<17話> 「聖母教総本山」 =Eパート=
暫くしてキュリアたちが無事に戻って着た。先には魔将が居るのだそうだ。
なんでも、ここからは入り組んだ迷路の様な構造が続き、階段を下りたり上ったりもしたそうだ。
残念ながらこの先の地図は無い。
エミアスの記憶にある大部屋への行き方と、魔将が居た部屋への行き方は合致した。
エミアスが言うには大部屋より地下大神殿へと続くのだそうだ。
そこにイリーナを連れ去ったティーナたちが居るかもしれないのだ。
百年以上前になるがティーナと、そしてイリーナは、幼少期に地下神殿へと赴いていたのだそうだ。
私たちは、一旦小部屋で休憩を取る事とした。
緊張の連続で喉が渇く為、水分補給をする。そして武具の状態確認をし、作戦会議だ。
確認できた魔将は三体で、前衛二体の後衛一体の様だ。
「私たちにやらせて下さい」
メリダはそう意気込んでいた。
本来なら、メリダとミリアで魔将一体に当たる可きであった。
“可愛い子には旅をさせよ”とも言う。
確かにここで若い二人に実戦経験を積ませてあげるのは良い事であろう。
エミアスも悩んでいたが、メリダはオジムが、ミリアはグリンが補助するという方向で皆が妥協した。
私とキュリアは基本的に手を出さない。
エミアスの行動は敵後衛の出方次第となる。
「嬢ちゃん達、頑張るなぁ。魔将相手に実戦訓練たぁ」
オジムは戦斧の柄を肩に乗せて担ぎながら言った。
「まったく、困ったものです。まぁ、納得はしていますが」
グリンは大型の諸刃短剣を鞘に収めながら言った。
私は二人の装備をキュリアの時の様に一時的に預かろうかとも考えた。
ただその場合、不意打ちを受けると無防備なのだ。
結局エミアスは二人にだけに聴覚阻害魔法を掛ける。
キュリアたちの調査により魔術感知される心配がなくなった為だ。
そして今回は視覚阻害魔術は使わない。
魔将を一撃で倒す事はまず出来ないであろから、それならば姿を現し陣形を整え連携した方が良いという事らしい。
休憩を終えた私たちは、伏兵に気を付けながらゆっくりと進む。
進むと下りる階段があり、下りるとそれまでの殺風景な四角い岩の構造物から、石を掘り装飾された物へと変わった。
この地下層は何処か今までの古代遺跡とは違っていた。
気になったので私はエミアスに尋ねてみた。
どうやら、地下神殿は有史以前の超古代文明の残した物で、その上に約二千年前からの古代文明の遺跡が徐々に覆い被さる様に出来ているのだそうだ。
この地下層は、地下神殿の一部なのかも知れないそうだ。
階段を上り地下層を抜けると、グリンは立ち止まり後ろを振り返って頷いた。
どうやらこの先が、魔将の居る大広間の様だ。
まずキュリアは自身に魔術を掛けた。
「徐放魔力回復魔術」
そしてエミアスと分担し、突入前に強化魔術が皆、六重に掛る。
「上位物理防御力上昇」「上位魔術防御力上昇」
「岩壁城壁」「闇乃羽衣」
「土乃羽衣」「水乃羽衣」
メリダとミリアには更に別の魔術が掛る。
キュリアからは「攻撃間隔短縮」。
エミアスからは「上位自動回復魔術」。
準備が整った。
まるでMMORPGのボス戦直前の様だと、私は心の中で思った。
それと同時に、ゲーム内で慣れ親しんだ戦術が、この世界において垣間見る事ができ、私はどこか安堵するのだった。
メリダとミリアを先頭に、私たちは部屋へと入る。
そこは小学校の体育館並みの大部屋だった。事前の調査通り魔将は三体。内訳は前衛二体の後衛一体だ。
不思議な事に、私たちが部屋へと侵入したのにも関わらず、魔将たちはただ警戒するのみだった。
即座に襲ってくるでもなく、それどころか間合いの外である為か、武器を構えすらしないのだ。
「まるでゲームだわ……」
Fパートへ つづく




