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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第一章 2節   <2話>
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<2話>  「異世界と仮想の狭間で」   =Cパート=


「夜のにしき亭。ここだね」


店の外まで、(にぎやかさが伝わってきた。


「いらっしゃいませー」「いらっしゃい!」


居酒屋チェーン店の様な対応だった。

そして狼娘が出迎えてくれた。


「ルイーダさんの紹介で来たのですが」


狼娘が答える。

「そうなんですね。それでしたら、こちらへどうぞ」


席に案内して貰う。

フリフリのスカートの中から、しっぽが見えた。


(おお、しっぽが付いてる)


私は実家で飼っていた大型犬を何故か思い出した。


店内は混みあっていて、6人掛けテーブルが10以上あるが既に、ほぼ埋まっている。

案内されたのは、アーチ状カウンターの一番奥の席だった。

狼娘は私を案内すると、そのまま脇を通り、カウンター越しに立った。


「ルイーダ婆……おば様の紹介でしたね。私は店員のプルっていいます」


プルは、私のフードの中を覗き込んだ。

私は挨拶の為、フードを脱ごうと、手を掛けた。


「あぁ、フードはそのままで良いっすよ」


「そう。私はリルといいます。冒険者として旅をしています」


「では、リルさん! 何を飲まれます?」


「アルコールの入った物をお願いします。それと、何か食べ物を。食べ物は、お任せします」


(訳の解らない世界だけれど、基本は管理していたゲームと同じだし、ゲテモノは出てこないはず!)


「かしこまりました。では、軽めのお酒ですが、果実酒を用意しますね」


「お願いします」

(果実酒ならば、どの世界でもだいたい想像の付く味だし大丈夫だろう)


プルが木製の中ジョッキに入った果実酒と、野菜と豆のえ物を持ってきてくれた。


「フォークはそちらに」


私はカウンターのあるフォークを手に採った。

三又に分かれているフォークだった。


歴史好きの友達が言っていた事を思い出す。

たしか「戦国時代、日本ではお箸で食べていたのに、ヨーロッパはまだ手掴みで食べていたんだよ」って。

それをかんがみると、文明レベルは1700年代といったところであろうか。

そういう小道具にまで細かい歴史設定されている。

そんなマニアックな所がRagna Saga(ラグナ・サーガ)のプレイヤーを魅了していたのであろう。


私は、現代よりやや重いフォークを使って、豆を突き刺し、口へと運んだ。

もっとも、筋力最大値は現実世界の数十倍はあるだろうから、軽いのだけれども。


口の中にオリーブの香りが広がる。

豆を噛むと、豆の味と混ざり、二度美味しい。


「美味しい。これはお酒に合いそう。ありがと、プルさん」


「気に入ってもらって、なにより!」


私はこの世界へ来て、現状どうしたら良いか分らないのだ。

そういった時、大人の対応はこうであろう……。

「とりあえず今日は飲んで寝て、明日考えよう! そうしましょう」


私は果実酒を口にした。ほのかに香るワインのような匂い。

お酒も美味しい。良かった良かった。


その後、ペンネの様な小麦から出来たであろうパスタを食べた。

半分以上食べたところで、私は困っていた。


(おかしい。全く酔わない)

「プルさん、もう少し強いお酒をいただけないかしら」


「おやリルさん、いける口っすねっ。じゃあこっちの寝かせているお酒を……」


木製ジョッキではなく、すずで出来たコップに樽からお酒をついで、プルが持ってきた。


「ありがと」


風味といい色といい、完全にロゼワインだ。

私は口に運ぶ。


「プルちゃん、ありがとう」

(これで、この世界でも私は生きて行けるよ)


5分後……。


全く酔わない。

私は気を良くして「がぶがぶ」飲んだはず。

もしかして、毒物耐性スキルの効果で酔えない!?


(そんなぁ、お酒で酔えない世界なんて……)


思わず、声に出して言ってしまう。

「どうしたら良いの。これ、絶望だわ」



Cパートへ つづく

2019.09修正加筆

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