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困女











しかしながら。







だけど、でも、むしろ、ていうか、







「ダメでしょう」









部屋で一人つぶやく。

うん、と布団を被った私は全く眠れる気がしなかった。

ぐるぐると考えてしまい頭が冴えてしまう。ふかふかのベッドは柔らかすぎず、硬すぎず。前の屋敷だってベッドは質の良い物だったが、国の規模が違えば物だって変わってくる。

今まで眠れぬ夜などないくらいに安眠を提供してくれていたこのベッドを持ってしても今の私を眠らせることはできなかった。





好きだ、と言ってくれたセシルの気持ちは嬉しかった。

もう二度と恋なんかしないと思っていた私だけれど、辛い時に優しくしてくれる人というのはホントにまぁズルい。

「情」に気持ちが上乗せされた「愛情」を受けて自分自身の気持ちの変化に気づかされる。




でも、いけない。




正直詳しい出自のわからない平民で、亡命者で、なによりバツイチの行き遅れ…。

まだ結婚が早かったため、年齢的には若くとも適齢期には少し遅い。






セシルは若くして実力を認められた将来ある若者。しかもちきんとした家柄で、人望も厚い。









完全にルイスの二の舞である。







彼のことは好きだし、支えたい。

けれど、結ばれたいとは望まない。



ここに居させてくれればいい。あの店をやめて本格的に侍女になりたい。もしくはあの店を続けて、私はここを出て友人として接していきたい。

そんな風に考えていた。











そう、私はちゃんと考えていたのだ。








しかし、その日から犬のようなあの男ははどうやら猪になったらしい。














「おはようございます。」


「おはようござ、わ!!」






朝方、いつもは自分で起き、準備してセシルが食堂に来るのをみんなで待ち、みんなでテーブルを囲み食事をするのが当たり前の光景になっていた。

今日も食堂に向かおうと部屋を出たところでセシルが急に現れた。

しかもなぜかどアップである。


(え、わ、近い!)




振り返ったとは言えキス出来そうなほど近ければだれだって驚く。




(…だれだ…)





思わず脳が停止する。

セシル…?いや、セシルはこんなことできないでしょ…?いや。でもセシルか…え、なんでいるの?今日休みなのになにか用事?あぁ、そうか用事があったのよねきっと…。

寝るのが遅かったからか眠気がなかなか覚めない頭。



「セシル、なにか…」


「好きです」




は?と、思わず出かかった声すら驚きで出なかった。にこにこと嬉しそうに頬を染める彼は間抜けヅラをした私をそっと包み込んだ。









そう、この日からセシルの好きです攻撃が始まったのである。

実直な青年であるとは常々思っていたが、まさか不慣れな恋愛に関しても実直だとは思っていなかった。

好きだと告げられるたびに赤くなり、胸がざわつくのを抑えられないのも悩みの種だった。






(困った…)



目の前には今日贈られたキレイな花。



(これじゃ前から考えていた計画はできそうにもないかしら)










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