第4理論 人生初の申し込み
異世界(らしい場所)で初めて会った少女にいきなり結婚を申し込まれるという今までの人生で初めての体験に戸惑っていると少女………フィーナ・フリード・アリストはさらに話を進める。
「いきなりで戸惑うのは分かるのだがそのまま話を聞いていて欲しい。我は先ほども言ったようにアリスト王国の第1王女なのだが父上と母上には他に子がいないため我が次の王になることは決まっているのだが15歳になると周りが相手を見つけろとうるさくてな。ついカッとなって言われなくても相手ぐらい見つけてやるわ!と言ってしまったのだ」
「だからって初対面の相手に結婚を申し込むのはダメだろう。それに僕みたいな素性の分からないやつを許しはしないんじゃないかな?」
「いや、それはないと思うな。アリスト王国において異界の迷い子は喜ばれる存在なのだ。さらにその証明にクラスカードという物を使うことで簡単にできるのだ。よって問題は貴様が受けるか否かだけなのだ」
「ふむ………」
本当に彼女の言う通りなのだとすれば、僕が頷けば王の、彼女は女性だから王女の伴侶としてそれなり以上の生活ができるのだろう。でもそれは元の世界に帰ることを諦めるほどの事だろうか?
この世界の文明がどれほど発達しているかは分からないけど日本はかなり住みやすいところだ。何も知らない世界のためにそれを捨てられるかというと簡単にはできない。
いや、ここで問題なのは僕がこの世界のことを知らないという1点においてだけなんだからそれを確かめればいいんじゃないだろうか?つまりここですぐに答えを出すのではなく日本に帰る手段を探しながらこの世界が僕にとってどんなものかを知っていけばいいのではないだろうか?
それを彼女に伝えると納得したように頷いた。
「そうだな。では八幡殿には我の婚約者候補になってもらうのはどうだろうか?もちろんその間はいつその役目から降りてもいいし逆に覚悟が決まればすぐにでも結婚できるように取り計らうつもりだ」
「そんなに僕に都合のいいことをしてもいいのかい?君が僕をどう思っているかは知らないけど僕が女王となった君の配偶者になった途端に権力を振りかざしてろくでもないことをするかもしれないよ?」
「そんなことをわざわざいう者はそうならないだろうし、なったとしたら何の躊躇もなく切り捨てるから問題はない。あくまで我の配偶者が必要なだけであって政治に関わらせるつもりも強い権力を渡すつもりもない。それでもいいというのなら、欲を言うならそのうえで我の安らげる場所になっていいと思ってくれるのならの話なのだ」
「なるほど、まあ平民の僕には権力なんて縁のないものだからね。それに触れて変わってしまうのならば切り捨てられても文句は言えないか。じゃあとりあえず君の婚約者候補という役を受けさせてもらいたいのだけどよろしいでしょうか王女様?」
少し畏まって申し出たのだがなぜか彼女は笑い、その後に真顔になって一言。
「許す」
どこか芝居がかった彼女の言葉に僕は笑い、そして彼女も笑い2人でしばらく笑い続けたのだった。