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元夫

前回のリーナ視点

(ですが会話はあまり重複させていません)











セシルがカクテルを取りに行ってくれた。

不意に私は天井に目をやる。



美しい天井絵、煌びやかなシャンデリア。

素敵な思い出を胸に刻もうと見ていた所に視線を感じた。

三階のバルコニーらしき所に仮面をつけた男が私を見ていた。




(あれは…)



仮面などなんの意味もない。

長すぎる付き合いは瞬時に何者かを当て、脳に警鐘をならした。




「…まさかここで会うとはなぁ」



誰にも聞こえることのない声でリーナ呟いた。


(ルイス…)


もっと私は怯えるかと思った。

彼から逃げ出した負い目とか、見つかった恐怖心は不思議とない。



(強くなったのかしら…)



セシルと出会って、この国で暮らして、リリーやみんなとの日々の中で。

そうだといいなと、リーナは思った。



(ほらエリー、貴方の旦那様だった方よ)



自分自身に語りかける。

大丈夫、怖くない。

彼に何も言えずに逃げ出したあの日のエリーはもういないわ。



ルイスを見る。

彼の正装を見るのも本当に久しぶりだ。

彼はおもむろに手を前に差し出し、指をちょいと動かした。



(え…?来いってこと…?)



次に彼は口の前で人差し指を立てた。



(気づかれずに来いって…?)



セシルが一緒なのをわかっていないのだろうか。というか、ロリーの手紙はどうしたのだろう。届いていない…?最後にロリーに会ったのは数日前で国内なら手紙は1日もあればつくというのに。

もしや、彼に…ロリーに何かあったのだろうか。

言い知れぬ不安感がぶわりと胸に広がる。

だとすれば約束の日に彼は来ない…。

決着をつけるなら、



「今日しかないのね…」



今日はせめて一日夢を見ていたかったのに、と惜しく思う気持ちが溢れる。セシルに目をやった。ぱっと目があって思わず口元が緩む。


(あ、)



しかしその瞬間、やはりまだ苦手な感が否めない人物と目があった。



(シャーリー様…)



なんで様をつけているのか、と侍女長に怒り気味に言われたことがあるが、彼女は私のいた国では結構な貴族のお嬢様なのだ。そのイメージや彼女自身の雰囲気も手伝って思わず様をつけてしまってそのまま。彼女も私を「エリー様」と呼ぶものだから尚更かもしれない。



彼女は私を見ている。

先ほどのやりとりは見られてしまっただろうか…。

そうでないといいなぁと思った頃、セシルがカクテルを持って帰ってきてくれた。



「あ、ありがとう!」

「どういたしまして。」



彼もシャーリー様に気がついたようだったけれど、「これを飲んだら帰ろうか」とまるで触れることもなく言った。「そうね」と答えて私たちは帰ることにした。

いや、正確に言うと私は帰るふりをしたことになるのかもしれない。

ホールを出ようとセシルと腕を組み歩いていた私はするりと彼の腕を離した。



「あ、セシルごめん、ちょっとお手洗い行ってくるね。先に馬車の所へ行っておいてくれる?」



古い手かも知れない、けれども私は彼に会わなければならないと思った。根拠はない。なんなら約束の確認だけでもしておきたかったのかもしれない。



「わかった。行っておいで、でもここで待っておくよ。」



私の考えを知ってか知らずか、彼は優しく送り出してくれた。










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