PHASE-02 期待と不安
この小説のジャンルは恋愛です。 ちょっとコメディが入ってる部分もありますが・・・。
公園から学園まで約15分くらいの距離。
俺と愛美は、隣同士で目の前の風景が学園になるまで無言で歩き続けていた。
そう、これから俺達に何を待っているのか? イイコトや嫌なこと。それらがどのような形で、どのようにして待ち受けているのか。そう思いながら…。
楽しみで仕方がない。しかしそれと裏腹に、やはり不安なコトも多々ある。
イイコトだけを過ごして、嫌なコトを通りすぎる・・・というそんな虫のいいことなんて言えない。
イイコトがあるから、嫌なコトもある。嫌なコトがあるから、イイコトもある。
イイコトがなかったら、嫌なコトもない。嫌なコトがなかったら、イイコトもない。
こういう好循環があるから人生っていうモノは成り立つ。
だから、これから先に起こることを、すなわち、イイコトでも嫌なコトでも受け入れなきゃイケナイ。
そう、例え愛する人が出来て、その人の身に何が起こってもそれを受け入れなきゃイケナイ。
果たして、その頃の自分はそういう心を持ち合わせているのか? もし、持ち合わせていなかったら――――?
この季節は桜の舞う季節。
下を向いたら、歩く至る所に桜の絨毯が見られる。
上を向いたら、桜の木々からピンク色の花弁がひらひらと舞い落ちてくる。 まるで踊り狂っているように…。
まっすぐを見たら、桜吹雪・・・とまではイカナイが、まるでその道を通る人を歓迎するかのような祝福らしきな感じもしてくる。
他の人達がこの道を笑顔を見せながら通るという行動が、何か人間に必要な何かを知らされるような想いもしてくる。 そう、いい気分で…。
桜といえば、入学のシーズン。つまり、何もかもが「始まり」の季節。
涼しく心地よい風に揺られる桜の木も幸福のように嬉しさのあまり踊っているようにも見える。 すごく楽しそうに―――――。
「やっと着いたね・・・。」
今まで無言の愛美だったが、着いたときにはもう普通の状態だった。
「そうだね。ここが・・・。」
「桜花学園・・・。私達が期待と不安を膨らましているモノ。」
俺達は校門の前に立っていた。
表札には「桜花学園高等学校」と書いてある。
後ろを向くと、今まで歩いてきた桜の絨毯が敷かれている状態だ。
周囲には俺達と同じくして登校しているヤツらや、もう到着していて学校見学をしているヤツもいる。
「お、新入生か?」
俺達は校門の前に立っていた一人のメガネをかけた教師に出会った。
「はい、そうです。 あの〜、入学式は午後2時の体育館で合ってますよね?」
愛美は、もう少し何か言いたそうな表情だった。
「ああ、そうだが。」
「今何時ですか?」
「え〜と・・・今・・・1時30分だな。」
「あと、30分あるね。 翔ちゃんどうする?」
愛美は腕を組みながら考えていた。
「う〜ん・・・。どうしよっか〜。」
俺も一緒に腕組みなって考えていた。
「何なら先生がニンテンドーDSを貸してあげようか? 脳トレの。」
先生は真顔だ。 それに釣られたのはヤハリ・・・、
「先生持ってるんですかあ!? はい! 是非是非やらせて下さい! 私一度やってみたかったんだあ・・・。」
コイツだった。
「お、おい愛美・・・。」
「ん? 何? はは〜ん、翔ちゃんもやりたいんでしょ〜? でも翔ちゃんは後後。 私が先だからね!」
「でもさあ、学校の前でさあ、DSはないんじゃね? 愛美も恥ずかしいと思うし、こっちも恥ずかしいよ・・・。」
「あ〜ん。 脳年齢58歳だった〜・・・。何がイケナかったんだろ〜?」
聞いてね〜〜! そりゃあ、前々から言ってはいたもの、何もここでやることは・・・。
「ん?何か言った? あ〜! 翔ちゃんもやりたかったんだね。 はい、これどうぞ。1回やってみてよ! 脳年齢勝負勝負♪」
コイツ乗り気だ・・・。 しかもこのちょ〜可愛い笑顔。
「・・・分かった。 やってやろうじゃん!」
俺は最初ためらったが、この笑顔を見て引くに引けん状態になった。 それで、腕の服をめくって取り上げた。
実は、俺こ〜いうクイズ系ゲームとかはかなり得意な方だ。 だから、もう勝負なんぞ勝ったもの同然と思っていた。
「・・・っぷぷぷぷ。 翔ちゃん脳年齢66歳だって〜!! あははははっ!!」
やってしまった・・・。恥ずかしい・・・。 余裕をかましていたせいか、なぜかそんな結果になってしまった。
「お、大きな声を出すな!! 恥ずかしいじゃねえか!」
「だってさあ〜、すんごいオカシイって! 66歳ってあり得ないもん・・・。 ねぇ先生?」
あ、コイツ先生に振りやがった。
「君も良く出来た頭だな〜。 そんなんで良くここに来られたな? 先生ビックリだよ、わっはっはっはっは。」
悪の親玉のような先生の声…。
先生にまで笑われた…。
「ちょっとこれは訳ありで・・・。」
「そんなもん無いでしょ? 私ず〜っと見てたんだからね。」
「むう・・・。」
もう俺は観念した。言えば言うほど傷つく・・・。 そう思った。
「それよりも、もう1時50分だぞ? 行かなくていいのか?」
「はっ! そうだった! 翔ちゃんがぐずぐずしてるからさ〜。」
いやいや、アンタ等のせいだって。
「んじゃあ、先生私たち行くね!」
「ああ、行ってらっしゃい。」
先生は、何かをやり遂げたような気分のようだった。
「あ、そうだった! 先生何ていう名前ですかあ〜?」
「ん?先生? どこにいるんだ?」
先生は、キョロキョロと辺りを見回した。
「いや、アンタのことだってば・・・。」
俺は、マジで呆れた。 こんなヤツが果たして先生でいいのか・・・と。
「あ〜僕? 僕はね、「「退屈笑魔」」(たいくつ・しょうま)っていう名前なんだ。みんなからは退屈先生って呼ばれてるんだけどね。良かったら君達もそう呼んで。」
嘘ではないみたいだ。
「退屈先生〜? 名前からしても、性格からしてもそんな感じですね〜。 非常にユニークで面白いですね。」
「ああ、みんなからもそう言われる。」
「そうですよね。 では、先生私達もうそろそろ行きますね。 それじゃあ!」
愛美は俺を引っ張って走り出した。
この時、俺はちょっぴり愛美のコトを意識してしまった。
「では、改めて行ってらっしゃい。」
先生も先生でこっちをニッコリしながら手を振っている―――――。
次回も宜しくです☆