起女
今となってはわからない
急に変わったルイスは、本当に大人だった。
それでいて私がいると優しい人になる。
言い知れぬ違和感は覚えながらもその後、ルイスと結婚できるとわかった時には涙が出るほど嬉しかった。
諦めていたルイスが私を選んでくれた事実が本当に夢のようで…またそれらがまさか実現出来るものだとは到底思ってもいなかったから。
でも、結果はこれだ。
結婚前から反対の声は賛成より遥かに多かった。
第二夫人を迎えるその日まで抗ったがそれもおしまい。第二夫人の噂話を聞いてから今まで怖くて拒否していた病院の検査も屋敷の侍女やルイスの母上に勧められて受けにいった。
いくつかの質問を受け、医師の診断で知らされたのは“私の”不妊。
医師の言葉を聞いて私はすぐに納得してしまった。三年もの間、出来なかった。営みはあったのに、授かれなかった。
周囲からの圧力と陰口も聞こえていなかったわけではない。それでもルイスが愛してくれていればそれで良かった。
いずれは授かると思ってきたから。
でも不妊なら、話は別だ。
女はよく友人同士でこんな問いかけをする。
“カッコ良い貧乏”と“金持ちの不細工”どちらが良いのかと。
大抵の女はものすごく迷う。
生きる上でお金はないと困るし揉め事の種になりやすい。しかし不細工だと産まれてくる子供の顔が心配だと。
男だってそうだと思う。
“好きだけど子供を産めない女”と“好きじゃないけど子供を産める女”どちらが良いのかと問えばかなり迷うはずだ。
まぁ、男の人なら好きじゃない女に子供を産ませてから好きな女と念願の不倫、という手を考えるかもしれない。
私は考えさせられる。
“どちらが、二番目の女なんだろうね”と。
ふわり、と意識が浮上する。
目覚めたリーナの目には見慣れた天井、そしてすぐ側で心配そうにリーナの手をぎゅっと握るセシルが映った。