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 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第四章 3節   <14話>
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<14話>  「帝龜アーケロン」   =Gパート=


VR釣りというジャンルが、2050年においても存在している。

それだけでゲームを一本作れる位に奥が深く、需要もあるのだ。

たしか有料会員は、釣った魚の種類毎にポイントが貯まって、そのポイントを使って本物の魚が貰えるという、漁協も巻き込んだ前代未聞のシステムだった。

それが話題となり主婦にも大ヒットしたのだと記憶している。

「ママ、夕飯のお魚釣ってくるから!」が流行語大賞にノミネートされた程だ。


ではなぜ、私が釣りをやるようになったのか?

それは私がフルダイブ型MMOをやる前の、つまりGMをやる前の事だ。

VRMMO時代に釣りブームが訪れ、仲間と共に釣りを楽しんだ時期があった。

VRMMOでは当然、魚以外にモンスターが釣れるのだ。

釣ったモンスターを倒し、ドロップアイテムガチャを回すのも一つの楽しみであった。



「わー。また釣れましたね。お姉様!」


「ええ、そうね。入れ食いってヤツだわ」

私は、ほぼ無意識で、内職作業の如く黙々と釣っていった。

元の世界、日本でのスズキよりは二回り小ぶりだ。

小さいスズキは、別の名前だった気がするが名前など、どうでも良かった。

(もうシーバスでいいや)


釣った魚はイリーナが網ですくい、海水の入った樽に移してくれた。


「わー。お姉様。お魚さん、樽の中で泳いでいますよ!」



小ぶりとはいえ、さすがにシーバスを入れるには樽は小さかった。

釣り上げた魚の入った樽が、二つ、三つと、あっという間に増えていった。


「釣って直ぐに締めた方が美味しいのだけれど、どうしようかね? とりあえず、イリーナの収納に仕舞っておいて」


「了解しましたッ! 」

イリーナはおどけて、王国式の敬礼をして見せた。


「っと、その前にだ」

私はシーバスを一匹、網で樽から出した。

そして収納から小太刀を取り出し、甲板上で捌いた。


血抜きをしていないシーバスは、強烈な臭いを発していた。

白身の部分を残し、他は全て海へと投げ捨てた。

すると投げ入れた残骸に、魚が大量に集まってきた。


「計画通り」


私はシンキングミノー、つまり疑似餌から、本物の餌に切り替える。

シーバスの白身を餌にするのだ。

ただの釣り針に、白身を括り付けた。

手が凄い臭いになったので、思わず水で濯いだ。


そしてそれをキャスティングした。

すると直ぐに、竿に重みを感じた。


二匹掛かったかも知れない。

そう思わせる重さだった。


じっくりとリールを使い、糸を巻いていく。

すると直後、有り得ない重さが竿へと掛かる。

思わず、竿が持って行かれそうになったが、私の持っている竿は、ゲームの世界のチート級釣り竿。

モンスターですら釣り上げられる代物だ。

不思議な力が竿に加わり、手に吸い付く。

竿を無くす危機は免れたが、今度はあまりの重さに身体ごと、持って行かれそうになる。

甲板の上が滑るのだ。

イリーナも慌てて私の身体を引っ張ってくれた。

イリーナは私の腰に両腕を回し、私と一緒に踏ん張る。


徐々にだが糸を巻き上げていく。

何度も左右に竿を振る事になり、その度に身体が引っ張られ、懸命に踏ん張るのだ。

身体は甲板の端の方へと徐々に追いやられていく。


「こんにゃろーッ!」


最後は力技に頼ってしまった。

すると、海面から巨大な魚が顔を出す。

艦の側面を利用し、引っ張り上げていく。


しかし、重くて途中から上がらなくなる。

浮力が無くなったからであろう。

甲板までは程遠い。ここは漁船の甲板ではないのだ。


「しょうがない。反則の転移魔法だ」


ついに私は魚釣りで、転移魔法を使ってしまった。

実に大人げない。自分でもそう思う。

だが、このまま引き上げないのは勿体ないではないか。

そう自分に言い聞かせた。


巨大な魚を甲板上に転移させた。


「おおお、これは……クロマグロじゃん!!」


「あ、ツーナですよね。私も捌かれる前のものは久しぶりに見ましたよ」


甲板上には400kgを超えるであろう、巨大なツーナ、つまりはクロマグロが

姿を現したのだ。



私は気分が高揚した。

無理もない。

自分の七倍以上もあるマグロを釣り上げたのだから。

その場で黄昏の剣を取り出し、頭部にブスリと一撃死させる。

そして血抜き用にエラの手前を三日月状に切り、腹を縦に切り開き内臓を出し海へと投げ捨てる。

更に、尾を切り落として投げ捨てた。


何故、マグロの処理が出来るのか?

それはゲームの経験ではなく、生い立ちによるところが大きいのだった。


処理を施し終わった頃には、甲板上に人が集まってきていた。


「おー、嬢ちゃんスゲーな! 俺らよりデカイだけあるなぁ」


(うるさい。ほっとけー)


「皆で夕飯に食べましょう!」


「おー。いいね! 今晩は艦も動けねえーし。宴会だ!」


すると、船尾楼のコージー大尉が大声で怒鳴る。


「おめーら! 持ち場さ、離れるな! 会議中で人少っねえだぞ! バカか!?」


熊の様に大きなコージー大尉。

その叱責により、皆が直ぐに持ち場へと戻っていった。


私はイリーナの多次元収納に、とりあえずマグロを仕舞わせて貰った。


(収納内、生臭そうだな……)



Hパートへ つづく

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