表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 1節   <17話>
147/200

<17話>  「聖母教総本山」   =Fパート=


後衛の魔将はどうやら白魔術師で、回復役ヒーラーの様だ。

メリダとミリアが距離を詰めると、白魔術師は前衛の魔将二体に強化魔術を掛ける。


上位物理防御力上昇フィジカル・プロテクション」と「上位魔術(ソーサリー・)防御力上昇(プロテクション)」だった。


(魔将ともなると、敵も強化魔術を使ってくるのね……。硬そうだわ)


私は魔将の実物を見るのは初めてだった。

だが、ゲーム内で酷似した魔人族を知っている為、既知の存在ではあった。

ゆえに強さの想像が付く。


ティーナと闘う前であれば警戒していた。

けれど彼女の強さを身をもって体感した私は、魔将が脅威に思えなくなっていたのだ。


前衛の魔将二体は、メリダたちが近づくと武器を構えた。

前衛はゲームに当て嵌めるのであれば、片手斧と小さな盾を持った戦士タイプと、短剣と投擲武器を持った盗賊タイプだ。

しくも、戦闘に参加しない私とキュリアを除くと、こちらのパーティー編成に酷似している。


(良い実戦訓練になりそうね)



魔将はかなりの巨体で、ミリアよりも更に一回り大きい。

メリダと比べると、大人と子ども程の体格差があった。


身体の大きなミリアは、背負っていた五角形の盾を左腕に填めると、メイスのつかを右手で持ち、左手を添えて構える。

対峙するのは戦士の魔将だ。


小柄なメリダは、遠投攻撃に気を付けながら、フレイルの殺傷圏の内側へと侵入されない様に距離を取り構える。

対峙するのは盗賊の魔将だ。


全身プレートアーマーに包まれたミリアは、音を立て、徐々に距離を詰めていった。

その距離は既に、互いの間合いを浸食していた。

近付き過ぎると、メイスを装備しているミリアの方が不利で、斧を装備している戦士魔将の方が刃物である分、有利だ。


そして距離が零となる。

互いに持つ盾と盾が衝突し、車が衝突した様な激しい音が立つ。

全体重を乗せ、戦士魔将に力押しで行くミリア。


戦士魔将は腰が浮くも、耐えきった。

そしてミリアの盾のふちを斧で狙う。

斧による衝撃で盾がずれると、そこを狙い更に追撃を放った。


ミリアは身体を盾と入れ替える様にして身体をさばき、かわす。

斧を盾でしっかりと受けて防ぐ事にも成功した。



一方のメリダは、盗賊魔将と睨み合いを続けていた。

フレイルは敵に当てる迄に、振りかぶる分の隙が出来る。

敵はクロスボウのボルトに似た長細い金属棒を握っていた。

隙が出来るのを待っているのであろう。

メリダはそのボルトを避ける、あるいはプレートアーマーで防いでしまえば、攻撃出来ると思ったに違いない。

フレイルは両手で低く構えられていた。



「もしかしたら、私と同じミスを?」

――そう思った時だった。


メリダは先に動き、振りかぶろうとする。

盗賊魔将はその隙を狙い、ボルトを遠投した。


「馬鹿野郎!」

怒号を上げたのはオジムだった。


ボルトはメリダのプレートアーマーの側面をかすめる。

巧く防げたと思ったのか、メリダが振りかぶり終え、攻撃に転じた。


フレイルの槍部分で攻撃していたのならば、あるいは間に合っていたのかもしれない。

低く構えていた分、振りかぶるのに時間が掛かってしまったのだ。


気付いた時には既に二投目のボルトが放たれていた。

目前で放たれたボルトの直撃をメリダは喰らってしまう。

メリダの前に岩で出来た壁が現われて身代わりとなったが、近距離である為、ボルトの威力は落ちなかった。


それでもメリダはフレイルの攻撃を止めなかった。

鎖に繋がれた鋼鉄製の棍棒が盗賊魔将を襲う。

だが、ボルトの直撃を喰らってしまったが故に速度が落ち、容易にかわされてしまった。


ボルトはプレートアーマーの腹部分を貫通していた。

出来た穴からは血が溢れ出ている。


盗賊魔将は更なる追撃にと、三投目を放つ。

放たれたボルトは、メリダには届かず、大きな戦斧の腹部分が弾いた。


「おいおい。嬢ちゃん。ありゃぁ、暗器あんき。暗殺武器だぜ? 暗器を堂々と見せてたんだ。少し位は勘ぐろうぜぇ」


メリダの流血は直ぐに収まっていた。

エミアスが戦闘開始前に掛けていた「上位自動回復魔術ハイ・リジェネーション」の効果で、直ぐに傷口は塞がったのであろう。



私の隣に居たキュリアが呟く。

「今のボルト一撃で最初に掛けた『岩壁城壁(ロック・フォートレス)』は消滅し、『土乃羽衣つちのはごろも』の効果も一時的に減弱してしまいましたね……」


前者はダメージを受ける時、一定量を岩で出来た壁が身代わりとなり防いでくれる術だ。

後者は土属性の恩恵が受けられ、土属性魔術効果上昇や土雷属性耐性上昇などが得られる術だ。


私が一番驚いたのはオジムの的確な判断と援助だった。

(ただの脳筋キャラだと思っていたのに……。さすがはギルドトップ。お髭は伊達じゃないわね)


ちなみに脳筋とは、脳まで筋肉で出来ているの意だ。≪注1≫



ミリアは戦士魔将に力押しで挑んでいたが、徐々に押し返される様になってきた。

体力の差が出てきたのであろう。

自分の力が魔将にどの程度通じるか、試すのには絶好の機会だったのであろう。

戦士魔将の放つ片手斧の攻撃をミリアは盾で受け流す。

そして短めに持ったメイスで反撃をする。

短く持ったが故に威力が落ち、盾で防がれてしまう。


「えぇーい!」

ミリアはそのまま盾ごと粉砕する勢いで、二度程殴り付けた。


戦士魔将は盾に体重を掛け、ミリアを盾で吹き飛ばす。

ミリアも体重を乗せた攻撃であった為、重心が崩れ、簡単に転んでしまう。

尻餅を付く形となってしまったミリアを今度は斧が襲う。


メイスの部分を片手斧のつか部分に当てて防ごうとするミリア。

しかし勢いは殆ど落ちなかった。

岩で出来た壁が現われて身代わりとなり、威力は多少落ちた。

それでもミリアは肩口をプレートアーマーごと押し斬られてしまった。

肩より伝い、ミリアの血が地面を染める。


ミリアの肩に刺さった斧は尚も身体を侵食する。

肩をやられ、メイスの部分を支え切れなくなっていた。


「ぐぅぅんん」

ミリアが苦痛と、踏ん張りの為か、声を挙げる。


「全く、魔将に正面から力勝負とは、呆れてしまいました」

グリンは戦士魔将の背中にいつの間にかいた。


「ギギぎぎぎッ」

今度は戦士魔将が苦痛で悲鳴を上げる。

グリンは大きな短剣を両手で、戦士魔将の背中に突き刺していたのだ。


戦士魔将はミリアの肩から片手斧を抜き、グリンを薙ぎ払おうとする。

グリンは軌道を読み、簡単そうにかわす。


「さすがは魔将。簡単には倒せませんね」


ミリアの肩口も「上位自動回復魔術ハイ・リジェネーション」の効果で傷口が塞がった様だ。

地面に出来た血溜りは、それ以上広まらなかった。



白魔術師の魔将は、直ぐさま中位回復魔術を詠唱する。

あっという間に、グリンの短剣が付けた戦士魔将の傷は癒えてしまった。



(回復魔術の存在する戦闘。ここまで私のいた世界の現実と乖離かいりするなんて……)



Gパートへ つづく

  

≪注釈1:出典元 FF11用語辞典 http://wiki.ffo.jp/html/135.html≫

脳筋とは、特にMMORPGにおいては「回復、支援役の負担やパーティ全体の事を考えないアタッカー」や「自身の最大火力に集中するあまり、被弾や他のメンバーに気が回らない人」の事を言う。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ