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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 2節   <18話>
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<18話>  「英雄vs勇者・前編」   =Dパート=



姉様ねえさま、私、強くなった」


「リル殿、ここはお任せを」


「姉様、見て」


「リル殿、どうでしょうか? 今の太刀筋」


ソフィアとキュリアの二人は、競う様に魔物モンスターを倒していく。

私は倒す事を諦め、剣を鞘に収めた。

エミアスは杖を高く掲げ、光りで廊下や部屋を照らしてくれている。

お陰で蛍光灯の付いた部屋の様に、内部が明るい。


私たちは宮殿内部を進んでいるのだ。

ここには魔人族がおらず、代わりに魔物モンスターが多数点在している。

廊下や階段は人間にとってはかなり広いものであるが、魔将の体格であれば通るだけでやっとの大きさなのだ。

それもあってか、魔人族と遭遇せず、本殿付近まで容易に来る事ができた。


そして、灯りが必要ではなくなる。

天井の一部が発光しており、その光りが白い壁へと反射し、建物内の全体が明るいのだ。

まるで二十一世紀の様であり、まるでゲーム内の様でもある。


エミアスは定期的に防御系魔術を張り替える。

ヴェレネッタは討ち漏らしがないか注視しながら、影に徹している。

スパスは戦闘には参加せず、変な踊りをして余裕をかましている。

童話に出てくる様な、実にエルフらしい行動だ。


(ただのあおりりプレイっぽいけれど……)



廊下を抜け、いよいよ本殿という所で、中を覗き込む。

すると小部屋の天井近くに、光り輝く鳥が留まっているのを発見した。

その鳥は霊魂の様な、青白い光に包まれている。


「あれは、魔術詠唱に感知するタイプの使い魔ですね」

エミアスは、皆に魔術の行使をしない様、注意喚起する。


「まだ、こちらには気が付いていない様ですが、使い魔と言う事は使役している魔人が居るのでしょうか?」

キュリアの発した小さな声が思いのほか可愛らしく、不意を突かれた私は、萌え悶えた。

もはや回答どころではない。必死に耐えたのだ。

ソフィアはそんな私を不思議そうに見ている。


(イリーナに知られたら、大笑いされて嫌みを言われそうだわ……)


そんな私をよそに、エミアスはかがみ小さな円陣を組むと、淡々と話を進める。

「確かにその可能性もありますね。倒してしまうと、使役している魔人に知れてしまう事もあるでしょう」


姉貴あねき、とりあえず回りには魔人はいなそうだぜ。倒しちまおうぜ?」


「エミアス殿、私もその意見に賛成です」


「お、いいね。さすがは八英雄きゅらら♥たん」


「キュリアですッ」


キュリアではなく、エミアスが不安そうな表情を浮かべている。

敢えて表情に出したのであろう。

「して、もし気付かれてしまったら、どういたします?」


キュリアとスパスは共に即答する。

「殲滅させます」「ゼンメツだぁね」


(あっ。安定の脳筋くぉりてぃー♪)


ソフィアは私を見て、何故か親指を立てている。



円陣に混ざっていない私は、上から皆を覗き込むと、提案を出した。


「リル様、その作戦でいきましょう」


「さすがはリル殿」


「さすがはあねさん」


(スパス、あなたが言うと何か馬鹿にされている様な気が……)


「あ、いや? 馬鹿にしてないッすよ?」


「え? (心が読まれた!? また??)」




壁を使い目視できない位置から、ソフィアは属性強化魔術を詠唱した。

すると光る鳥は「殴り返してやる!」、そんな勢いで、こちらへと向かってくる。


上手く廊下へと誘導した所へ、スパスがクロスボウを撃った。

クロスボウのボルトは命中し、光る鳥は奇声を上げる。

そしてボルトの刺さったまま、光る鳥が今度はスパス目掛けて突撃してくる。


直線的なその軌道を読んでいたキュリアは、赤い刀身の剣を抜いた。

剣が光る鳥を襲うと、瘴気が鳥を覆い、光りを闇が閉ざす。


光りを失った鳥は、硬い石の廊下へどさりと落ちた。

最後はソフィアが、闇属性をまとわせた両手剣を突き指す。


卵が潰れる様な、嫌な音とエフェクトを残し、鳥が消えた。


「見事な連携だわ」

士気を高める為にも、わざと声に出した。

これならば安心して、勇者パーティーと戦闘できるであろう。


「リサイクル。リサイクル」

スパスは、地面に落ちたクロスボウのボルトを拾う。


「マメね。意外な一面だわ」


スパスに感心していると、キュリアが納刀し、先頭にいる私へ近寄ってきた。


「さて、使役していた魔人は来ますかね?」


「どうかしらね。うじゃうじゃ来たりしてねっ」


「脅かさないで下さいよ」


私たちは廊下で、魔人が来るのを待ち構えた。



漫画やアニメなどでよく、狭い通路であれば一対一だから個の力が物をいうというシーンがある。

ゲームの世界では、どうかというと、余程の実力差が無いと不可能だ。

特にFPS等では、圧倒的な物量によるゴリ押しには、なかなか対抗できない。


では、魔法や魔術の存在するこの世界は、どうであろうか?


その疑問が沸いた時、私は以前にハマっていたあるゲームを思い起こした。

それはフォートレスという、籠城戦がメインのVR型FPSだった。

籠城戦がメインである為、護る側には様々な防御手段が用意されており、例えばだがSFの様なバリアシールドを展開したり出来るのだ。

丁度この世界での戦闘に近い。


通路での戦闘はこの世界においても、防御手段さえあれば数の暴力で押されようと、個の力で打ち勝ち挽回できるであろう。


それは元の現実世界でも同じだった。

防御に向くレーザー兵器の発展により、遠距離からの旧式ミサイル攻撃が過去の物と化してしまった2050年の世界においてもなのだ。



Eパートへ つづく

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