<15話> 「暗雲あるいは雷雲」 =Jパート=
「油断?」
「していない。むしろ警戒し過ぎた」
「おごりはあったか?」
「ない。相手が上手だった」
「もう少しリスクを冒してでも強引に行くべきだったか?」
「いや、結果は同じだろう。事前準備に明らかな差があった」
「相手が強かった。それは認めなければいけない」
「やはり仲間は必要だ」
私はひとり、自問自答していた。
何処か遠い遙か彼方を眺めながら。
エミアスとキュリアが、私の元へと駆け寄ってきた。
二人の顔は暗い。
だが私の様に取り乱したりはしていなかった。
安堵の表情さえ垣間見えた。
(私、心配させていたのかな?)
二人には私が取り乱してしまった所を見られていない。
結果的に「私が諦めていない」その姿だけを見せる事となった。
これで良かったのかも知れない。
そう、五十年以上魔王に囚われていたイリーナを救い出したのは他でもない、この私なのだから。
「まずは教会へ戻りましょう」
そう告げると私は、アイテム収納から外套を取り出し、後ろからキュリアの肩に掛けた。
「あ、ありがとう。リル、殿」
キュリアはやや俯き、頬を赤らめた。
「ほんと、酷い事するわよね。服まで刻むなんて」
私は後ろからそう言うと、キュリアは振り返り、半歩だけ下がった。
「その、あの……。スカートは自分で切りました。せ、戦闘の邪魔だったものでッ」
キュリアの顔は、頬だけでなく全体的に赤くなっていた。
「そ、そう……なのね。邪魔ですもの……ね」
歯切れの悪い返しをしてしまう。
私は思わず自分の顔を手で仰ぐ。
(やだ、何だか私まで恥ずかしい……)
お互い地面を見てモジモジする。
キュリアは、私の手を取った。
「あの……。ティーナ、貴女の言う事を信じるのであれば、聖母教の総本山に拠点を構えているそうです。私が最初に闘った際に、そう申しておりました」
エミアスは私たちに近寄ると、両手で祈る様にし、呟いた。
「やはり総本山は既に戦場なのですね」
私はキュリアとエミアスの顔を交互に見ると、強く頷いた。
イリーナは必ず救い出す。
その為には「強い仲間」、それが必要だった。
かつて私は、VR型のMMORPGやFPSをやっていた。
その時、共に闘った仲間たち。
それらは今はもう思い出なのだ。
そしてその思い出は、私の大切な宝物。
この世界でもこの先、宝物が沢山生まれることだろう。
闘おう、共に。
仲間と、共に。
16話へ つづく
15話をお読みいただき、ありがとうございます。
2~3ヶ月掛けて、ようやくここまで辿り着けました。
プロットが大幅に変わって3ヶ月前に書いた文章へと繋げるのに苦労しました。
16話は、15話をキュリアとエミアスの視点で書いていきます。
総本山での決戦は17話となります。そして18話で第I部が終了となります。
17話の戦闘シーンは、既に考えてあります。あとはどう繋げるか……。
漫画やゲームに負けない様な、オリジナリティー溢れる戦闘シーンをお見せ出来ればと思っています。
お楽しみに!




