PHASE-07 お誘い
「んで、本命はどっちなんだよ?」
「な、な・・・ 別にそんなんじゃ…。」
コイツは俺の小学生の頃からの親友、嵐勇太だ。
身長は172cmと俺より高い。
しかも足が長く、容姿はイケメン級だ。
そんなせいか、中学校の頃は5人くらいと付き合ったコトがあるらしい。そう、まさにプレイボーイ級のヤツなんだ。
過去俺の恋愛相談にのってくれたコトもあって、どんなコトでも話せる唯一の相手と言っていい。でも、少なくとも向こうもそう想っていてくれてるようだ。
だから、俺はコイツと絡むコトがホントに多い。あと、二人で遊んだりと まあ、ごく普通の友達関係を築いている。
たまに、愛美とも一緒に行動して3人と食事をしたり、遊ぶコトもある。
今、愛美は愛美で新しい友達が出来たみたいかそっちの方へ行っている。 まあ、あんなに社交的なヤツやからすぐに友達くらいなら出来るだろうけど・・・。
それを見計らったかのようにコイツは俺の所へ足を踏み入れてきて、ささやいてきたのだ。
「最近、愛美との行動も多くなるわ〜、お次は学園の可愛い子ちゃんとメルアドを交換するわ〜、そこまでやっといて意識しないはずなんてないのでは?」
勇太は薄気味悪い笑みを浮かべながら、皮肉った言い方をしてきた。
「それはまあ・・・、何ていうか・・・。」
俺は完全に言葉に詰まった。
そりゃあそうだ。この現実くらい自分でも分かってる。
でも、それをどう受け止めたらいいのか分からないのだ。今まで、愛美以外の女子とは喋ったコトはないし、愛美との行動もあそこまでは多くなったこともない。 そう、この何かの変化に俺は分かっているのだ。
「俺様だったら、もうどちらかにアタックしてるんだけどな〜…。困ったオクテさんだ・・・コイツは。」
勇太の顔は呆れ顔へと変わっていった。
「だってしょうがないじゃね〜か〜。こんな体験初めてだし、どう受け止めたら…。」
「素直じゃないってコトだな。 それは。」
勇太はチチチと舌打ちしながら指を左右に動かした。
「でもまあ、何か変化あったら俺様に何でも言ってくれよ? この状況なかなか目を見張るモノがあるしさ〜♪」
「どういう意味だよ、それ…。」
「そ〜いう意味だ。じゃあな、オクテ君♪」
勇太は自分の言いたいコトだけを言ってその場を去った。
「オクテって…。お前がプレイボーイなだけだろうが…。」
俺もそういい残して、その場を後にした。
「いい天気だね〜、こんな日はのほほんとしたい気分だね。」
「俺はゴロゴロしたいな。」
「同じコトでしょうが。」
久々の愛美との下校だ。 何だか懐かしく感じる。
帰り道には入学式桜の絨毯が見られた所が、あっという間に葉の絨毯へと変わっている。
「あのさ・・・翔ちゃん・・・。」
突然、愛美の思いつめた表情を浮かべ始めた。
「何だよ…。」
俺はちょっぴり緊張した面持ちだ。
「最近、何か春風さんと仲良いみたいだからさ〜・・・。」
出たこ〜いう質問。
さっき、一応友達の勇太にも言われたコトだ。
「そう? 俺は普通に接しているつもりだけど。」
ちょっと嘘染みた答えになってしまった。
「でも、春風さんは翔ちゃんに気があるんじゃ・・・?」
「う〜ん・・・、どうかな。」
確かにそうかもしれない。けど、今はそう断言仕切れない。
だからか、また俺は言葉に詰まった。
そう言い終えた時、長い沈黙がした。歩く音だけが喋り声のように聞こえて仕方なかった。
「じゃあまた明日学校でね! バイバイ〜。」
さっきの表情とは逆に、愛美はいつもの表情に戻っている。
「うん、じゃあまた明日。」
俺も今までの重い雰囲気を断ち切るかのような笑顔で言った。
「今日は疲れたな…。」
今日は、親友と愛美にも同じコトを聞かれて精神を破壊されるかのような気持ちになったのだ。
そりゃあ、疲れて仕方がない。
俺はそう思いながら、自分の帰るべき場所へと足を踏み入れた―――――。
俺は今天井を見上げている。
「はあ、ホントに疲れた・・・。」
こんな言葉を言っても疲れはとれないということを知ってながらも、つい声が出てしまう。
そう言いながらだんだん、まぶたが閉じていった時――――、
「ブーン、ブーン、ブーン。」
突然鳴り出した、携帯のバイブ音。
せっかく転寝してきた時にこれだ。
今はもう非常に眠い。 このまま放っておいて寝たいと思っている。
でも、何故だか手が勝手に受信BOXへと探り始める。
で、目も勝手にそれを追ってしまう。
“こんな時間にゴメンネ翔平君。明日暇かな?”
これは・・・お誘いのメールだろうか。 でも、「暇?」と聞かれているのでそうだろう。
明日は土曜日という休日だ。
俺の場合、家でTVを見るか、ゲームをするか、パソコンをいじるか・・・というコトしかやることはない。
あえて言うなら、いつも暇人だ。
美鈴とはあれ以来友達関係になったというもの、彼女は積極的にアプローチを仕掛けてくる。
でも、悪い気はしない。
そんなにシツコクないし、空気だって読んでくれる。
そんな部分に惹かれるモノだってある。
そんなコトを考えながらヤハリ答えは、
“一応暇だよ。”
とまあ、当たり前の答えを出した。
続いて美鈴は容赦なくメールを送ってきた。
“じゃあ、明日10時に学園の校門前に来てネ。待ってるから。”
結構甘い感じを覚えた。
前にあれから何度か美鈴とはメールしたものの、学校のコトとか、自分の紹介くらいしか話してない。
でも今日は違う。列記としたお誘いメール。
「友達・・・だよな・・・。」
俺は自分の心にそう言い聞かせたように呟いた。
みんながみんなして、あんなこと言うから・・・どうしても意識してしまいがちだ。
“分かった。”
“それじゃあ、お休み☆”
“うん、おやすみ”
俺は、ヤハリ眠いこともあったのでメール上口数が少なかった。
そう思っていると、もう、やる事を済ましたせいか、まぶたが自然に閉じていった―――――。
昨日多く更新してしまったせいか、今日は1種しか更新出来ませんでした。