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祭女









まずリーナはパーティ会場の大きさに度肝を抜かれた。

さすが大国と言うべきか、昔いた国の大ホールの何倍も大きな建物。劇場のように煌びやかな装飾は感謝祭のイメージカラーのオレンジと紫で彩られている。

柱は石像の女神たちが支えているかのごとくあしらったものや、神話に出てくるような神々が立体的に彫り込まれいて幻想的にすら思えた。

赤い絨毯が会場までの道を示す。

馬車を降りたったリーナとセシルは腕を組みながら会場へと入っていった。

会場入って中も素晴らしいの一言に尽きる。

ホール天井に下げられた大きくキラキラとダイアモンドダストのように優しく美しい光を放つシャンデリア。



集まり出している人々は皆、セシルが渡してくれたような仮面つけており怪しげにも見えるけれどその表情は明るくこれから始まるパーティに胸を高鳴らせているのが空気となって伝わってくる。








「うわぁ…」

「気に入った?」

「すごい綺麗…」



私はまだ外観やロビーだというのにあまりの美しさに目を奪われた。

セシルが案内してくれて、いよいよホールに入る。






入り口の段階であの素晴らしさだったのだからホールは言うまでもなかった。

想像のさらにその先を行くような豪奢な作り、中庭に面しているであろう窓はとてつもなく大きなステンドガラスで出来ており、ただでさえ大きな窓のカーテンは、普段はセシル曰く深い紅らしいが、今は感謝祭の色に合わせてか紫とオレンジの煌びやかなカーテンがかかりそれが両脇に大きなリボンでくくりつけられている。

天井は高く、アーチ状になっているのだろうが、美しく青々とした空や神話に出るような天使たちが描かれておりその空がどこまでも続いているような錯覚に陥った。

真ん中のホールは吹き抜けだが、二階、三階にはボックス型のバルコニー席が少しせり出すように設けられている。

会場の最奥にはステージがあり、弦楽器を中心とした中編成の楽隊がワルツを奏でている。

反対側にはバーカウンターとビュッフェスタイルに軽食を備えたテーブルがいくつも用意されていた。広い、広すぎる。





「とりあえず踊る?それとも飲み物がご所望かな?」



セシルは毎年警備に当たっていたためか慣れた様子で会場を歩く。

聞けば毎年警備担当の同僚と変わって仕事をしていたらしく、会場の施設は全て頭に入っているらしい。

今日の装いだけでも随分逞しく見えるのに、今日のセシルは何もかも頼もしく感じて不覚にもキュゥンと胸がときめいてしまった。





「飲み物を…」

「わかった、でも取りに行ってあげたいけど、今日は離れないと約束したから一緒に行ってくれる?」

「も、もちろん!!」


むしろ一人にしないで、と内心焦りながら私たちはバーカウンターに向かった。




それから本当に夢のような時を過ごした。

何年ぶりになるかわからないワルツを踊り、お腹が空けば食べるのが勿体無いくらい可愛らしいケーキをセシルと一緒に食べた。

女性に免疫のないセシルは今日は何かとリードしてくれる。なのに腕を組む時と違い、ワルツを踊るために重ねた手からは緊張していることが伝わって私はセシルを見た。

頬も耳も赤い、いつものセシルだけれどいつものセシルじゃない彼に胸がドギマギする。




(まだ、決着はついてないっていうのに…私ってばなんて節操のない…)




しかし、いくら思い直してもときめく胸を落ち着かせることはできなかった。

好きだ。

セシルのことが。

一挙一動に心が踊る。

指先の動作からなにからなにまで。思い返せばセシルはいつもそうだ。何をするにもリーナを思い遣る気持ちに溢れて輝いていた。








曲が終わり、また始まる。

私はいつまでも今日が終わらなければいいと密かに願った。










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