<12話> 「邪神と主神と再会と」 =Jパート=
「宜しくお願い致します。ブラギ老師」
ブラギは説明してくれた。
「わしの使い魔に、フギンという鴉がいてのう。そやつとは魔力的に繋がりがあり、常に情報のやりとりが出来るのじゃ」
そう言うと、ブラギは何やら杖を構えた。そして目を瞑り集中し始める。
(要するにテレビ電話みたいなものなのかな?)
イリーナが感嘆する。
「凄いですね。あ! お姉様の世界のケータイとか言う魔道具と同じなのでは?」
「え? あ、あぁ……。まあ」
私は曖昧に返事をした。
隻眼のブラギは、瞑ってた片眼を開ける。
「うむ。普段なら鴉の見た物をこちらからは見られるのじゃが、声のみしか届かん。推測じゃが、魔王が何か視覚遮断魔法を使っていて、それが悪さをしている可能性が高いの」
イリーナは微笑み答える。
「ブラギ様、お声だけでも、十分にありがたいのです。感謝致します」
ブラギは頷く。
すると地面から実物の人間より小さい人影が現れた。
人影の正体はキュリアと思われる。
像が鮮明ではなく、シルエットだけが判る。
(ホログラムみたいな物か)
令和生まれで2050年に生きる私からすれば、珍しくはない。
透過率95%以上の有機ELディスプレイを円筒型に丸めて作った擬似的なホログラムは、広告媒体として街中でよく見掛ける代物なのだ。
人影から声が聞こえてくる。
「師よ。感謝致します」
(あ、キュリアさんかな?)
「はじめまして。私はブラギの弟子のヴァルキュリア・レギンレイヴと申します。皆、キュリアと呼ぶので、宜しければそうお呼び下さい」
「はじめまして、キュリアさん。私はイリーナと申します。先日は襲われていた我が門徒をお助けいただき、ありがとうございました」
「おぉ、それでは貴女が聖女イリーナ様なのですね。実は70年程前にお見掛けしたことがありまして、今でも微かに覚えています」
「まぁ、そうなのですね。これはお恥ずかしい」
「現在私は、聖母教総本山の近郊にある街に来ています。着いたばかりですので、聖母教総本山についてはの現状は、殆ど分かりません」
「そうなのですね……」
「申し訳ない。イリーナ様のお役に立てず」
「いえ、ありがとうございます。キュリアさん」
「こちらへ向かわれると、師からお伺いしております。それでは、現地でお目にかかりましょう。お待ちしております。聖女イリーナ様」
「はい」
次に私が話す番となった。
「冒険者のリルと申します。はじめましてキュリアさん」
「お初にお目にかかります。はじめまして、リル殿。ルイダ嬢からは、貴殿の話は大変良く伺っております」
私は一つ、キュリアさんに言うべき事があった。
「本当はお目にかかれた時に、言わなければならない事ですが、ルイダとの約束、ありがとうございます」
「あぁ、あの事ですね。私はルイダ嬢に敬意を払っているのです。ですので、騎士として誓いを立てたのです」
「イリーナを護っていただけると、ルイダから伺っています」
「ええ、力の限り、努めさせていただきます」
「ありがとうございます。私にとってイリーナは家族も同然なのです。本当に、本当に、ありがとうございます。キュリアさん」
「いぇ、あ、え……。そう面と向かって言われると、少し恥ずかしいですね」
そう言われて、言った私もなんだか恥ずかしくなってきた。
自分でも耳が赤く熱くなった様に感じる。
「えっと、次の、エミアスで!」
私は二歩下がり、エミアスと入れ替わった。
「はじめまして、私は聖母教の司教エミあ……」
「あー残念。途切れてしもうたわい」
ブラギは無邪気に言う。
「あれ、今日は何か私、こんな役回りばかり……。(オチ担当ですか、そうですか~) 」
エミアスは肩を落とし、普通にしょげていた。
ブラギは最後に、私にこう告げた。
「ま、キュリアを宜しく頼む。リル殿」
こうして私たちはブラギと別れた後、王都フリードを出立し、ヴァーラス王国領内の街道を南下するのであった。
南海岸沿いの港町を目指す為。
13話へ つづく
12話をお読みいただき、ありがとうございます。
後半パートはかなり駆け足でしたね。
それでも12話は単体で2万字越えていまして……。
第1章や2章のキャラが多く再登場しましたね。
書くに当たって一部ですが私も読み返してみました。
去年の年末ですが、懐かしいですね。
まだまだ書き足りない所もあります。
王との迎賓館でのシーンや迎賓館の装飾、
「凄く立派な建物」と省略してた離宮の内装、
「綺麗な景色」と曖昧に書いた景色、
機会があれば加筆、あるいは別の話数で書きたいと思います。
長い12話、本当に最後までお読みいただき
ありがとうございました。
さて、13話は王国の海兵隊や「帝龜アーケロン」のお話などです。
期間を空けず、来週投稿の予定です。
お楽しみに!




