い。


恐怖に打ち勝つ。

重圧に打ち勝つ。

己自身に打ち勝つ。


そういう姿勢で臨むのだ。

気持ちで負けていては勝てない。



ソフィアは友であるイリーナを救う事が出来ず、嘆いていた。

エミアスは我が子の様に愛していたイリーナを攫われ、嘆いていた。

キュリアはかつての過ちを繰り返すまいと誓いを立てたイリーナを護れず、嘆いていた。



皆の思い。

ソフィアの友愛、エミアスの慈愛、キュリアの忠節。

その全てを……。

その全ての思いを……。



私は皆に聞こえる様、ハッキリと口にした。

「私は……負けない。必ず勝ってイリーナを救う」


真っ赤な出で立ちの私は、共に赤く光る黄昏たそがれの剣を抜き放ち、言葉を言い放った。


「良いのでしょう? 私独りで、四人相手に勝ってしまっても」




「カーッ、カッカッカッカっ」


目の前の空間が歪み、勇者ティーナたちが現われる。


次元の裂け目とでも言うべきか、そのヒビの入った空間より、何色にも染まらない純白の盾が現われた。盾の持ち主は勇者だ。

純白の鎧は金色に縁取られ、装備する者を勇者たらしめる風格を持つ。

ティーナは盾を構えると、ルーンの掘られた剣を抜刀し、名乗りを上げた。

「勇者ヴァレンティーナにござんす」



背程の高さの裂け目より落ち、長い厚手のスカートが靡き、裏地の刺繍が露わとなる。スカートを整え会釈したのは、メイドの機械マトンだった。

「ワタシハ、カレン。エックス-101( ワンオーワン)AIエーアイ



裂け目より現われるとおぞましい気配が漂う。

白く長い髪に褐色の肌。金と黒のローブを纏いし女性。

災厄の魔女だ。

「……。イシズ……。……。」



最後は裂け目ではなく、地面の魔術陣から、和風の舞傘まいがさが現われる。

それを持つのは、艶やかな紫に染め上げられた紋付き袴姿の巫女だった。

「わちきは、魅憑鬼ミツキでありんす。舞わせて――おくんなまし」



皆が名乗り終えると、ティーナは告げた。

「さぁ、幕は上がりゃぁしたぜっ。始めましょうや」



Bパートへ つづく

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