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羊女






そういう未来もあったのかな





ルイスが居て、





その腕には私とルイスの子供が、





でも、どうすれば手に入ったのかな…





そんな、夢みたいな__










……………………………













エリー!



おい、エリー!起きろよ!!



おれが来てやったんだから起きろよ、このバカ!




ドンドンドンドン!



けたたましい音が狭い部屋いっぱいに広がる。









「…ん…」



「おい!さっさと起きろよ!」



バタン!と苛立ったように開け放たれた扉。覚めきらぬ頭で見つめれば、そこに居たのは知り合って数年(いつだっけ…?)ばかりになる近所のお坊っちゃまだった。



「あ、あれれ?おぼっちゃま、どうされました…」



モゾモゾと布団から這い出て開けっ放しの扉を閉めた。お坊っちゃまと言えばベッドの隣に置かれた椅子にどっかり座り偉そうに腕を組んでいる。



(なんか、約束してたっけ…?)



あららと、思いながら手櫛で髪型を整えながらエリーはもう一度問うた。



「お坊っちゃま?えーっと、おはようございます…?今日、なにかありました?」

「何が『おはようございます〜』だ!お前昨日のおれの話聞いてなかったろう!」



(昨日…きのう…?あ、ダメだ思い出せない…。)


冷や汗が滲む、そしてお坊っちゃまの機嫌がみるみる悪くなっていく中、エリーは答えを出せずにいた。



「もういい!とにかく!今日は街に行くから!さっさとその見苦しい格好を着がえろ!」


わかったな!と指を刺されながら慌ただしくまた扉を開け、バタン!と出て行ったルイス。

ドタドタとした足音が遠ざかって行き、部屋はようやく静けさを取り戻した。

思わずホッと息を吐く。



(んー、とりあえず…着替えなきゃ)



今日は休みをもらったはずなのに…、何故朝っぱらからこんなにバタバタしなきゃいけないんだろう、と不服に思いながらも密かに想いを寄せるお坊っちゃまが私のために来てくれたことに少なからず嬉しさがこみ上げる。



(今日はどこに連れてってくださるのかな)









ルイスお坊っちゃま。



偉そうなのは、昔から。



でも、頼り甲斐があって、賢くて、ちゃんとした場だと貴族らしく振る舞える。



賢いからって屋敷を抜け出してはわたしの所へ来てくれる。



近くて、少し遠いお坊っちゃま。













お坊っちゃまと出会ったのはたまたまで、はぐれた子羊を探してお母さんたちとは別に探し回っていた所、立派なお屋敷の方から子羊の声が聞こえた。

そりゃ、やみくもに探していたけれど、私がいたのがそもそもお屋敷の裏側だったらしく、すいすい入って行った先は、それはもう見たこともないくらいたくさんのお花でいっぱいの素敵なお庭だった。





そこにいたのがお坊っちゃま。







「なにしてるの?」


「子羊をさがしにきたの」


「…ここ、ぼくの家なんだけど?」


「…?そうなの?じゃあ子羊見てない?」


「見たよ。あっちで執事が面倒みてる。」





あっそうなの?と嬉しそうに微笑む私にお坊っちゃまはポカンとしていた。

んじゃあ、行こう!とお坊っちゃまの手をとってお坊っちゃまが先ほど指さした方へと進んでいく。




ぺたぺたと小走りに庭をかけて行くとそこには探していた子羊と立派な服を着た男の人がいた。




「坊っちゃま、そちらのお嬢さんは…?」


「知らない。庭に勝手に入ってきたんだ。」


「あ、子羊を、探して来たんですが…」




子羊がはむはむと芝生を食べているのを見てエリーはさっと青ざめた。



「、あ!コラ!!こ、こんな立派な、お、おお庭の芝生を!!」



ダメ!ダメダメぇ!!と少年と繋いでいた手をあっさり離し満足そうな子羊を必死な形相で止めに行く。



「おやおや、大丈夫ですよ、お嬢さん。」


「いや、でも!ご、ごめんなさい…」



人の家の庭には平気で入る癖に芝生なんか気にするのか、と一人、少しばかり離れた所に放置されたお坊っちゃまは不思議そうに少女を見ていた。




「お坊っちゃま、この子はどうやら近くの牧場の子のようです。送りがてら今日おっしゃっていた領地視察のお試しをしてみては?」


いつの間にそんな話になったのか。

執事は子羊を撫でながら愛想が良いとはとても言えない表情で提案をしてきた。

少女と子羊を交互に見るとポカンとした間抜けそうな顔でこちらを見ている。



(なんだ、コイツ…でもまた羊を逃がされても面倒だな…)



それにふだん屋敷の近くを歩くなど滅多にない、少なからず冒険心といおうか、好奇心がわいてお坊っちゃまはテンションが上がった。



「そうだな、散歩がてら行くか。」



仕方ないと、言いたげな不遜な態度で坊っちゃまと呼ばれる少年は少女と執事と子羊に近づいていき、彼は少女の手をとった。

















__________________


おまけ。




「ほらぼやぼやしてないで子羊を紐で繋いで!紐ちゃんともっとけよ?」


「うん!紐もってれば安心だね!お坊っちゃまあったまいー!」


「ば、バ、バッカ!お前こんなの誰でも思いつくんだよ!!」


「お坊っちゃま、こんな可愛らしいレディにバカはいけませんよ。」


「(可愛いだと!?ん?ん…んー、よく見ると確かに顔はな…っていやいや)こ、こんなちんちくりんまだレディじゃない!」


「レディってなーに?あ、わたしエリーっていうの!」


「エリーお嬢様、またルイス坊っちゃまと仲良くしてくださいましね。」


「うん!お坊っちゃまよろしくね!」


「お、おう、よろしくな。」






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