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魔女の目元  作者: 蜜ハチ
1/3

南の魔女1

貴方は魔女を知っておられましょうか。


知っておられましたら様々な憶測をお持ちでしょう。


高笑いのばあ様が思い出されるか。

愛らしい箒にのった少女が思い浮か ぶはず。


それか今流行りの、転生してすんごい魔法を使っちゃう私普通の子です風 チートと呼ばれるなんちゃって魔女ちゃんか。



さて今回お読みになられる前にそれらはとっぱら って頂きたい。


魔女には魔女なりの考えと過去があるらしいのです から、枠に入れること事態失礼である。


こちらに出る魔女は、可愛らしくもなんとも人を茶化した人であるのですから。

他所様に失礼である。















この世界、魔女は魔女なりの地位を得ていた。


数は把握されているだけでは四人と少ないけれど、 彼等は特別で独特の不可侵な存在である。



王の目の前に出れば王と同等で、庶民の前に出れば 庶民と同じ。

されどそこには一定のラインの引かれた付き合いが ある。



ここ、メイ王国。

本日はそんな魔女が王様にお呼ばれした為に城へや ってくる。

呼んだからと言って必ず来るわけではない、呼んで ないのに来ることもある魔女の気まぐれな来訪に下 々の者はてんやわんやである。



まず下女は魔女の為に美味しいお茶の茶葉を選別。

お菓子にはコウモリの唐揚げなど良いのではないか 、という意見が出たがこれは却下された。


お菓子にはコウモリの形のクッキーが用意される こととなった。

実に無難である。





そして庭師はせっかくなので自慢の庭や薬草を見て いただこうということで、はりきって庭の木々をこ の日のために剪定した。


お花よりも薬草に興味があるのではないか?という ことで、はりきってハーブや薬草を庭に出したとこ ろ、色みのない、なんてことない庭になってしまっ た。



普段お目にかからぬ魔女であるので、皆が皆、魔女 の好みを図りかねていた。

憶測でこれはいいのではないか、と決めているので ある。



そして騎士であるーーー


















「お前らな、いくら魔女どのが来るからってこの案 はどうよ」



黄色い髪が短く刈られた男は、机に勢いよくそれを 叩きつけた。 ーーー真っ黒いフードである。


「いやだってさ、魔女様って言ったらフードでしょ ?」

「だからって俺らが着なくていいだろう!それにな んだこの配置!門に20、廊下に50、専属で80 って歩けるか!はしゃぎすぎだろ!」

「いやあ、だって皆見たいんだもん。。。」

「だからなんだ?この黒いフード着て皆でわさわさ ごみごみしながら歩くのか?不気味すぎる、悪趣味 」

「喜んでくれるかなって。。。」

「喜ぶかあ!それによく見たら王族控えに100? 謁見じゃないんだぞ、茶会なんだぞ!」

「少ないよりはいいかなって。。。」

「もういい、数を減らすぞ。じゃないと警戒してる と思われる、この数非番の奴等も入ってるだろ、休 め!」

「えー、もう一回あみだしないと、あ」

「あ み だ で き め たのかい!」



勢いよく叩かれた机からカップが倒れ控えていた侍 従があわあわいっているのをみて、彼ーーーレイア はごほん、とわざとらしい咳をした。


「わかったーーースー、お前が独断で数を決めろ」


そう言って見た先は、クールビューティ、という名 前が似合う黒髪の女性騎士だ。

彼女は冷静沈着で、いついかなる時も正しい判断が できると信頼も熱い。


彼女は、ふ、と笑った。



「ーーー私の判断ね、」


にやり、と珍しく笑った。




「ざまあみろ、ケイン!魔女様は私のもんだー!あ ーはははー!」

「あ、お前専属で付くつもりだろ?!あみだではず れたじゃん!」 「良いって言ったもん、言ったもーん!人数が問題っ てことは一人でも良いんですよね?」

「あ、ずりー!ひでー!一人で付くつもりか?!」

「ばーかーめー!日頃の行いだよっ!」



ぎゃいぎゃい、と騒いでいるのにレイアの意識が遠 退く。

なんてことだろう、冷静沈着と思っていたが所詮人 間であった。


あの、と控えていた侍従が声をかける。

その手には新しいお茶の入ったカップが握られてい る、きっと大急ぎでくみなおしてくれたのだ。


「あ、ああ。。。悪いな」

「いえ、あの、口を挟むのも不躾ですが副隊長が専 属につかれたらいいのでは?」


ちなみに副隊長とは、レイアのことである。


まだ21とうらわかき青年だが、見た目とは裏腹に 隊長の強い希望もあり副隊長に任命された。

ただ単に、レイアが真面目で仕事人間で隊長が楽を したいという背景があるだけかもしれない。


裏では有名な羊(生け贄)から、ドリーちゃんと呼 ばれていたりする。



「俺は今日、午後から休みをもらう、本当は丸一日 だったんだが魔女殿の急な来訪で駆り出されてな」

「あ、え、そうでしたか」


はあ。。。とため息をついて未だに言い争っている 二人に目を向けた。


確かに、自分がやってしまえばいい話ではある。


誰も文句は表だっていう人はいないだろうし、なに より安心だ。

何しろ目の前に二人のはしゃぎっぷりからすれば、 魔女に何かおかしなことをしでかしかねない。


侍従がもう一度ため息をついた。

そして、呟く。






「副隊長が行くなら僕も付いて行けるのに」



お前もか。



所詮人はそんなものであると、深く思い直したとこ ろでノックも無しに扉がぎい、と開いた。


そこからは赤毛の巨漢がぬう、としかめっ面を出し た。



「大隊長?」



レイアは腰をあげ、騒いでいた二人もピタリと止ま って背筋を伸ばした。


そう、この男こそこの国の騎士をまとめあげる大隊 長である。

いくつもの死地を見つめた厳しい目、傷、体格から 初めて会うものに恐怖に近い威厳を感じさせる。


部屋に乗り込み、ぐるりと部屋の中を見渡した彼は 、分厚い髭で隠された口をゆっくりと噛み締めた。



「ーーー話は聞いた」



低い声が静かな部屋に響く。










「儂が付く!一人でな!」






言うと思った!






「あーーだからこうなると思って話持ってかなかっ たのに!」

「誰だよちくったの~!」

「ざまあみろお!のけものにするからじゃあ!儂じ ゃて会いたいわあ!」



ふぁふぁふぁふぁふぁ!!と高笑いする大隊長に沈 む若者二人。

権威には逆らえないーーー


「じゃ、俺行くわ」

「え。。。あ、はい。。。」


侍従が少しだけ何か言いたそうだったが、言う隙を 与えぬ内にさっさと出ていった。



もう、面倒だから好きにしてくれ。



言わなかったが 、背中でかたった。

パタン、と扉がしまり若者は首をひねった。


「めずらしー、レイアがなにも口ださないなんて~ 」

「隊長がやるって言ったら威厳がどうので、せめて 王様の側で我慢してくださいって言うと思ったのに 」

「儂もじゃ~てっきり反対されると思ったのにのお 」


明日は槍が降るかなーとそれぞれ呑気にドアを見つ めていたが、隊長が思案顔で口ひげをさする。

そして、侍従に振り向くと手でこいこい、としてか らにっこりと笑う。


「チャイちゃんや」

「。。。はい、隊長」

「レーちゃんに、儂の馬を貸すと伝えてきておくれ 」


その言葉に皆、目を向けた。 隊長の馬と言えば、他の馬の一週間の距離を一日で 走ると言われる有名な駿馬でその大きさも他を凌駕 する。


「え、いいのですか?」

「急いどるんじゃろう、人懐こい子じゃし大丈夫」

「レイアって今日どっか行くの?」


話を聞いてなかった二人が顔を合わせるが、二人が 二人とも知らなかったようで互いに首を振った。


あいつが休みを取るなんて初めてじゃないか、

顔色悪くなかったか、

今日はいつもより怒鳴り声の威勢が悪い、と口々に囁く。

これは槍どころか戦争が起きるのではないかと、本気で危惧し出した三人に訳知り顔のじいさまがため息をついた。



「レーちゃんなあ。。。かわいそうな話なんじゃが な」



隊長が深いため息を吐いた。

老人にとって若者の悲劇は目を覆いたくなる悲報だ と、呟いた。






レイアが長い渡り廊下を歩くと、足音が響いた。


白いタイル、高い天井には様々な色の溢れるステンドガラス、古いウッドの壁。

ステンドグラスには、様々な偉人や聖人に紛れて王族の姿が描かれている。

物語調に描かれているそれらは描かれている人々も様々だ。


彼がふと見上げると、そこには聖女となった女王の姿がある。

白いケープを羽織り手を合わせて天を仰ぎ何かを祈る。


ステンドグラスでは、表情は読みにくい。






「こんにちわあ」


突如かけられた声に振り向くとそこには異様な格好をした少女が立っていた。


先程の聖女のような白いケープを羽織る、男装をして何が面白いのかニタニタと笑んでいる。

白いケープの裾に縫い付けられた飾りがしゃらしゃらと音を立てていた。


この格好は異様であった。

元来、聖女が着ているように白いケープは聖人の羽織るものだ。

しかし彼女はズボンを履き、男物のシャツを着ている、これは女は女であれという聖教にはありえない。


それにひときわ目立つのは、目の縁に隈取りのように彫られた赤い入れ墨ーーー魔女だ。


レイアは息を詰める、顔の入れ墨など魔女にしか許されない行為だった。



「ーーー魔女どの?」

「はあい、いい天気だねえ」

「どうしてここに?」

「ふふん、君に用事があって」



そう言ってにたり、と笑うがこの笑みをレイアはどこかで見たことがあった。


「ステンドグラス、とっても綺麗だねえ」


天を仰ぐとそれは日に当たりキラキラと光っていた。

そしてこぼれる光は白いタイルに、青、緑、赤、と絵を描く。



「でもここで嫌なことがあれば嫌いになるんだろう」



魔女がケープを翻す、と、。









ーーーー。



レイアは渡り廊下を渡る、反響する足音はひとつだ。

窓を見上げよく見ればそこにはうっすらとほこりがかぶっていた。

どうりで少し雲って見えるわけだ。



レイアは、少しふらつく頭を抱える。


ああそういえば昨晩は寝ていないのだった、体も重く感じる。




部屋へと踵を返す、足が自然と早く歩くのを彼は自覚していなかった。









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