第8理論 新しい住処と期待
《再現》を駆使することで10分ほどで迷路を攻略した僕は東の離宮の掃除をしていた。ずいぶんと使われていなかったらしいので掃除が必要だったのだ。
ちなみに迷路を具体的にどうやって攻略したかというと入り口から入って壁に当たる直前まで歩いた後、《再現》を使い僕の周囲に鉄球を造り転がすことで鉄球が消えない、つまり壁のない場所を探し出したというわけだ。まあ1本道でなければあれほど早くたどり着くことはできなかったとは思うが。
まああの攻略法が通用する限り僕が迷うということはない。それに離宮から出るときには壁に当たればそれなりの距離を短縮できるので便利といえば便利だろう。
そんなことを考えているといつの間にか掃除が終わっていた。流石は僕が造ったお掃除ロボたち、僕がぼーっとしていてもきっちりと働いているんだね。
「何とも便利なものだな。これは手入れなどは必要なのか?」
「いや、2台以上あるのなら互いに手入れをするから別に必要ないよ。ちなみにこのお掃除ロボ、いまならなんと1台につき鉱石200キロでお売りしますよ」
「ほう、だったら使い道のないハウンド鉱石とクロガネ鉱石を400キロずつで4台もらおうか」
「使い道のない鉱石で買おうとするなんていい根性してるね。ちなみにその2つの鉱石ってどうして使い道がないんだい?」
「ハウンド鉱石は衝撃を反射する性質があってな。叩いて鍛えることができず、そのくせ熱に弱いという鍛冶に不向きの鉱石だ。クロガネ鉱石はどうやっても変形させることができないので使えないのだ」
「何ともすごい鉱石たちだな」
でもそんなおもしろいもので実験するのも楽しいかもしれない。そう思いフィーナにお掃除ロボを4台提供することにした。
「それで何か必要なものはあるか?」
「そうだねえ………」
離宮は台所、寝室、多目的の部屋が3つで構成されている。どの部屋も広く、1人で過ごすには十分だといえる。家具も揃っているし、そもそも僕は大抵のものは《再現》で造りだせるので必要だと思うものは考えても出てこなかった。
それをフィーナに伝えるとそうだろうなと頷かれ、別の話を振られた。
「では雪の住居も問題が無くなったところで貴様のクラスカードを手に入れに行くとするか」
「おおー!!」
異界の迷い子にもクラスはあると聞いていたので何気に楽しみにしていたのだが僕のクラスはいったいどんなものなのか早く知りたい。
その気持ちがまったく反対のものになることも知らず、この時の僕は浮足立ってフィーナについていったのだった。