第13理論 お披露目と馴染む勇者
勇者のお披露目
それに参加する人数は50人ほど。そのすべてが勇者を見定めようと気を張っていた。
そんな中で僕とフィーナはアリスト王国の王女とその婚約者として参加していた人たちとあいさつを交わしたのだった。
「これで全員だな。後は勇者たちを見ればもうここにいる理由はなくなる」
「だからって1人でさっさと帰らないでね。こんな場所で1人になったら僕は発狂してもおかしくないからね」
2人でたわいない話をしているとクロナが勇者たちを、僕のクラスメイトを連れてこの会場にやってきたのだった。
「皆様、本日は聖国の召喚した勇者さま方を紹介させていただきます。まずは勇者様方の中でリーダーとして活動している神崎勇人様です」
それからしばらく神崎についての説明―立場や勇者としてどのように動く気なのかとか―の後はそれぞれ自由とし、興味のある相手と話をできるようにされたのだった。
「でもまあ、みんな無事そうで一安心だよ」
「そうか。それでは帰るか?」
「手荒な扱いをされているわけでもなさそうだし、手は打った。だから帰るとしようか」
「でも八幡君。久しぶりに会ったクラスメイトと話さなくてもいいの?」
「別に王国と聖国は仲が悪いわけでもないんだから何かあれば向かいに行くさ」
「そうだな。雪がここに来るのなら我も付き合わなければな」
「そういう理由をつけてクロナに会いに行くんだろう?分かってる分かってる」
「アリストさんはクロナさんのことが好きなんだねえ」
「貴様らいい加減に!………貴様ら?」
「貴様らって僕ともう1人は………」
「私だよ?」
「「うわあっ!?」」
フィーナと2人で話していると思っていたらいつの間にか短めの黒髪に決して不細工ではないが美少女といえるわけでもない少女、つまりは僕のクラスメイト田中唯が会話に加わっていたのだった。
そして僕たちを驚かせた彼女はその特徴のない顔でいつもと変わらない普通の表情をして僕の隣に立っていた。
「い、いつの間に?」
「いつの間にって、ついさっき?あ、初めましてアリストさん。田中唯です。アリストさんのことはクロナさんに聞きました」
「ああ、ところで貴様は勇者………なのだな?」
「うん?ああはい、そうですよ。クラス『馴染む人』の勇者です」
「『馴染む人』ってそのまますぎるだろう」
「うーん、でもまあしょうがないんじゃないかな?クラスを私が選んだわけじゃあないんだし」
「まあそれはそうだけどさ」
「あ、そうだ。私はここで話をしに来たんじゃなくて呼びに来たんだよ。2人とももう帰るつもりだったんだよね?その前にちょっと私についてきてほしいんだけど」
田中を使って僕たちを呼ぶその理由を考えて、心当たりがあった僕はフィーナに目くばせをして逃げようと伝えたのだがすでに手遅れだったようで、僕とフィーナは田中についていくのだった。
というかなんで僕はついていっているんだ!?