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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 1節   <17話>
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<17話>  「聖母教総本山」   =Hパート=


特殊能力アビリティー使用による猛攻を喰らい続けるメリダとミリア。


メリダを蝕む短剣には毒が塗られており、徐々に体力を奪っていく。

全身を覆っていた筈のプレートアーマーにはいくつもの穴が空き、身体をも貫いたであろう事がうかがえる。

司祭である為、重体でなければ自己回復を行える。

解毒魔術により毒も自身で排除できるのだ。


後は、盗賊魔将に掛っている魔術「攻撃間隔短縮インタ・ヘイスト」が切れるのが先か、メリダの体力と魔力が尽きるのが先か、それが問題だ。


メリダは回避や受け流しに専念する為、致命傷になり得る急所を除き、自ら鎧を徐々にだが剥いでいく。

鎧の中に着ている服は、穴が空き、血に染まっている。

穴から露出している肌は、回復魔術により綺麗に治っていた。


だが、防戦一方である事に変わりはなかった。




ミリアは戦士魔将の重い攻撃を喰らう度に、吹き飛ばされていた。

身に付けていたプレートアーマーは、幾度もの地面との接触により輝きを失い、傷付き窪みが至る所に出来ていた。

兜に付いたヒビは徐々に広がり、度重なる衝撃で、遂には割れてしまった。

割れた兜を脱ぎ捨てると、ミリアの薄茶色く長い髪が現われ垂れる。

おっとりして見えたミリアからは、今や歴戦の戦士顔負けの風格が漂っている。

この戦闘での経験が、彼女を変えていったのかも知れない。


そしてその時はやって来た。

戦士魔将の特殊能力アビリティーが切れ、一撃の重さがなくなったのだ。


ミリアはグリンと視線を交わす。

それを合図に、反撃の狼煙のろしが上がる。


「ええぇぇーいッ!」


それはミリアの風格とは異なる、可愛らしい声だった。

両腕で持たれたメイスから、渾身の一撃が放たれる。


戦士魔将は盾で防ぐが、一撃の重さに負け、身体が揺らぐ。

グリンはその隙を見逃さなかった。

後方斜めより、戦士魔将が装備している鎧を短剣が貫く。


「ぎぇえヨヨッ」

悲鳴を上げた戦士魔将は、たまらず片手斧でグリンを振り払おうとする。

片手斧は直ぐに飛び退いたグリンには当たらない。


そして片手斧を振った事により出来た隙を今度はミリアが突く。

大きく振りかぶられたメイスが戦士魔将の頭部に炸裂した。

魔将の頭部は金属の様に硬く、激しい衝突音を発する。

その音が二回、三回と続く。


だが戦士魔将は、衝撃の中で片手斧をミリアの首へと振る。

斧は首へは届かなかったものの、ミリアの肩をプレートアーマーごと破壊した。


それでもミリアは追撃を放つ。


四度目の音がした時だった。

巨体が崩れ落ちた。戦士魔将が力尽き、前のめりに倒れ込んだのだ。


五度目の音は、鈍い――床と巨体との衝突音だ。


そして六度目の音は、もはやあるまい。

ミリアとグリンの勝利だ。


「お見事ですよ。やりとげましたね」

優しく格好いい兄の様な声がした。グリンがミリアに声を掛けたのだ。


ミリアは肩の傷を自ら回復魔術で治しながら、無言でほうけていた。




メリダの身に付けていた服は血が乾き、赤黒く染まっていた。

オジムですらも防御で手一杯の様だ。


盗賊魔将に掛っている魔術「攻撃間隔短縮インタ・ヘイスト」により、反撃の隙がないのだ。


だが、その時がやって来る。

魔術による強化である為、一定時間の時間で効果が切れる。

まして、この部屋への突入前に掛けた魔術であれば、切れるのも早い。


盗賊魔将の攻撃に突如、隙が出来たのだ。

何時切れるのかは、最初に発動させたキュリア以外には、おおよそでしか推定出来ないのだ。


その隙をオジムは見逃さなかった。

短剣を持つ腕を薙ぎにいったのだ。


オジムの持つ両手斧が盗賊魔将の腕を襲う。

腕の太さは成人男性の四倍もあったが、オジムの斧は骨まで達していた。


握られていた短剣は地面に落ち、乾いた音を立てる。

その音とほぼ同時に、湿った音がした。

メリダが盗賊魔将の脇腹をフレイルで粉砕したのだ。

そして更にフレイルは弧を描く様に回転し、後頭部、人で言うならば延髄えんずいの辺りに炸裂した。


盗賊魔将は脳震盪のうしんとうでも起こしたのか、頭から地面へ倒れ込む。


意識を失い倒れている魔将の巨体、その上にメリダは立った。

するとメリダはフレイルの鎖部分を持ちながら、持ち手側の鈍い部分を突き立てる。

槍の様に華麗に半回転させると、鋭くなっている部分を突き刺し、何度か斬り付けた後、更に突き刺した。


「まったく。ひどい目に遭いましたわ。それと、オジムさん。最後のは、私だけでも間に合っていましたわ」


ボロボロになりながら、メリダは強がっていた。


「ああ、嬢ちゃん。アンタは強えぇよ」

オジムもそれを分かってか、口元が緩む。



Iパートへ つづく

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