<17話> 「聖母教総本山」 =Gパート=
魔将との戦闘を私とキュリアは観戦していた。
戦士魔将はミリアとグリン。盗賊魔将はメリダとオジムが相手をしていた。
先程は魔将に一方的にやられてしまったメリダではあったが、その性格からか、強気なままだ。
「不覚を取りましたが、次は一人で大丈夫です」
オジムの持つ両手斧をメリダはフレイルを宛てがい、下げさせた。
いつになく真剣な表情のオジムであったが、メリダの意を尊重し、一旦退いた。
再び盗賊魔将と対峙するメリダ。
フレイルを両手で斜めに構える。
盗賊魔将はまたしてもボルトを構え、そして放った。
一投目はメリダに躱されてしまう。
そこで二投目を構える。
ここまでは先程と同じ様な展開だ。
メリダはフレイルを振りかぶる。
だが今度は二投目に合わせてフレイルを地面に突き立てた。
巧みにフレイルを使い重心を移動させ、二投目を避けてみせる。
盗賊魔将は三投目を構えるず、短剣を逆手で構える。
そして一気に距離を詰めてきた。
メリダは振りかぶらず、フレイルを独楽の様に回転させた。
鎖でつながれ振れていた鉄棍棒もが、遠心力で勢い良く回転する。
これには盗賊魔将も反応できない。
肩口から首にかけて、見事に炸裂した。
「巧い!」
私は思わず、そう口から洩らした。
たまらず、魔将は屈む。
そこに軌道を変え回転して戻ってきたフレイルの鉄棍棒が、後頭部に炸裂する。
メリダは二発入れ復讐を果たし、名誉を挽回した。
ミリアもグリンの援護を受けながら巻き返していた。
こちらはメリダと違い連携を取り、徐々に追い詰めている。
ミリアがメイスで殴り、魔将に盾で防がれたところを側面からグリンが攻撃する。
あるいは、戦士魔将が片手斧で殴り、ミリアが盾で防いだところを背後からグリンが攻撃する。
見事な連携だった。
初めてとは思えない、息の合ったものだ。
(十年来の夫婦の様だわ……)
魔将二体は、徐々にダメージを蓄積していく。
白魔術師の魔将は何度か、仲間の回復を試みた。
だが、回復しようとすると、エミアスがそれを阻止するのだ。
杖で打撃を与えたりして、詠唱を中断させるのだ。
移動しながらや近接戦をしながら詠唱する為には、それ相応の技術か、対策用の術や装備が必要だ。
白魔術師魔将には、それが無かったのだ。
ちなみに、キュリアの様にその全てを行ってる者はまず居ないであろう。
徐々にだが確実に、前衛の魔将二体を追い詰めていった。
だがしかし、一瞬にして立場が逆転する。
敵が一斉に特殊能力を使ったのだ。
まず白魔術師魔将が能力を使用する。
なんと、敵全ての傷が癒え、体力も全て全快回復したのだ。
その行動を皮切りに、戦士と盗賊の魔将も使用する。
戦士魔将は途端に一撃が重くなった。
それまでミリアは盾にて防いだ時、普通に受け流せていた。
だが今は違う。
斧での攻撃は、盾ごと吹き飛ばしてしまった。
そして二撃目の返す斧で、ミリアの巨体が軽々と宙を舞う。
ミリアは懸命に受け身を取る。
プレートアーマーが地面との接触で、激しい音と火花を散らす。
盾は受け流した部分が拉げてしまっていた。
盗賊魔将はメリダに掛かっていた魔術「攻撃間隔短縮」をメリダから盗んで、自分のものにしてしまった。
この魔術は近接戦闘において、攻撃後の隙を僅かに減らすというものだ。
高度な戦闘において、この隙が僅かでも減るという事がどれ程に絶大か、推して知るべし。
もし遠投にも効果があったのならば、私かキュリアは傍観を止め、直ぐに助太刀していたであろう。
オジムは察し、直ぐにメリダと肩を並べ、二対一で臨んだ。
そして、盗賊魔将の順手で持たれた短剣が二人を襲う。
短剣は元々が構えてから次の攻撃に容易へと移れる武器だ。
だが魔術により更に攻撃後の隙が僅かだが減り、二人掛かりでも手数で圧倒されてしまった。
オジムは両手斧と、左腕の小さな丸い盾で何とか受け流すも、反撃の隙が見えないでいた。
メリダはフレイルで受け流そうとする。
だが巧くいかず、プレートアーマーが短剣の攻撃で甲高い悲鳴を上げている。
徐々にプレートアーマーの関節部分が、何カ所か破損されてしまう。
それまでと形勢が逆転した。
敵の特殊能力一斉使用により二対一だが、確実に押される。
更に都合の悪い事に「上位自動回復魔術」が、時間経過で切れてしまったのだ。
(まさか、魔将はここまで読んであのタイミングでアビリティーを使ったのかしら? だとしたら、集団での魔将は驚異だわ)
私は助太刀しようか迷い、キュリアを見た。
キュリアは私の視線を感じたのか、一瞬だけこちらを向いた後、首を横に振った。
「信じましょう。彼女たちを……」
Hパートへ つづく




