第6理論 いたずらと仕返し
周りの風景が完全に崩れ落ちると僕と王女様はどこかの部屋の中にいた。そしてあたりを見ているとさきほどまでいた山と同じだと思われる模型がガラスケースの中に入っていた。
それから推察するとここは王女様の使っている部屋なのだろうけどいきなり移動させるのはひどいんじゃあないだろうか。そう思って王女様の方を見るとなぜか彼女はニヤニヤと笑っていた。
「どうだびっくりしたか?」
「まあ、いきなりあんな光景を見せられればね。それでこれからどうするんだい?」
「まずは父上たちに貴様を紹介しようと思う。とはいえここからでは父上たちのいるメイブンから馬車で10日ほどかかってしまうのだがまあその10日でいろいろ見て廻るのもいいだろう」
確かに急ぐ理由はないから時間をかけてもいいけれど未来のお父様(予定)に会うのならば早いほうがいいのではないだろうか?そんな思いから僕は王女様に1つの提案をしたのだった。
「これはすごいな!」
王女様が目を輝かせて喜んでいる理由。それは僕が《再現》を使って小型の飛行機を作ってそれに乗って飛んでいるからだ。最新の技術を使って造られたこの飛行機には様々な機能があり、その1つである『透明化』によって外からは見えないようになっているので空を飛ぶ魔物(魔物とはこの世界固有の怪物のこと)に間違えられることはない。
「これが飛行機という物なのか。昔訪れた迷い子たちが便利だと話していたと記録にあったがこんなに早ければそう思うのも当然であるな」
「この世界では乗り物っていうと馬が主流なんだっけ?」
「うむ、実力の高いものは魔物を手なずけたりもするが基本は馬だな。だから1時間も経たずにこの距離を移動するなどありえんことなのだ」
「それじゃあ次の初体験をしてみようか」
ついにアリスト王国の首都であるメイブンについたのだった。
「この馬鹿者が!!あんなところから飛び降りるなどと何かあったらどうするつもりだったのだ!」
メイブンにある王城へと空から侵入した僕は王女様に怒られていた。1時間前のいたずらの仕返しをしようと思って不意討ちで飛行機を消し、自由落下の楽しみを知ってもらおうと思ったのだけどどうも失敗したようだった。
「まあまあ。僕を国王陛下のところへ連れて行ってくれるんだろう?そんなに怒っていたら僕のことを婚約者候補だと言っても信じてもらえないよ」
「あとで覚えておけよ。それと我のことはフィーナと呼べ」
「僕のことも雪と名前で呼んだ方がいいのかな?まあそれはフィーナに任せるとしようかな」
2人で話をしながら国王が待っているらしい謁見の間と呼ばれる場所に向かっていた僕たちはやけに豪華な扉の前にたどり着いた。
国王陛下に謁見するという人生初の体験に少し緊張しているとそれを見抜いたのかフィーナが笑顔を見せながら挑発してきた。
「父上の威圧に心を折られるような軟弱な男ではないと信じさせてもらうぞ」
「逆に僕が威圧してしまわないか心配だね」
「それはそれで見ものだがな。………行くぞ」
そうして彼女は扉を開けたのだった。