第18理論 現れる同類(無表情)
機械人形7型
たった1人の強者を相手にすることを想定したこの人形たちは同型機が多ければ多いほどその性能が高くなるように造られている。
互いに役割を決めることでより効率よく情報を収集し、相手を複数で襲いやすい状況に持っていくこの機械なら魔人種の男を倒すとまではいかなくても僕の体のしびれが取れるまでの時間が稼げるかと思ったのだがその予想は裏切られた。
「あ、ああ………」
そこに倒れるのは僕の造りだした10体の7型と魔人種の男だった。そしてこの状況を造りだした少女はなぜかひたすら僕のほっぺをつついているのだった。
「八幡君、大丈夫ですか?………夢飼さん?」
「どうもー」
3階の床にあいた穴から天木が顔をだし僕と少女………夢飼なじむを見た彼女は出していた顔を引っ込めるのだった。
「ああ、あ、あああああ!?(ちょ、あ、えええええ!?)」
「つんつん」
そして変わらない僕の状況………これがしびれの取れるようになる30分後まで続くのだった。
「やっとしびれが取れたか」
「つんつん」
「いつまで僕のほっぺをつついているのさ」
未だに目を覚まさない魔人種の男に首輪型の爆弾とおまけの開発途中の魔力吸引装置を取りつけ、僕は夢飼がどうしてここにいるのかを聞いてみた。
「八幡には借りがあるから返しに来た」
「?………何か貸してたっけ?」
日本にいるときはそもそも接したことがなかったはずだけど気づかないうちに何かしていたのだろうか?
「うん。八幡が発見した魂の補完理論のおかげでお父さんを助けることができたから」
「………君はもしかして」
「魂の科学者だよ?」
嘘をついている様子はないし、そもそも魂の科学者という言葉を知っている時点でタダものじゃあない。つまり僕はクラスメイトに同類がいるというのに全く気付けなかった鈍感野郎というわけだ。
「………死にたい!」
「大丈夫、八幡が救いようのない鈍感野郎でも今はアリスト王国の王女と付き合っている勝ち組だから。それはきっと八幡の鈍感分のマイナスをなんとか打ち消せるくらいのステータスだから」
「僕の鈍感さは王女と付き合うことと釣り合うほどのマイナスなのか!?」
「私だったら絶望して自分の墓をつくるレベル」
「今絶望した!そんな話は知りたくもなかったのに!」
もしかして日本にいたころは同類を見分けられなくて馬鹿にされていたというのか?そんな事実知りたくなかった………
そうして僕はフィーナたちに頼んでいた仕事が終わるまで夢飼と話し合っていたのだった。