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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第四章 4節   <15話>
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<15話>  「暗雲あるいは雷雲」   =Cパート=


十軒程巡り、食料などを買い込んだ。

私は自分のアイテム収納から、イリーナの多次元収納へと食料を移動させる。


情報収集を任せていたエミアスと、そろそろ合流する事としよう。

エミアスは、まずこの街の聖母教会を訪ねるとの事で、教会が待ち合わせ場所となっていた。




「異教徒が……」


教会内へと響く声。

私とイリーナが、教会へ辿り着き、扉を開けると、そう罵声が聞こえてきたのだ。


「どうしたのかな?」

私は小さな声でイリーナに問う。


「お姉様、あれは聖導教の司祭ですわね」


(聖母教の教会に、聖導教の司祭? どう言う訳かしら?)


聖導教の男性司祭が、聖母教の女性司祭と、大司教であるエミアスに食って掛かっていたのだ。


聖導教の男性司祭の後ろには修道女も後ろに三名居た。

修道女たちの衣装は、聖母教のそれとは異なっていた。


「どうか、お引き取り下さい。アギデウス司祭殿」


病的に痩せて見える聖導教司祭は、アギデウスという名前の様だ。


「ふん。異教徒風情が……。何が聖母だ下らん。売国婦どもめが。貴様らなど魔人どもの餌となるが良いわ」


どうやら、この男は聖母教信仰を良く思わない人の様だ。


私は男の雰囲気に気圧され、入り口付近でたじろいでいた。

そんな私をよそに、イリーナはアギデウスのいる方へと歩み寄る。


「イリーナ様……。申し訳御座いません。お見苦しい所を」

そう答えたのは、エミアスだった。


アギデウスもその言葉に反応する。

「イリーナ? 貴様がかつて聖女と呼ばれていた者、なのか? ふん。実にくだらんな」

そしてエミアスとイリーナの顔を改めて見た後に言い放った。

「忌み子の大司教に、邪神に祟られし聖女……いや魔女だな」

アギデウスはそう言うと口元が緩み、ニヤついて見せた。


私は敬意を払える聖母教の司祭セレーナと出会った後だけに、聖導教の司祭であるこの男に無性に腹が立った。

そして、この男の存在自体が胸糞悪かったのだ。


(おっと。胸糞は乙女の言葉としては不適切だったわ。胸元うんち君? ぺっぺ)


静まり返る教会内。

イリーナに歩み寄る、私の足音が響く。


気圧されていた私も、怒りが勝り、いつの間にか足が動いていたのだ。


「ちょっと、あなた。私の家族を侮辱するのは、許せないんですが」



「ん? 何だ? 冒険者か? 野蛮な雌猿めが」


「ホント、あったまにくるわ。こいつ半殺し確定だわ」

私は右手の拳に力を込める。


「愚かしい。一時の感情に流されて。ククッ……。だから、聖母教も滅ぶのだ」

アギデウスはお腹に手を当て、大げさな仕草で笑って見せた。


「本当に、本当に失礼な人ね」

私はアギデウスを睨み付けた。


「おや、まぁ、もう滅んでしまった後なのだがな」

アギデウスは今度は、自身の顔を手で押さえてニヤついていた。


「どういう事ですか?」

それまで真剣な表情のまま黙っていたイリーナが開口する。


アギデウスは顔を押さえている指の隙間からイリーナを見つめて言う。

「今頃、聖母教の総本山は、魔人どもの根城になっているという事だ。魔女にはお似合いであろう?」

そして今度は手を腰に当てて言う。

「聖母教などという異教徒どもの間違った教えには、神の裁きが降るのだ。直接、我々が手を出さずともな」

アギデウスは言い終わると、やや仰け反った。


(こいつ! 間接的に関わっているって事か。ヌケヌケと)

私は剣の柄に手を掛けた。


しかし、エミアスがそれに気が付き、私を制止する。

「この者の話が本当だとすると、今ここで聖導教を表立って敵に回すと、厄介です」


イリーナも私をたしなめる。

「お姉様、耐えて下さい。私が耐えているのですから」


「分かっているわ」


「それでも、ここで一太刀でも喰らわせておかないと、将来もっと厄介な事になる」私は、そんな気がしたのだ。


(確か昔読んだ、お母さんの好きな小説では「一発殴ってから話し合う交渉もある」とか言ってたしね。どっかの国の大統領なんて、首脳会談中に空爆してたわ。それに強そうな敵が居たら、とりあえず殴ってみるっていうのは実にゲーマーらしい考え方だわ)


「回復魔術のあるこの世界。腕の一本ぐらい切り落としても良いわよね?」


る気満々の私は、かなり不気味な殺気を放っていたのかも知れない。

この世界において冒険者は、ならず者なのだ。

凶暴で法に従わない無法者アウトロー

教会の意にも背く背徳者インモラリスト

それにも関わらず、存在しているのは魔物モンスターを倒す事を生業なりわいとするからだ。

冒険者は魔物よりも強い。

そういう存在なのだと知れ渡っている。


アギデウスはそれを思い出し、命の危機を感じたのか、急に黙り始めた。


その空気で察したのか、取り巻きの修道女も慌てて声を掛ける。

「アギデウス様、もう行きましょう。蛮族に関わるとろくな事になりませんわ」


「うむ」


アギデウスはイリーナとすれ違い、そして私の横を距離を取りつつ通過する。

そして無言のまま教会を出て行った。



Dパートへ つづく

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