<2話> 「異世界と仮想の狭間で」 =Eパート=
夜空を見上げていると、一筋の閃光が走った。
「え」
(ちょっとー……)
「嫌な予感しかしないんですが……」
嫌な予感がしたので、閃光のだいたいの位置を相対座標で確認した。
(この方向って)
その間も、嫌な感覚が続いた。
「最悪。私が落下してきた辺りだわ」
すると次の瞬間――。
目と鼻の先に、雷が落ちた。
その落ちた辺りを凝視すると、信じられない光景があった。
何千ものモンスター。
そして、夜空の星々の明るさでさえ、明るいと思えてしまう程、禍々しい漆黒の渦。
渦の中心には、10m超級の暗黒竜。
その周りを5m前後のワイバーン数十匹が取り巻く。
嫌な事に、そのワイバーンの半数近くが、漆黒の鎧を着た暗黒騎士を乗せている。
さすがの私も、これ程の数のモンスターの群れを見たことがない。
明らかに、私の対処できる数を越えている。
それも桁違いに。
酔いは、すっかり覚めてしまった。
恐らく、暗黒竜は数匹いたとしても、私だけで対処できるであろう。
しかし、あの数は無理だ。
GMは元来、闘いに特化した能力は持ち合わせていない。
範囲攻撃技やスキル等は、一切無い。
魔法に至っては、転移魔法のみだ。
例え、転移魔法を使い敵を退けられたとしても、先ほどの様に、雷と共に直ぐ戻って来るであろう。
(落ち着け、私。ここはゲームと同じ。ゲームでは、こういう修羅場は何度も経験してきた)
胸に手を当て、目をつぶり、深呼吸をした。
被っていたフードを脱ぎ、そして目を開く。
「よし」
まず、奴らの目的は何だ?
私か? 私を追って来た?
いや、違うな。
私を殺す、あるいは蹂躙したいのであれば、
少数精鋭で秘密裏に近寄るはずだ。
では、目的は何だ?
この数は、もはや統率された軍の規模であろう。
もう一度、暗黒竜を凝視した。
すると、竜の上に人影が見えた。
それは先の暗黒騎士とは、明らかに違っていた。
私はGM権限を行使した。
これで対象物のステータスや装備、所持アイテム等が解る。
元々は、チートプレイヤー対策に使う権限だ。
時間を掛ければ、過去ログを解析し、過去に何をしてきたかも解る。
「どれどれ、邪竜の巫女といったところか?」
ステータスを確認した。
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<<Ирина・Walhalla)>>
称号:†邪神に憑依されし巫女†
種族:人間
年齢:115歳
職業:聖女
状態:拘束/混沌/憑依/祟り/魅了
装備:
|≪神々の封鎖≫
|神をも封じし緋色金の鎖
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「てか、ロシア語って……。色々と中二病設定過ぎて、ツッコミどころが多すぎなんですが……」
(えっと、ヴァルハラって事は、もしかして私と同じ飛ばされてきた人? それとも運営の誰か? 偶然の一致?)
「うーん。聖女様も気になるけれど、ルイダちゃんが気がかりだ。まずは急いで宿へ戻るとしよう」
Eパートへ つづく
本日は夜に、もう1パート投稿いたします。




