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春の嵐、再び ①

 その土日は、実に平穏な週末だった。


 俺が落ち込んでいることを察したあわいさんが、ちょっと良い肉でローストビーフを作ってくれた。

 あわいさんいわく、怪我をしたときはとにかく肉! 落ち込んだ時もとにかく肉! 肉を食え! ……らしい。


 俺も俺で、怪我をしているから安静にしようということで、積んでいたゲームを遊びに遊んだ。自堕落で充実した土日だったと思う……が、当然ながら月曜日は容赦なく訪れる。



 というわけで、まだ全身が痛む中、俺は学校に向かう。実に気が重い。

 教室で国木に会ったら、何を言われるか、何をされるか分かったもんじゃない。かといってサボりは、逃げたみたいで癪だし。


 などと考えながら登校したわけだが、意外にも国木は一切俺に絡んでこようとはしなかった。反撃されて怯んだか、俺をいじるのに飽きたのか。



 ……なんて考えが甘かったことを、俺はこの日の放課後に思い知ることになる。




***




 今日も放課後になると、旧西校舎に形成されたダンジョンが解放される。学生たちは免許証を携えて受付を済ませ、ダンジョンの奥へと向かう。

 俺は吉野さんの受付業務を手伝い、ダンジョンから出てくるパーティに不正持ち出しの検査をする。


 いつもと変わらない、俺の冴えない放課後だ。



 17時半を過ぎ、18時を過ぎると、ほとんどのパーティはダンジョン探索を終え受付まで戻ってくる。18時半が帰還刻限で、それまでに戻らなければ懲罰点(ペナルティポイント)が付与される。


 帰還刻限のチャイムが鳴ったあとは、その日の業務のまとめだとか後片付けをする時間……なのだが。




「ん、まだ1組、戻ってきていないな」


 吉野さんが呟いた。そして、パーティリストを確認して、大きな溜め息をつく。


「彼のパーティだ。問題の多い生徒だな」


 彼というのは、国木のことだ。確かに今日、ダンジョンに入っていくのは見たが、出てきたところはまだ見ていない。


 ちょっと待っていなさいと俺に言って、吉野さんはダンジョンの入り口へ歩いて行った。座標特定スキルを使って居場所を割り出し、転移スキルで捕まえに行って、連れ戻してくるつもりなんだろう。ものの3分もかからないはずだ。



(吉野さん怒らすと怖いんだよな。怒んなくても顔怖いけど……)


 俺はやることがなくなったので、頬杖をつきながら、今日まとめる書類の再確認をする。


 入人数と出人数の照合、持ち出し物の一覧、ダンジョン内の新規探索マップ……。




(……ん? あいつのパーティ、今日は2人なのか)


 国木の提出したパーティリストは、総人数2名で提出されていた。いつもは取り巻きを2人連れて、合計3人のパーティなのに。今日の書類には「班長:国木直久(なおひさ)・班員合計:2名」と書かれている。


 取り巻きのどっちかが、病欠か何かかな。書類の詳細を見ようとした時、突然、俺の背後に誰かが立った。



 吉野さん? いや、違う。



 俺が振り向くより早く、そいつが俺の襟首を捕まえた。ぐいっと引っ張られるような感覚がして――視界が、暗転した。




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