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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第五章 1節   <17話>
142/200

<17話>  「聖母教総本山」   =Aパート=

タイトルを「英雄vs勇者・前編」から変更いたしました。


Walhallaヴァルハラ社が開発したフルダイブ型MMORPG「Ragna Saga(ラグナ・サーガ)」は、親会社である医療ベンチャーの支援を受けて誕生した。

ヒトの脳を電脳へと昇華する研究の為に立ち上げられたのだ。


最新の研究技術を使い、Virtualヴァーチャル Realityリアリティー=仮想現実世界を電脳世界へと科学革命パラダイム・シフトさせる。

その前段階が、ラグナ・サーガで使われているフルダイブのシステムであった。


西暦2050年――

私、坂神さかがみゆりはRagna Sagaのゲームマスター、つまりGMの仕事をしていた。

謎のGMコールに応じた私は、異世界とも仮想とも区別が付かない世界へと転移してしまったのだ。

その世界で最初に体験したのは、まるでゲームのオープニングの様に、魔王軍が世界を蹂躙し始める様であった。

「GMの能力は人を護る様には出来ていない」その事を私は直ぐに痛感する事となる。


そして私は、邪神とその憑り代たる聖女イリーナと出逢う。

その後、洞窟エルフの魔剣師ソフィアや、聖母教大司教エミアスと出逢い、聖母教の窮地を救う為、総本山を目指した。

現在は戦乙女である八英雄キュリアと合流し、総本山での決戦に備えている。







「やはり何処かの国の支援を受けて……」


「周辺で一番強かった連合国は、既にありません。魔王出現から一月ひとつきの間に壊滅したのです。ですから周辺で一番の武力を持っていたのは我々聖母教に他なりません」


「一番頼れるはずの王国は、魔王の領土となってしまった連合国を挟んだ向こう側ですから、援軍は厳しいでしょうね」


「そもそも軍隊に魔物や魔人との戦闘は向きません。対人装備しかありませんから」


「そして人では勝てない存在もあります。魔神戦争から八英雄の誕生に至るまでの歴史が、それを物語っている事でしょう」


「対人装備から対魔装備に切り替えが進んだからといって、直ぐに魔人や魔物に勝てる訳でもありません。何故ならば、それらと戦う術を教えられる者が、殆ど居ないのです。魔神戦争の終結から50年以上の歳月が経過しているのですから、無理もありません」


「物の問題は、数年で解消するでしょう。しかし人の問題は、十年以上解消するまでに時間を要しますね」


「さすれば()()問題は、敵がどの程度の規模で占拠しているかが分からない事でしょう」


「総本山より逃げ延びた者たちの情報を元にすると、最低でも十体は魔将がいるとの計算になります」


「そして、最大の障害は、魔神ましんクラスの強さを有している者が現在判明しているだけでも四名いるという事です」



    神をもしたがえし勇者。


    鋼よりも硬いメイドの機械マトン


    死霊を司る災厄さいやくの魔女。


    遠東ひんがしより渡来とらいせし巫女。



「魔将と対峙出来る者は、聖母教にもおりますが、魔神クラスとなると……」


「それに同じ魔神であっても、強さは区々(まちまち)ですからね」


「冒険者ギルドへは、既に派遣要請を掛けました。二日前に派遣した者が戻らない事を重くみた様で、専門家の中で特に戦闘にも長けた者たちを当ててくださいました」


「では、そろそろ出立の時間が迫ってまいりました」


「どうか、聖母様の御加護により無事帰還できますように……」





今回の作戦では七名という少数精鋭で、敵に占領されているであろう総本山に潜入する。

目的は聖女イリーナを救出する事。

その為には、魔神クラス四名の討伐あるいは拿捕が必要だ。

それが最低ラインとなる。

そして第二神殿周辺に立て籠もっているであろう人々の救出に向けた調査と陽動だ。


普通であれば、イリーナよりも第二神殿の者たちの救出を優先するところであろう。

だが、イリーナの救出は憑依している邪神の確保も目的に含まれる。

邪神を魔王に奪われてしまうと、今後この世界の歴史を左右する程の大事となってしまうのではと危惧される。

だからこそ、イリーナを取り戻す事が重要となるのだ。

転移魔術でイリーナを連れて行かれる前に、取り戻すのだ。

幸いにも総本山に留まってくれている。

留まる理由が何なのかは、推測ではなく、憶測となってしまう。

ともかく、イリーナを絶対に連れ戻すのだ。


その為の先遣部隊パーティーメンバーは、私、エミアス、キュリア。

その他に、聖母教より二名と冒険者ギルドより二名。


聖母教の二名は司祭であり、いずれも軍港トゥーリン・ガルにてイリーナとエミアスに命を救われ、アーケロンに乗船して付いて来た者たちだ。

ギルドより派遣されたのは、魔物や魔人との戦闘に長けた者と、偵察や探検探査に長けた者だそうだ。

以上の計七名で、潜入する。




以前私がプレイしていた大規模多人数参加型オンラインロールプレイングゲーム(=MMORPG)の場合、ミッションでボスを倒しに行く方法は、大まかに言うと二つに分かれていた。

一つは複数パーティーで編隊を組み、大人数で敵を薙ぎ払いながら進む方法。

一つは視覚や聴覚遮断等の認識遮断魔法等を使い極力戦闘をせずに進む方法。


後者はスニーキングあるいはハイディング等とも言い、隠密行動が主になる。

要するに、子どもの頃によくやった「かくれんぼ」なのだ。


最後まで生き残りを競うバトルロワイアル系ゲームにおいても、似たようなものだ。

戦闘をするか、避けて通るか。

その選択一つ一つが生死を分けるのだ。

これは現実世界でもあり得る案件で、兵法ひょうほうでは、避けられる戦闘は避けるのが鉄則であろう。

だが戦わなければ得られぬものも当然あるのだ。

一長一短、どちらが優れているかではなく、そのバランスを見極める事が重要となるのだ。


だが忘れてはいけない。

この世界には回復・甦生魔術等を使える者、そして鉄よりも硬い皮膚を持つ者が居る。

皮肉にも私のいた世界の戦術戦略よりも、その仮想世界であるゲーム内での戦術戦略の方が、よりこの世界では実践的なのだ。



Bパートへ つづく

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