第2理論 誰もいない山の中で
「いったいどうして僕は逆さにつられているのだろうか?」
いきなりあたりが光ったので反射で目を閉じたそのすぐ後に天地が逆転する感覚。そして目を開けると両足が縄に縛られて逆さにつられているのだった。
僕を吊っている糸の先を見ると5メートルほどの高さの木の枝に糸が巻かれているのが見える。少々疑問なのは木の幹が水色だということだけど………まあ放置しておこう。今は逆さづりの状況をどうにかするのが先決だ。
周りを見るとやはり住宅街ではなくどこかの山の中であるようだ。人の気配もないので僕はもしかしたらどこかの狩人が仕掛けた獣用の罠にかかっているのかもしれない。
もしもそうならごめんなさいと思いながら僕の魂の持つ力《再現》を使い切れ味が良すぎてすぐに壊されたという悲しい過去を持つはさみを再現し縄を斬る。その結果として重力に従って地面に落ちるが体を回転させ無事に足から着地。縄の近くに謝罪の言葉を書いた紙を置いたが後になって日本語が読めるのだろうかと心配になったがまあ何とかなるだろう。
体が自由になったところで次にどうするべきか考える。
まず僕がこの山の中にいるのは誰かが僕を転移させたからだろう。故意か偶然かわからないが人気もないし誰かに見られている気配もないので故意ではないと思うのだけど。いや、何らかの事故が起こって狙った場所とは違うところに呼ばれたって可能性もあるか。
それは置いておくにしてもとにかく人のいる場所を探すべきだろう。友好的かは分からないにしても水色の木がある場所で食べれるものなんて分かるとも思わないので餓死する前に出会うべきだろう。
で、人に会うためにもこの山を下りるのだが無事に降りるために何が使えるのかを思い出すことにした。
僕の魂の特性は《再現》、過去に僕が造ったものとまったく同じものを生み出す力だ。まあ再現したものは何もしなければ1時間で消えるとか色々と制限はあるけど僕はこの力を結構気に入っている。
というわけで《再現》を使って携帯用の浮遊カメラ(文字通り空飛ぶビデオカメラ。リモコン操作で上空300メートルまで飛べる)を使いどういった地形なのかを探ろうとしたのだがなぜか浮遊カメラは100メートルほど上がったところでそれ以上上がらない。仕方がないのでその高さから景色を移そうとカメラを下に向けようとするとカメラが何かに当たって爆発した。
敵襲か!?と身構える僕の後ろから何か信じられないものを見たような、震えた声が聞こえた。
「まさかあれは本当に………?」