第14理論 天才と人災
『馴染む人』の力、それはある意味最強の能力だった。田中が言うその力とは
「いま2人は私の行動につられているみたいなものなんだよ。私が普通に、普段通りに2人を案内しようとしているから2人はそれが普通なんだと思ってる。だからわざわざそれをしないなんて行動はとらないしとれない」
「それってある意味催眠みたいなものだよね?つまりはその力をうまく使えば気に入らない人たちを潰し合わせることができるのかな?」
「うーん、できると思うよ?やるかやらないかは別として、時間をかければそういうのもできると思うかな」
「それで、貴様はその恐るべき能力を使って我らをどこに連れて行こうとしているのだ?」
「それは、あ、ついたよ。ほら中に入って」
そう言われて部屋に入った僕とフィーナを迎えたのは1番手をつけられない天才だった。
「八幡君、お久しぶりです。アリストさん、初めまして。私は天木聖です」
「久しぶり」
「フィーナ・フリード・アリストだ。よろしく。それで貴様が田中を使って我らを呼んだのか?」
「使ったという言葉を使いたくはないのですが、まあそうですね。実はお2人に頼みたいことがありまして」
天木が頼みたいことなんて嫌な予感しかないがここまできたのなら逃げることもできやしない。だから素直に何を頼みたいのか聞いてみると。
「私と唯をアリスト王国で雇ってもらえないでしょうか?具体的に言うとアリストさんに雇ってもらいたいのです」
「我にか?」
「はい、八幡君がついていってもいいと思えるアリストさんに興味がありまして。ちなみに自分でいうのもなんですが私は役に立ちますよ」
「そうか………雪、貴様が拒否しないのならば2人を連れて行こうと思うのだがどうだ?」
「いいと思うよ」
「ずいぶん軽いねえ。まあ八幡君が重いところなんて見たことないけど」
「いつものらりくらりとかわしていますからね」
「やはりこいつはそういうところがあるのだな」
「ええ、高校でも『柳に風事件』というものがありまして」
「そんな話は今いいだろう!」
危うく思い出したくない話をされる前に元の話に戻す。
「それじゃあ田中と天木は一緒に来るんだね?ほかについていきたいっていう人はいるのかな?」
「いるのかもしれないけど私たちは知らないよ」
「そっか、それじゃあもう国に帰るかい?」
「うむ、少し気になる情報も入ってきているのですぐに帰るぞ。出来れば雪の力を借りたいほどなのだが」
行きに隠していた僕の力を必要にするほどの情報が入ったのだろうか?まあ彼女が使えといえば使うのだけど。
「それじゃあさっさと帰るとしましょうか。ついでに帰りながら天木のクラスについて聞きたいんだけど」
「いいですよ。田中さん、『馴染む人』で私たちを隠して」
ドゴンッ!!
天木の言葉の途中でいきなり爆発音が聞こえ、それと同時に部屋の天井が崩れてきた。それらを弾くことで僕たちは怪我を負うこともなかったのだが何か異常が起きているのは明白。だから僕たちは周囲を確認してから誰かがやってくる前に田中の力を借りて気づかれないように姿を隠したのだった。