第7理論 国王と離宮
「フィーナがよく考えて決めたのなら俺は否定せんよ。八幡殿、この娘は色々とやらかすかもしれないが温かい目で見守っていてくれるとありがたい」
それがアリスト王国国王フェルダニア・フォン・アリストがフィーナから話を聞いて最初に言った言葉だった。
「はあ………」
そう言うしかなかった。何なのこの王様は?アリスト王国の王族っていうのは誰もかれもが規格外なのか?それとも僕の王族に対する考えが間違っているのか?
「よし、父上の許可も取ったところでこれから雪が暮らす部屋を決めるよしようか」
「そうだな。八幡殿は何か部屋に対する希望はあるか?」
「そうですね、暮らす部屋は狭くてもいいのですができることなら広い実験場をもらいたいのですが」
「いや、実験場の手配はきちんとさせてもらう。それがあるからと言って部屋を狭くする必要などはない。きちんとした部屋を渡すとも」
「そうですか?では人があまり近づかない部屋があればうれしいですね。僕は近くに人がいると眠りが浅くなるのでね」
「そういうことなら東の離宮があったな。あそこは人が近づかないのではなく近づけないのだが、まあ八幡殿なら大丈夫だろう。フィーナ、案内した後に必要なものがあれば紙に書いて渡してくれれば手配しよう」
「では行くぞ雪。父上、ありがとうございます」
「気にするな。本来ならお前はもっと自由なんだ。それを俺の勝手で縛っているのだからこれくらいはさせてくれ」
「………はい」
何やら事情のありそうなことを話した後、フィーナは僕を連れて東の離宮に向かったのだった。
「で、ここはいったいどうなっているんだ?」
「面白いだろう?」
いま僕は何もない空間に弾かれるという奇妙な経験をしていた。フィーナは面白そうに笑うだけで何も言わない。僕1人でどうにかして見せろということなんだろうか。
まったく、なんて王女様なんだ。
とりあえず強行突破できるかを試してみるためにバイクを再現して突っ込んでみたのだがやはり弾かれる。
ではゆっくり行ってみるのはどうだろうと試してみても弾かれた。だったらこの現象はどこまでの範囲で起こっているのかと手をついて周りを歩いていくと突然弾かれ無い場所ができ、僕は無様に倒れることとなった。
「大丈夫か?」
「恥ずかしくて死にそうだ。で、ここだけは弾かれないみたいだしこのまままっすぐ向かえば」
セリフの途中で再び何かに弾かれ、気づけばフィーナの隣にいた。何が起こったのかを理解しようとし、まさかと思うものがあったのだが………
「どうやら気づいたようだな」
「これは見えない迷路なのか?しかも一度壁に当たると外に出されることになる?」
「当たりだ。ついでに言うのなら時間によって迷路は変化するからな。では頑張って我を離宮まで連れて行ってくれ」
「………意地が悪い」
何も言わずにこんな面倒なことをさせるなんていったいどうなっているんだ。あの王様もなかなかどうして意地が悪いというべきか。
しかしこのまま逃げても恰好が悪いので僕は絶望的な総当たりをすることにしたのだった。