<18話> 「英雄vs勇者・前編」 =Bパート=
エミアスはメリダからローブを返して貰い、ようやく多かった肌色が減った。
スパスとオジムは明らかに残念がっていた。
(露骨に顔に出過ぎ。てか本当、おっぱい好きよね……赤ちゃんたち。よちよち)
やっと議論がまともにできる様になる。
そしてその議論の結果、私たちは先程の広場からではなく、第二神殿側の宮殿部分から入る事となった。
その後は、建物内を進み本殿を目指すのだ。
私たちはエミアスに認識阻害魔術を掛けて貰い、避難壕を後にした。
道沿いに、なだらかな山の斜面を下る。
ゆっくりと下っていた。すると、何かが私のお尻に当たったのだ。
当たったお尻の感触は、やがて大きくなる。
なお収まらないそれは、ついにはお尻と腿の間へ迫る。
「きゃっッ」
思わず声を漏らすも、魔術によって私の悲鳴は掻き消された。
私は咄嗟に、その元兇を掴む。
(手!?)
だがその手が思いの外、小さかった事に私は安堵した。
(なんだ、ソフィアの手か……。痴漢かと思ったわ。切断するとこだったわ)
私は学校で引率している先生の様に、ソフィアの手を握り、一緒に歩き始めた。
姿こそ見えないものの、ソフィアの足取りはとても軽い。
繋いだ手の重さが、それを物語っていた。
この小さな手が戦闘になると、背負っている不釣り合いな大きさの両手剣を振るう訳だ。
小さいお手々だが、頼もしいのだ。
ソフィアの頬が当たる感覚、それが私の二の腕へと伝わってくる。
手はやがて解け、腕になる。
それに伴い私の腕は、ソフィアの胸元へと納められる。
(あぁ、なんか……肘の辺り、ごりごりする……)
もはや引率の先生ではなく、一緒にお出掛けした仲の良い親子だ。
そのままで暫く進んでいると、白い無数の石柱が目に映る。
建物は山と一体化しており、入り口だけが視認できる。
「あれが第二神殿」
だが、その入り口には何か違和感を憶えた。
辺りに敵が居ない事が確認できたのか、レンジャーのグリンが姿を現し、スパスも姿を現す。
それに続き私を含め、皆が一斉に姿を現し、徐々に入り口へと近寄る。
スパスも違和感を感じていた様だ。
「姉貴、こりゃ大層な結界じゃないか」
姉貴とはつまり、エミアスの事だ。
「ええ、そうですね。魔術ではなく……おそらく神通力。この様な御業が可能なお方……やはり神龍様が……」
「これは確かに八英雄、神龍ナシャ殿の呪符と妖力による物でしょう。規模は違いますが、見た事があります」
同じ八英雄であるキュリアが答えると、グリンは結界の目前へと迫る。
「しかし、これでは我々も中には入れませんね。エミアス猊下ならあるいは?」
「いえ、この結界は魔術による物では無い為、私では不可侵な代物です。イリーナ様でないと無理……ですね」
エミアスは想定外の事態にどう対処すべきか悩んでいるのか、眉間にしわが寄っていた。
おそらく、私の転移魔法も弾かれて侵入できないだろう。
(私がGMのスキルで跳躍して、内部に入って見て来ようか?)
「せめて、内部と連絡が取れれば……。ですがおそらく、通信系の魔術も遮断してしまう……」
キュリアは顎に指を当て、何か手は無いかと考えている様だ。
すると、それまで私の腕に引っ付いて、笑顔のまま無言だったソフィアが開口する。
「私の……能力なら、結界を超えて伝えられる。ただし、向こうからは無理。あくまでこちらから発信して伝えるだけ」
(あぁ。そんな能力、そう言えば……あったわね)
ソフィアは私の腕から漸く離れる。
そして今度はキュリアの手を両手で握り、胸元に当てた。
どうやらソフィアを媒体に、キュリアが配信する様だ。
皆の視線が一斉に集まり、固唾を呑む。
すると、入り口にあった結界に、僅かな綻びが出来たのだ。
どうやら上手くいったみたいだ。
私たちは、人が一人ようやく入れる位の小さな綻びから、結界内へと入っていった。
Cパートへ つづく




