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庭男







感謝祭の朝、その男はやってきた。

人が待ち合わせて会うにはずいぶんと早い時間。セシルの屋敷近くの広場に彼を呼び出した。

少し肌寒い朝の広場にはロリーとリーナ以外の人間は見当たらない。






「おはよう、ロリー。」

「未だにエリーかリーナか、呼び方を悩んでいたがどうやらリーナと呼ぶ方がいいようだな…」



老人は悲しげに、けれどもどこかほっとしたように目を伏せた。

勘の良さは相変わらずのようで恐れ入る。




「逃げるのはやめる…ちゃんとルイスとお別れをしたいの。」

「本当に、いいんだね…?」



リーナは少し見ない間に髪は伸び、変装のために変えていた髪の色を落とし元に戻していた。

昔のリーナの髪色。ロリーが彼女と出会った頃と比べればちょうど同じくらいの長さだったかもしれない。

懐かしいはずなのに屋敷にいた頃の彼女とはまるで表情が違う。




「ルイスはもうこの国に来ているの?」



リーナは本題に入った。

ロリーは静かに頷く。

つい先日にシャーリーがいたのだからもしかしたらルイスも、と思っていた考えはあながち間違いではなかったらしい。



「私もまだ一度もお会いできてはいないが、この国にはいらしているはずだ。この前届いたルイス様からの手紙がこの国の判が押されていたからな。手紙自体にもこちらに来ているということを書いておられた。」



ロリーには研究職があり期間も定められていて何かと小忙しい。

ロリー自身が確認してなくとも、手紙のやり取りが出来ているというだけでリーナには十分だった。




「手紙を出してもらってもいい?」



リーナが問う。

答えは決まっているようなものだ。




「今日にでも、出すよ。」




ロリーはどこか懐かしむように遠くを見つめた。それからリーナを見る。




「今までありがとう。」





ロリーが頭を下げる。

言葉は昔より気安いのに、彼のお辞儀は執事時代を思い起こさせる恭しく丁寧なものだった。









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