表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 異世界転移「GMコールは届きません!」   作者: すめらぎ
第I部 第四章 2節   <13話>
108/200

<13話>  「Laudamus te, benedicimus te, adoramus te, glorificamus te.」   =Eパート=

Laudamus te, benedicimus te, adoramus te, glorificamus te.

褒め称え、感謝し、崇拝いたします、栄光あれ



暫く噂話を魚に飲食とを共にしていた。

会話のキャッチボールってやつをね。

すると突然、剛速球を投げ付けられてしまった。


「そういえば、お嬢ちゃん達だろ? 傭兵ギルドで、傭兵どもをコテンパンにのしたのって」


「ふはーッ」


私はスパークリン果実酒の炭酸ガスが肺に詰まり窒息死をしかけた。


「噂、広がるの早いね。ビックリしたわ」


そう告げると、漁師の男が親指で後ろを指した。


目をやると、ファンキーな髪型の男がいた。

髪の毛の真ん中がえぐられた様に無いのだ。


(あ。デコピン男だ……)


「俺ら漁師は、傭兵どもと対立している訳じゃねえが、仲が良い訳でもないから、安心しな。それから、俺らに喧嘩ふっかけてきたら返り討ちにするがな」



「――でよお。それが強えのなんのって……。俺は姐さんに惚れちまったぜ。見ろよこの髪型! この傷は、俺からすれば勲章だぜ!」


デコピン男は、私からの視線を感じたからなのか、こちらの方を向いた。


「あ! あ! 姐さん!!」


「黙れ、デコ助」

(どう見ても落ち武者だろ!)


デコ助の奥には、イリーナに踏まれていた蜘蛛男がいた。

失禁したからか、服装が違っていたが、間違いない。

蜘蛛男は、イリーナがいる事に気が付くと、祈る様に両手を合わせていた。

男は何か一皮剥けた様に見える。


「ああ、女王様……」

蜘蛛男の発言に、私は思わず頷いた。

(やっぱりね……。変な方向に目覚めちゃったか。狂信者がまた増えたね。ちなみに女王様じゃなくて聖女なんだけどな)


漁師たちもかなり酔っ払っていた。

だからなのであろうか、何故か傭兵も含めて、皆でワイワイ楽しく飲む事になった。


縁というのは怖ろしい。

何が原因で繋がりが出来るか分からない。

先程コテンパンにのした男たちと一緒に飲んでいるのだ。

相手によっては報復の為、執拗に付け狙われる事だってありえる。

それが「姐さん」と慕ってきているのだ。


(男心は良く分かんないな……。でも、だからといって女心が良く分かる訳ではないけどね……)


カウンターの方を見ると、エミアスが一人で飲んでいた。

かなり深酒をしていそうだ。

(なんか、哀愁漂ってるな……。苦労の多い人生なのかな)


結局、私たちは昼から飲み始めたのに、夜遅くなってしまった。


「姐さん」と慕ってくる傭兵、デコ助に宿の手配を任せていた。

驚いた事に、そのデコ助は爵位を持つ団長だったのだ。

案内された宿は、高級な貴族御用達の場所だった。


(怪しい宿だったら、今度は頭に風穴を空けるところだったが、マトモな宿で驚いたわ)


料金もデコ助が払ってくれていた。

(やるじゃん。お酒飲んで気が大きくなっただけかも知れないけれど)


別れ際に、泣いてこう言われた。

「姐さん! 本日は、厳しく教育していただき、ありがとうございました! 次にヴァノスなどの王国南部へお越しの際は、おいらにお供をさせてくだせい!」


デコ助に名前を名乗られたが、私は直ぐに忘れてしまうのだった。



翌早朝、人通りの少ない内に私たちはユニコーンに牽かれて出立した。

漁師街の朝は早く、街道へ出るまでに何台かの馬車とすれ違った。



昨日深酒をしていたエミアスは、死にそうな顔をしていた。


(そういえば、二日酔いのエルフって初めて見たわ。やっぱハーフエルフだからなのかな?)

「エミっち大丈夫? イリーナに浄化してもらったら?」


イリーナは、昨日の復讐とばかりに、顔がニヤニヤしている。


「だ、大丈夫です。神から与えられた試練、耐えてみせます」


「いや、神様は関係ないでしょう。深酒したのエミアスだし」


エミアスは私に事実を告げられ、ショックを受けたのか、暫く硬直していた。


エミアスの硬直が解け、二日酔いもイリーナによって浄化された頃、馬車は海岸沿いの街道を走っていた。

窓を開けると、海風が心地良かった。



Fパートへ つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ