<17話> 「とあるエルフの光剣魔術」
長い戦闘シーンが終わったので、お遊び回です。
キュリアは上位回復魔術をメリダとミリアに掛け、ねぎらった。
防具は破損しており、身体だけが癒えて、おかしな風体だった。
私は鎧の一部とインナーという格好のミリアに、何か羽織らせてあげようと思った。
アイテム収納を調べようとする。
その時だった。
目の前で純白のローブが靡いた。
(あ"あ"!! エミアスが戦闘中なのを忘れていた……わ)
エミアスは白魔術師魔将の前に立ち塞がっている。
この世界には、蘇生回復魔術や、死者甦生復活魔術が存在している。
復活をさせてしまうと、もう一度戦闘のやり直しとなってしまうのだ。
それを阻止すべく、エミアスは立ちはだかっているのだった。
エミアスは、それまで持っていた魔術用の杖から手を離した。
杖は不思議と倒れる事なく、宙にそのまま浮いている。
更に纏っていたローブに手を掛け投げる。ローブは浮いている杖に引っ掛かった。
すると、胸元が開いた服にピッタリと張り付いたスカート姿のエミアスが現われた。
「ちょッ! お母さん!?」
スカートは短く、激しく動いたら、下着が見えてしまいそうだ。
長い足が露出しており、何とも艶めかしい。
ついつい足に目が行ってしまったが、よく見ると右手には紺色の短剣を持っていた。
「将星滅せし己が業」
短剣は群青の光を放ち、光は刃状となる。
刀身は二倍以上、エミアスの足元まで伸びる。
(何アレ、欲しい! 超欲しい! エミアスあんな物を隠していたなんて!)
検閲
| ≪光剣≫
|精霊結晶を媒介にヒッグス場より魔力で質量を持った剣を事象化
|刀身に見える光りは魔力を質量に変換する際に生じた副産物
(……。)
(見なかった事にしよう……。うん)
エミアスは前衛顔負けの剣捌きを見せた。
白魔術師魔将は杖ごと斬られ、一方的な闘いは、直ぐに幕を閉じた。
私は直ぐにエミアスに駆け寄った。
一瞬エミアスの胸元に目が行ってしまう。
普段はローブを幾重にも纏っていて、露出したエミアスの肌を殆ど私は見た事が無かった。
(ちょっと胸元を主張し過ぎじゃない? ……って、そっちじゃなかった)
「エミアスお疲れ様。ところでその光剣だけれども……」
エミアスは視線を光剣へと向けた。
光剣は光を失い、ただの短剣へと戻る。
「そう言えば、まだリル様はご覧になっていませんでしたね」
キュリアがわざと私に聞こえる様に呟く。
「またリル殿の……、リル様の悪い病気が……」
「かぁ・しぃ・てッ ❤️」
「そう仰ると、思っていました」
エミアスは親切心から、私に光剣を貸してくれる様だ。
「わ~い」
「魔力の調節、気を付けて下さいね」
エミアスは視線を一瞬だけ私から外して、そう言った。
「はーい」
媒体となる短剣を受け取り、握ってみた。
短剣はエミアスの時と違い鮮血の様な赤い光を放ち、刃状となった。
「格好いい……」
キュリアは私の方を見て、何故か胸を撫で下ろしていた。
私は赤い光剣を真剣ではなく、竹刀の様に軽く振るう。
そして次に四連撃を体運びを絡めて行った。
残る光りの軌道が四角く映る。
「ほらほら。巧いもんでしょ? ホライゾンなんちゃら」
今度は光剣を両手で持ち、上に高く突き上げてみた。
映画のワンシーンの様に。
両手で握られた光剣。
突然、赤い光りが伸びる。
「え"?」
光りは一瞬にして、天井を超え、遺跡を貫通した。
私は慌てて片手を離す。
かなりの地下階層であった筈だ。
しかし上を見上げると小さな穴が空き、その穴からは青空が見受けられる。
そして、光剣は只の短剣と化した。
「……。」
「……。……。」
「返すわねっ!」
エミアスは、私の放った短剣を巧く空中で受け取る。
「ティーナたちには私の剣術では太刀打ちできませんからね」
そう前置きした上で続ける。
「残念ながら、内部にある精霊結晶が過熱異常で機能を失った様ですね。暫くは使えないでしょう」
キュリアは後ろを向いていた。
顔こそ見えないものの、くすくすと笑い声が聞こえてきた。
「イリーナに今度、魔力制御を習おう」
――そう私は心に誓うのだった。
Iパートへ つづく




