第12理論 教皇とのお茶会
クレスト聖国
世界平和を願う『光和教』が創った国であり、教皇が国王の役割を担い、13人の枢機卿が教皇を補佐する。そういった政治形態をとっている。
『光和教』の性質から王宮―ここは神殿としての役割も担っているが―華美な装飾を嫌い、質素でありながら見るものを和ませる。
そんな王宮の中で僕とフィーナは今の教皇、クロナ・シュペッツェンと会っているのだった。
「あなたたちと無事に会うことができて幸いです」
「それはこちらも同じことだ。枢機卿たちが貴様を殺しにかかるのかと思っていたが無事なようで安心したぞ」
「そう簡単にはやられませんよ」
見る人を安心させる笑顔でそう言う彼女は年齢15歳、輝く金髪と小柄な体にその笑顔が加わると天使とはきっとこういう子なんだろうなあと思えるほどだ。
「それで八幡さんでしたよね?そちらから提案されていた勇者の移動ですが彼らが望むならば問題を起こさせることなく行えます。そもそもが勇者としてこの世界に呼べただけで満足なので。しかし本来死ぬはずのなかったあなたまで巻き込んでしまったのは申し訳ありませんでした。改めて謝罪させてください」
「いえいえ、それについては謝る必要はありませんよ。この世界は僕にとっても居心地のいい世界ですし、フィーナにも会えましたからね」
「さりげなく貴様は何を言っているのだ!」
「お熱いですね!ラブラブですね!」
フィーナを照れさせて満足したところでさきほどクロナに聞いた勇者召喚の条件について思い返す………
「勇者を召喚するにあたって条件があったんですか?」
「はい。勇者として活動できるだけのクラスや才能は勿論として、呼ばれる人はみな死ぬ運命にあるんです」
「死ぬ運命ですか………」
「今回呼ばれた彼らに話を聞いたところいきなり建物が壊れ初め、天井が彼らの上に崩れ落ちてきたようです。まあそういう状況に追い込む性質があるのではと聞かれればそれを否定するだけの証拠はないのですが」
「そうですね。命を助けてあげたんだからこちらの要求を呑めと言いやすいですからね」
「それでも信じていただけるように努力するしかありません」
そう言った彼女の眼は強く輝いていた。その眼を見ると彼女を信じたくなるのだけど………まさかクラスや魔法の力じゃないよね?
「今日の夜には帝国のかたも着く予定ですからお披露目は明日になると思います。その後に話し合えるように手配します」
「ありがとうございます。それじゃあフィーナ、僕はこれで部屋に戻るから後は友達と楽しい話をしていてね」
「あ、おい雪!」
そう言って2人を部屋に残して立ち去る。フィーナとクロナは古い付き合いらしいし、どちらも立場が立場なのでそう簡単には会えないから今日ぐらいは2人っきりでいてもいいだろう。
「まったく、あいつは余計な気をまわして」
「でもその気遣いには感謝しませんと」
怒っているように見えるフィーナですけど感謝しているのは分かっていますよ。私も彼に興味が出てきましたし、これからいろいろと企んでみましょうか。
まあ、今日はフィーナと気が済むまでお話をしますけどね。