<17話> 「聖母教総本山」 =Jパート=
「てっきり、この先で待ち構えていると思いましたのに。一度、宮殿エリアまで戻るしかありませんね」
そう言うと、エミアスは上の方を向き、目を瞑って何やら考え込み始めた。
私は瑕疵制御状態での「情報処理機構・検索機能」をするか、迷っていた。
これを使用すれば、総本山に居る全て者の位置が分かる。
港街スミュールでキュリアを探す時に検証済みだ。
しかし私は使わなかった。いや、使えなかった。
神格クラスであるティーナたちには、使用したらおそらく潜入した事がバレてしまうのではないかと考察したからだ。
再考してみるも、結論は変わらなかった。
(止めておこう)
更に、メリダとミリアを先に帰すべきかをも考えた。
彼女たちは防具が壊れ、精神的にも疲労している。
今後、魔将との戦闘に耐えられるのか、疑問が残る。
数で押されてしまった場合、救援する前に殺されてしまう。
彼女たちも分かっているだろう。
自発的に言うであろう。
(止めておこう)
そうこうしている内に、エミアスが考えをまとめた様だ。
「第一神殿、そこに隣接して繋がっている宮殿本殿、あそこへ行くしかありませんね」
エミアスはどこか悲しげな表情を浮かべていた。
本殿は、比較的新しい宮殿エリアにある。
本殿前の広場には、魔将十数体がいた。
またあそこを通らねばならないのだ。
しかも、あそこから内部への侵入ともなると、更に危険性が増す。
私は、顔を見渡した。
みんな覚悟を決めた顔をしている。
「行きましょう」
物静かにキュリアが口にした。
「ええ、行きましょう。その為に我々はここに来たのですから」
そう告げると、エミアスは認識阻害の魔術を掛ける。
そして来た道を戻る事となった。
途中遺跡内で休憩を挟み、水分と僅かな糖分を摂った。
その後、遺跡を抜け、宮殿エリアへと向かう。
私たちは本殿前の広場に再び現われた。
ただし、広場の側面だ。
日は少し傾き掛けている。
思った以上に古代遺跡内に居た様だ。
本殿の入り口前で銅像の様に、ピクリとも動かず立っている魔将が二体。
それらの影が、建物の扉へと落ちている。
(これでは内部に入れないわね……)
扉を気付かれずに開ける事は、できそうにない。
転移で内部に侵入しても、直ぐにバレるであろう。
(どうする? エミアス……。やる? 魔将十二体と魔人数十体を相手に)
その私の心の声に応えたのは、エミアスではなく、キュリアだった。
「やりましょう。私は元々、殲滅させる気でしたから」
そう告げる声と共に、キュリアの姿が目の前に現れる。
私も認識阻害魔術を切り、姿を晒した。
「そうね。素敵な提案だわ。百数え終える前に、終わらせましょう」
私は黄昏の剣、彼女に手を掛け、声を上げさせない様に注意し、ゆっくりと抜刀した。
彼女も私の気持ちを代弁してか、刀身を不気味に黄昏色へと光らせる。
振り返ると、まだ私とキュリア以外は覚悟が出来ていないのか、誰も姿を現さなかった。
建物の角から頭を出し、敵の様子を目視し、直ぐに引っ込めた。
「二人でいけるっしょ」
そう呟いた時だった。私は背後に誰かの気配を感じた。
「姐さん、姐さん。隠れて、隠れて」
(オジムさん? ……ではない?)
聞き覚えがあり、懐かしい感じのする声だった。
私は直ぐに振り向く。
「さすが、我らが姐さん。正面突破ですかいッ!?」
「え? スパス……さん?」
スパスは人差し指を立てて横に振り、ドヤ顔で告げた。
「⬅To Be Continued」
18話へ つづく
17話をお読みいただき、ありがとうございます。
長い長い17話、会話率10%台前半の
2万5千字にお付き合い戴き、ありがとうございます。
2万字を超えそうだったので、前編として分けたハズが
何故か前編だけで2万字を大きく超えてしまいました。
(13話と同じパターンか!)
そして、連載中にも記載いたしましたが、日刊ランキング29位入りを果たしました。
月間は240→160位とランクアップもしています。(2019年8月28日現在)
この感謝の気持ちは、大いに作品へと注ぎ込みます!
さて18話は、後編となります。
これを……この戦闘シーンを書く為に、半年掛けてお膳立てをしてまいりました。
いよいよ第I部クライマックスです。乞う御期待!




