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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 1節   <17話>
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<17話>  「聖母教総本山」   =Iパート=


エミアスは着ていたローブをメリダに着せていた。

少し大きい様だが、上手く生地の端を結んで調節していた。


(エミアス、その格好で行くんかい……)


エミアスは穴の空いた服を着ているメリダよりも、肌の露出している面積が大きかったのだ。

オジムはなるべく見ないようにと、変な所に視線が行っていた。


大部屋の奥には扉がある。

その扉は木製で、まだ新しかった。

観音開きになっており、一枚でも十分に大きかった。

オジムとグリンは二人掛かりで、その扉を片方だけ開ける。

すると、下の階へと降りる階段が現われた。


私はキュリアの方を見てうなずいた。

キュリアも頷く。


「私とキュリアで先行するから、皆は後からゆっくり来てね」


開けた扉に片腕を掛けながら、オジムは言った。

「わかったぜっ。ウチらは司祭の嬢ちゃん二人の準備が整うまで、護衛しておくわ」


メリダが強がって「一人で平気です」とか「直ぐに行けます」とか言うかと思ったが、それはなく大人しかった。

余程、先の戦闘が堪えたのであろう。

ミリアに至っては、未だにほうけているのだ。



私とキュリアは若い司祭二人の勇姿に感化されたのかもしれない。

足早に、そして軽快に、階段を降りて行った。

階段の先には、小部屋が見える。

どうやら扉は無い様だ。

だが扉の代わりに、槍を持った魔将が居たのだ。


槍の魔将は、音を立て階段を降りる私たちに気が付き、槍を構えた。


槍で階段の下から突かれると、非常に厳しい。

――通常であればそうだ。



私とキュリアは目で互いに合図を送り合う。

そして同時に頷く。


二人で一気に階段を駆け下りた。


槍の間合いへ入る直前に、私は転移魔法にて槍の魔将の背後へと転移した。


キュリアは二刀を抜刀し交差させ、交点に槍を合わせて滑らせると、殺傷圏の更に内側への侵入を果たした。


私は背後から首を横に薙ぐ。

キュリアは正面から二刀を斜めに斬り上げ、魔将に斜め十字の跡を残す。


瞬殺だった。

オーバーキルとなり、エフェクトを残し槍の魔将は一瞬で消えた。


(あれ……瞬殺? この魔将、さっきの三体より一回り大きくない? 個体差かな。見かけ倒し?)


「お見事です。リル殿」


「貴方もね。キュリアさん」


お互いにねぎらい合う。


小部屋は松明があるわけでもないのに、黄金に輝いていた。

キュリアが納刀すると、部屋の輝きは一段収まった。

英雄に憧れる子どもの様に、その納刀する仕草に見とれていると、キュリアと目が合った。


「あの……。何か……」


「うんん……。何でも無い」


キュリアも鼻先を指で掻き、少し照れる様な仕草をした。


地面に目をやると、巨大な槍が落ちていた。

(あ、ドロップアイテム?)


「とりあえず、貰っていくわね」

私は魔将の槍をアイテム収納にしまう。


その後、小部屋を調べているとエミアスたちとおぼしき足音が聞こえてくる。

どうやら、やって来た様だ。


「槍の魔将……ですか?」


「かー。すげえや。リルのあねさん、どうですかい、俺らのギルドに所属する気はねぇですか?」


「そういうのは無事に戻ってからに……」

言葉を途中で止め、グリンは後ろを振り向いた。


メリダとミリアが、小部屋まで追いついた。

まだ、くたくたの様だ。笑顔ではあったが終始無言だった。


皆が来るまでの間に調べていたが、この小部屋、壁には魔導文字であるルーンが、装飾と共に刻まれているのだ。


「ねえ、エミアス。この部屋も地下神殿の一部なのでしょう? 装飾が凄いわね。地上の神殿は、これを模した物なのかしら?」


「はい、リル様。ここが地下神殿への入り口となります。これを模したかまでは分かりかねますが、当然影響は受けていますでしょうね」


「この先に、ティーナたちが居るかも知れないのね?」


「左様です。ですが地下神殿はとても大きく、入り組んでいます」


(何そのラストダンジョン的なヤツ……)


私たちは覚悟を決め、小部屋に唯一ある扉に詰め寄った。

今度の扉は先程よりは一回り小さい。なので、魔将は通れないかも知れない。

扉はアルミやチタンの様な、そんな金属で出来ていた。

この世界で初めて見る材質だった。

極めて興味をそそられたが、解析は後日にするとしよう。


「開けますぜ」


そう告げると、オジムはゆっくりと扉を開いた。


グリンと私、そしてキュリアが中を覗き込んだ。

だが、暗くてよく見えない。


そこでキュリアは黄金に光る剣を抜刀し、中に差し入れ照らす。


内部は砂埃すなぼこりが酷い。

なんと魔人どころか、人が入った形跡すらなかった。

何十年も放置されていた様な、そんな状態なのだ。



私たちは扉をそっと閉じた。



Jパートへ つづく

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