第16理論 反撃開始?
いくつもの炎が天木を襲う。本来線として襲うはずの炎の槍はその量によって面として襲ってくるがそれを彼女は右手を振るうことで消し去った。
同じ光景が何度も繰り返され浅木はこれ以上は無駄だと思ったのか炎の槍を出すのを止め、直接殴りかかってきた。
「おらあっ!」
「相変わらず暴力的ですね」
「ああ?何言ってんだよ。こんな力を手に入れたんだ、使わない手はないだろ!」
接近戦は得意ではないのか天木は次第に浅木の攻撃が掠ってくるようになっていき、ついに彼の右こぶしが天木に当たり吹き飛ばされた。
「よっしゃあどうよ!」
「どうもこうもないけど?」
そうして天木が僕の射線からどいたことで浅木を撃つことができたのだった。浅木は僕の左手に握られている拳銃を理解できていない顔で見た後、僕の顔に視線を移そうとして撃ち込まれた睡眠薬によって眠りについたのだった。
「それが八幡君の力ですか?」
「まあね。ところでさっき何度も炎を消していたのは君の力なのかい?」
「ええ、私のクラス『減魔』の力『魔力消失』です。体外に存在する魔力を魔素に戻す力です。魔法使いには優位に立てる力ですが魔法を使わずに接近戦に持ち込んでくる相手には無力なんです」
「でも天木が銃火器を使えればかなり戦えるんじゃないかな?」
「とはいえこの世界には生身の身体能力でも銃弾を避けられそうですけどね。それに私の力では体に作用する魔力は消せないので《身体強化》等はどうしようもないのですが」
「それじゃあ攻撃要員としてではなく妨害要員として利用したほうがいいのかな?さっきみたいに囮としても使えるかもね」
「あまり女の子を戦いに出すのは感心しませんよ?」
「きちんと守るから許してもらおう。フィーナ、クロナさんはどうだい?」
魔法でクロナを治療していたフィーナにどれほどのことができていたかを聞いてみた。
「止血は済んだ。さらに魔法で増血と細胞を活性化させることで見た目は良くなった………が」
「消耗した体力は戻ってないのか。まあそこまで都合よくはいかないか」
となるとクロナさんから誰が裏切ったのかを聞くことはできないわけで、つまりは「八幡君、あの機械で人がどこにいるかわかったよー」出会った相手を片っ端から眠らせるのが「八幡君?」一番簡単で安全だけどその場合、眠らせた人の安全は「八幡君!」「うわっ!?」
「なんなんだ田中、いきなり叫ぶなんて?」
「何度も呼んだよ?それを気付かなかったのは八幡君だからね?」
「………それは悪かった。それでどうしたの?」
「さっき渡された機械で人のいる場所が分かったよ」
さりげなく田中には僕が造った『魂感知器』(様々なタイプがあるが今回渡したのは広範囲にわたって一定以上の強さを持った魂を捜索するタイプ。範囲内の魂が多いほど画面に表示するのに時間がかかるのが欠点)を使いこの城内のどこに生き物がいるのかを調べたのだった。
「お披露目があった部屋に多くの生き物がいるね。その他は結構強い魂がいくつか分散して動いているか」
「おそらく多く集まっているところに各国の代表が捕まっているのだろうな」
「だったらそこへ行って彼らを助ける?」
「ああ、だがそれは敵も予想していることだろう。つまりそこには敵も見張っている可能性は高い。その敵が勇者だった場合我等には区別がつかず不意討ちを受けてしまう」
「だったら話は簡単だ」
そう言って僕は一番確実な案を3人に提案し、大広間に向かったのだった。